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#83 相対化という防御

僕たちの仕事は難しい。未来を担う人材を、未来を経験したことのない人材が育てる。未来は誰も経験していないのは当たり前のことだ。だから、未来を見据え、社会で生きていける人材を育てる。

僕らはどれくらい未来を見通すことができているのだろうか。国の示した指針に則っているのならまだいい方だろう。しかし、教師が自分の価値観に則って指導してしまっている場面を見かけることがある。価値観が変わるのは当たり前のことだ。僕らの価値観が、数十年前に受けた教育が基になっているとしたら、多少の危うさを感じるは僕だけだろうか。君の価値観を否定しているのではない。僕が伝えたいのは、「僕らの価値観は絶対的なモノではない」ということだ。

自分が正しいと思い込んでしまうのは危険だ。君の目の前の子どもたちは、十年後に君が想像もできない世界を生きていくことになる。僕らがこれまで積み重ね、作り上げてきた価値観だけを武器として子どもたちに与える。それを手に子どもたちはVUCA(Volatility:変動性・不安定さ、Uncertainty:不確実性・不確定さ、Complexity:複雑性、Ambiguity:曖昧性・不明確さ)な十年後の世界を生き抜くことができるのだろうか。

だからと言って、未来を予測しろと言いたいわけではない。プロや専門家でも外すことの多い未来予想なんて手に負えない。でも、できることからやっていこうじゃないか。

その一つが、自分の見方や考え方の絶対化をやめ、相対化を取り入れることだ。「相対化」とは、一面的な視点やものの見方を、それが唯一絶対ではないという風に見なすことだ。方法は3つある。

①視点を変える

立ち位置を変えたり、モノを見るスケールを変えたりするんだ。例えば、「世界が100人の村だったら」という本は知っているかな。世界人口を100人と見なす(スケールを変える)ことで、気付きが得られる。

②他者と出会う 

自分のやっていることは、多くの中の一つだと気付くことができる。そのためには、考えの違う人とも緩くつながっておく技術が大事になる。共感できる人だけつながることによって、世界は全て自分と同じ考えなんだと勘違いしてしまう。子どもが「このゲーム、みんなもっているから、買ってよ。」というのと同じだ。持っていない子と遊んでいないから、ゲームを持つことを絶対化してしまう。

③歴史を遡る

自分が信じているそのやり方は、実はここ数年のことでしかないのかもしれない。歴史を知ることで、自分の考えの立ち位置が分かる。もしかしたら、自分の考えは当たり前ではなく、少数派なのかもしれないだろう。


できることから始めていこう。まずは、自分の見方、考え方の絶対化を疑うことだ

そして、自分に都合のいい情報から自分を防御するために、①視点を変える ②他者と出会う ③歴史を遡ること、をしてみよう。

(相対化のための3つの手段は「教養の書」戸田山和久で発見。学生向けの一冊だが、教員であればぜひ読んでおいて損のない一冊だ。)

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