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50代おすすめ。Netflix映画《喪う》(うしなう)と読ませる日本語の妙

大人になった3人の娘たちが父親危篤の知らせを受け集まる。

それだけでもドラマだ。


話を聞くうちにそのうちのひとりとは母親が違うことがわかる。
それだけでもうストーリーができる。力関係を想像する。三女は二回目の奥さんの連れ子だったらしい。つまり今危篤の父とは血の繋がりはなさそうだ。でも一緒に住んでたらしい。それだけで皆が想像する。

姉妹は法律的に二親等。親子は一親等。

あと数日で親亡き後、この3人はどういう関係になっていくのか。自分さえ想像できない。(私の場合は特に姉妹ではなく兄弟なのでもっと距離がある。同年代の男性の生き方を想像さえできない)

NYの中流っぽい室内の体の距離、視線、動き方、体の向き、電話の内容、見ているテレビの音それから生じる緊張。 ほぼ演劇である。唯一舞台が変わるのは、ナターシャ・リオンが外に吸いに行くときだけだ。これは舞台でもできる。彼らはかなり普通。台所も普通だし、飾ってある家具も植物も80年代に買ったと思われるものを丁寧に使ってる感じがする。

kind of kindness や megalopolice みたいに「わかるやつだけわかればいいんだ」みたいな高慢さはない。

ナターシャ・リオン。。すごいな。素でやってるのかどうかわかんないほど自然。NYのインテリ脚本家っていうのがすぐわかるね。エリザベス・オルセンもこれ素ですか?私はオルセンの服が好きだった。よくあるトラディッショナル系。

ふと見返したら最初の方と最後の方の女優たちのお化粧がだんだんおちてきてる演出もすごい。最初の方は女優たち(姉さんふたり)みんなさりげにナチュラルメイクできれいなんだけど。ナターシャ・リオンだけが変わらない。逆に彼女は最後の方の方がきれいなメイクをしている。そういう微妙で素敵な映画。

喪うをわざわざ(うしなう)と読ませるところもすごいなと思った。原題はHis three daugters. それだけなのに。Netflix担当者のセンスが光る。

この空白に慣れていくこと
この空白とは
この空白を覚悟しながらも
ここにある空白を感じることさえ怖がる気持ち

Damm I love this city.. もよかったな。お父さんの幽体離脱。最高だった。True love が 子どもとは縁のなかった女性とあった話とか。。

彼女たちはパパのこの話をきいてない。でも最後、ソファーに一人ずつ座って聞いたんだろうね。。いい映画だった。どこかコールマンの the Fatherにも重なる。オロオロする50代の子どもたち。そして、NYの普通の人を描いたPastLivesのようなキラキラじゃないNYの視線。




皆自分の人生を過ごしたところを愛してる。こんな自然に、愛することがすばらしいって、素直に言えるアメリカ人いいね。好きだわ。単純かもしれない、ひねりがないかもしれない人間それでいいと思う。家族に看取られる。

それだけでその人は幸せだったんだろうね。本当はとてもハードルが高い幸せですね。

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Rit'sko
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