筋電図フィードバック vs. 力フィードバック
▼ 文献情報 と 抄録和訳
ビジュアルバイオフィードバックの種類が最大握力と活性化戦略に影響を与える
P Marcel-Millet, P Gimenez, A Groslambert, et al.: The type of visual biofeedback influences maximal handgrip strength and activation strategies. Eur J Appl Physiol (IF: 2.58; Q1). 2021 Jun;121(6):1607-1616.
[ハイパーリンク] DOI, PubMed, Google Scholar
[目的] 本研究では、力と筋電図(EMG)のフィードバックが、前腕の筋活動とハンドグリップの最大等尺性随意収縮(MIVC)に及ぼす影響を検討した。
[方法] 16名の男性が、4種類のフィードバック条件でMIVCを行った。
(1)NO-FB:参加者にフィードバックを与えない
(2)FORCE-FB:参加者に発生した力を視覚的にフィードバックする
(3)AGO-FB:参加者に2つの把持主動作筋のEMG活動を視覚的にフィードバックする
(4)ANTAGO-FB:参加者に2つの把持拮抗筋のEMG活動を視覚的にフィードバックする
それぞれのフィードバックは,対応する筋肉の力または電気的活動の信号をモニターすることによって表示された。
[結果] NO-FBと比較して、FORCE-FBはMIVC力が高く(+11%、P<0.05)、主動作筋と拮抗筋のEMG活動が高く(それぞれ+8.7%、+9.2%、P<0.05)、主動作筋のMIVC/EMG比が良好であった(P<0.05)。AGO-FBは主動作筋のEMG活性が高く(P < 0.05)、ANTAGO-FBは拮抗筋のEMG活性が高かった(P < 0.05)。MIVC力は、主動作筋フィードバック条件の方が拮抗筋フィードバック条件よりも高かった(+5.9%、P<0.05)。
[結論] 今回の結果から、MIVC力は、力覚や筋電図のフィードバックなど、異なる視覚的フィードバックによって影響を受けることがわかった。さらに、これらの結果は、採用したフィードバックの種類がEMGと力の関係を修正できることを示唆している。最後に、EMGバイオフィードバックは、運動戦略を最適化するための興味深いツールとなり得る。しかし、戦略とは無関係に最高の強度を発揮する目的では、力のフィードバックを推奨すべきである。
▼ So What?:何が面白いと感じたか?
今回の結果を簡潔にするとこうだろう。
EMG-FB:運動戦略を最適化、修正に最適
FORCE-FB:最大の力を発揮するために最適
では、鏡を用いたFBと、EMG-FBの比較はどうだろう。共に、『運動戦略を最適化、修正』させるために行うことが多いが、両者にキネマティックスや筋活動の変化はあるのか、気になるところだ。また臨床的に考えると、鏡や体重計といった安価で簡便なツールのみで、EMG-FBと同等の効果を及ぼすことはできたら嬉しい。工夫次第で可能な気がする(下記文献は一例となるだろう)。こうした研究の蓄積によって、『○○の動作は○○を工夫すればEMG-FBと同等の効果が得られるよ!』といったパターンが明確になっていくと面白い。
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