#179 スキルがあっても、いつもできている?
児童の多様化、保護者の価値観の多様化、それにともなう対応に頭を悩ませている先生は大勢いるだろう。ここ数年、精神疾患で休職した人が5000人と高止まりしている。現場では、たくさんの研修会が行われている。その手の書籍も販売されている。先生方はスキルを学び、実践しようと努めているだろう。しかし、そのスキルの内容によっては、期待している効果を得られないものがあるんだ。
例えば「傾聴」のスキルで見てみよう。傾聴のスキルとして次のようなものが挙げられる。
① 相手が話しやすい雰囲気づくり
② 笑顔
③ うなずき、あいづち
④ 繰り返すスキル(オウム返し)
⑤ 相手の話に興味をもつ
⑥ 相手の話を遮らない
このスキルを使うと、子どもは心を開いてくれるようになるのだろうか。誰だってすぐに効果があるとは思っていないだろう。では、1週間後、1か月後、3か月後は?効果が見られないとなると、取組損だと思い始めてしまう人もいるだろう。でもね、それはしょうがないことだ。傾聴のように、信頼関係を築くものは、いつもできていなければ効果は得られない。
想像してみて欲しい。朝、不機嫌そうな顔で教室に入ってきた先生。中休みの教育相談の時間になったら、急に優しくなった。そこで、昼休みに話しかけてみたところ、眉間にしわを寄せて「後で」と言われてしまった。こんな先生に心を開くかな?
1日の全体の会話のうち、どれくらいの割合でできているだろう。もし、自分の気分によって変わっているのなら効果を得られなどころか、子どもは君へ対して心を閉ざすだろう。
せっかく学んだスキルを実践した結果、効果を得るどころか、逆効果になってしまうことがあるんだ。
忙しくていつもはできない。教師だって人間だ。と言いたくなる気持ちは分かる。そこで、僕は、できない理由を伝えるようにしている。「今日ね、先生具合が悪いんだよ。顔が怖いかもしれないけど、許してね。」また、意図的にやらない時は、「先生が今、君の話を聞かなかったのは、やるべきことをやっていなかったからですよ。」と、理由を伝えるようにしている。つまり、子どもがわかりやすいように努めている。