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「身体の記憶」~世界と格闘していた少年時代~

 やんちゃ坊主で、怪我の絶えない小学生だった。塀をよじ登る途中で足を踏み外し、張り巡らされた有刺鉄線に太腿を引っ掻け、傷口を縫うほどの怪我をしたこともある。当時の傷跡が50年以上経った今でも残っている。

 あの頃は、結果を考えずに行動するタイプだったのだろう。痛い思い出がもう1つある。公園で咲いていた花に、羽を八の字に広げ、ストライプ模様のお尻を揺らしながら、一匹の虫が止まっていた。

 捕まえようとして、花ごと両手で包み込んだ。しばらくすると、片方の手の平に激痛が走った。驚いて両手を開くと、虫は羽音を残して飛んで行った。手を見ると、痛みの部分だけが赤く腫れていた。

 蜂の一刺しだった。当時は蜂の存在も知らない、好奇心旺盛な少年だった。大人になった今でも、その性格は変わらないが、身体で覚える機会は激減した。世界と格闘しながら、体験を積み重ねていた幼い日々が懐かしい。