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腰痛の治療にはどのような運動トレーニングが効果的か?ネットワークメタアナリシス
▼ 文献情報 と 抄録和訳
腰痛の治療にはどのような運動トレーニングが効果的か?ネットワークメタアナリシス
PJ Owen, CT Miller, NL Mundell, et al.: Which specific modes of exercise training are most effective for treating low back pain? Network meta-analysis. Br J Sports Med. 2020;54(21):1279-1287.
[ハイパーリンク] DOI, PubMed(Full text), Google Scholar
[目的] 非特異的慢性腰痛症(NSCLBP)における特定のモードの運動トレーニングの有効性を検討する。
[方法] 研究デザインとしてネットワークメタアナリシス(NMA)を行った。NMAを行った理由は以下の通りである。
NMAでは、対照群なしで2種類以上の治療法を検証した研究を含めることができる。これにより、治療法の直接的な比較(ペアワイズメタアナリシスと同様)が可能になり、また治療法のネットワークを介した治療法の間接的な比較も可能になる。これにより、研究者は介入を比較的に効果が高いまたは低いものとしてランク付けすることができる。
データソースは、MEDLINE、CINAHL、SPORTDiscus、EMBASE、CENTRALを用いた。対象は、NSCLBPの成人を対象とした運動トレーニングの無作為化比較試験/臨床試験とした。
[結果] 9543件の記録のうち、89件の研究(患者数=5578人)が質的統合の対象となり、70件(疼痛)、63件(身体機能)、16件(メンタルヘルス)がNMAの対象となった。NMAの整合性モデルでは、以下の運動トレーニングモダリティが、真のコントロールと比較した場合、最も高い確率(累積順位の下の表面(SUCRA))であった。
痛み:ピラティス(SUCRA=100%)、レジスタンス(SUCRA=80%)、安定化・運動制御(SUCRA=80%)
身体機能:安定化・運動制御(SUCRA:80%)とレジスタンス(SUCRA:80%)、ピラティス(SUCRA:70%)、ヨガ(SUCRA:70%)
メンタルヘルス:レジスタンス(SUCRA:80%)と有酸素運動(SUCRA:80%)
真のコントロールは、すべてのアウトカムにおいて最悪の治療法である可能性が最も高く(SUCRA≦10%)、次いで、痛み(SUCRA=10%)と身体機能(SUCRA=20%)ではセラピストによるハンズオフコントロール、メンタルヘルスではセラピストによるハンズオンコントロール(SUCRA=20%)であった。ストレッチとマッケンジー運動の効果サイズは、痛みや機能に対する真のコントロールと差がなかった(p>0.095;SUCRA<40%)。体幹の筋持久力や鎮痛剤の投薬についてはNMAができなかった。合成されたエビデンスの質は、Grading of Recommendations Assessment, Development and Evaluationの基準によると低かった。
[結論] ピラティス、安定化/運動制御、レジスタンストレーニング、有酸素運動トレーニングが、関心のあるアウトカムを除けば、成人のNSCLBP患者にとって最も効果的な治療法であるという低質エビデンスがある。また、運動トレーニングは、セラピストによる手技療法よりも効果的である可能性がある。研究間の不均一性と、バイアスのリスクが低い研究が少ないことは、いずれも限界である。
▼ So What?:何が面白いと感じたか?
ネットワークメタアナリシスについては本記事の最後に説明、というよりリンクを載せているので確認して頂きたい。
個人的に面白いと思ったのは、「ピラティス」が唯一「痛み」と「身体機能」の双方に効果的と示されていることだ。私自身正直、ピラティスについての知識がほとんどないため、何故、このような結果になったのかをまた調べてみたい。
運動療法やトレーニングはあくまで、慢性腰痛の中でもどこに原因があるのか、組織学的・力学的にしっかりと評価できた上で、取り入れた方が良い。しかし、効果的な方法を知っていれば、その評価に基づいて、例えば有酸素運動の中でもどのような運動がいいのか、がみえてくるはずだ。
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ネットワークメタアナリシスについて
ネットワークメタアナリシスとは、従来のメタアナリシスとどう違うのか。以下の記事を参照されたい。
神田善伸: ネットワークメタアナリシス. 日本造血細胞移植学会雑誌. 2020; 9 (3): 72-76.
もっとかみ砕いた説明であれば以下の記事が非常に分かりやすい。
上記のブログ記事の言葉をお借りすると、今回紹介した論文における「SUCRA」とは、
ベイズ流の方法論を用いたNMAでは、知りたいアウトカムに関して各治療が最善の治療となる確率を推定することができ、その確率の高さに順位を付けることができます。順位を付ける方法として surface under the cumulative ranking(SUCRA)が知られています。
この順位は非常にわかりやすい指標ですが、単純な指標なだけにその解釈には注意を要することも理解したうえで評価をしましょう。
今後更にネットワークメタアナリシスの論文は増えていくだろうから、もっと勉強していこう。
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