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迷ったらモダンエルダーから学べ

前回は、決まり事が多い仏教系先保育園からモンテッソーリ系の自由な幼稚園へ転園した話を書きました。

今回は私の子育て観に少なからず、影響を与えてくれた85歳男性の話を書こうと思います。

85歳新人作家から営業される


彼との出会いは、近所の公園。
幼稚園のお友達と楽しく遊ぶ子どもの傍で、ママ友と世間話をひとしきりし、「う~ん、、、これ以上、話すこともないなぁ。困った」と思っていた私。

ちなみに、ママ友との付き合いでは、こういう瞬間はよく訪れます。ママ友というものは、私個人の友達とは違うカテゴリーの人間関係で、人生観も趣味も全く違うことが多いです。なので、共通の話題は子ども関係のこと。ある程度、立ち話(・・という名の情報交換)が終わると、ふと、「シーン・・・ハイ、もう話す事ないでーす・・・」の時間が訪れるのです。最初はこの時間が大の苦手で、焦って話題を探したものですが、ママ4年目位のこの頃にはそんな努力も面倒になり、子どもの様子を見に行くフリをして、何となくその場から少し距離を置く、、という技を身に着けていました。

そんな私に、声をかけてきたのが、御年85歳のこざっぱりとした身なりの紳士。子どもが大好き、、という柔らかい雰囲気の彼に好感を持った私は、彼の話し相手を買って出ることにしました。彼がなぜ私に話しかけてきたのか?暇つぶしの相手に?まぁそれもあったとは思いますが、メインの理由は、なんと「営業」でした。どうやら、幻冬舎から自伝小説を出版したそうで、その本が地元の本屋さんにも並んでいるので、ぜひ読んでみてほしい、というのです。著書のタイトルが入った名刺まで用意されておりました。すごいガッツですよね。本の内容がご自身の母親との話だそうで、子育て中の母たちに読んでもらいたい、と考えているようでした。
(幻冬舎から出版?ナニソレ大物なの?と一瞬思いましたが、調べてみると、幻冬舎から自費出版ができる、ということのようです。)

本を読むかどうかは別として、私は彼の、85過ぎても尚現役!という営業マインドに感心し彼に興味を持ったので、キチンと話を聞く事にしました。そこで彼が私に語ってくれたことは、後から思い返しても、とても味わい深い話でした。

子どものアハ体験を撮影するのが趣味

彼は大学教員まで務めた元教員だそうで、教育論に関してはご自身の経験からなのか、芯の通ったものをお持ちのようでした。
彼と会話をするうちに、ハッキリと結論めいたことは言わずとも、立ち話の隙間から漏れでる、「子ども中心主義」の構えに気づきました。

彼からお孫さんの動画を沢山見せてもらったのですが、普通は孫の愛らしい振る舞いや表情を見せたがるものですが、85歳新人作家は違いました。お孫さんが2歳くらいの時期の動画で、網戸を開けようとトライ&エラーを繰り返す動画を見せられた時のこと。「ホラ!ココ!この瞬間に足の確度を変えたでしょ?気づいたんだよねー、この方が開きやすいって!!」と誇らしげです。

次は、お孫さんが年中さんくらいの頃のもので、ピアノを弾きながら音階を探す動画です。何度も弾くけれどちょっと音程が外れてしまう。繰り返し繰り返しチャレンジし、ついに、正しい音階を見つける、、というもの。「最初の表情をみててね、、、、あ、ほら!ここで表情が変わったのわかる?」と細かく解説をしながら見せてくれました。そう、彼は子どもが自ら何かに気づいた瞬間、「アハ体験」を、たぶんこの世で一番美しいもの、と見立てていて、それを私に一生懸命伝えてくれたのです。

孫が語った「人生で一番楽しかった日」

そんな彼の話を私が前のめりで聞いていたからか、彼はだんだんとノッてきて、ご自身の家族についてのボヤキを話してくれました。「嫁と教育観が合わない」のだそうです。幼稚園児の孫は、園から帰ると嫁に毎日何かしらの習い事に連れていかれる、忙しくて可哀想だ、というのです。ふむ・・・正直、東京ではよくある光景ですよね。教育業界の猛者達が「これをやれー!早いほどいいぞー!」というマーケティングをまくしたてておりますので、母親たちは踊らされがちなのです。(私もその一人であるので、よくわかります・・)

そんな中、お孫さんを彼一人で預かった日の話。お孫さんに「何をしたい?」と訊くと、お孫さんは「バスに乗りたい!」と言ったのだそうです。この年頃の男の子に乗り物だいすき!という子は多いですよね。そうか、そうか、という事で、おじいちゃんと孫は、二人で駅からバスに乗り込みます。行先は決まっていません。窓から見る景色で、何か気になるものがあったら、降りて見てみよう!という、『ぶらり途中下車の旅』を二人でやってみたのだそうです。習い事に通う為に、何度も乗ったことのあるバスだけど、今日はいつもと違う。自分の好きなところで降りて、また乗って・・。違うバスに乗り換えたっていいんだ!自由を手に入れた乗り物だいすき男児は、それはそれは旅を楽しみ、おじいちゃんとお別れの時に、「今日は、僕が生きてきた中で、いちばんたのしい日だったよ!」と言ったのだそうです。彼は私に、「これ以上の誉め言葉がありますか?何か特別な事をしたんじゃないんですよ。子どもの自由にさせただけです」とおっしゃっていました。

私は子育てに行き詰まると、よくこの話を思い出します。知育系のインスタを見たり教育熱心なママ友と話した後、「私は何もやってあげられていない、、」と心が乱れたとき、思い出す事が多いです。

モダンエルダーを味方につけよう

先に出てきた嫁のように、ともすると私たちは教育業界の猛者達の餌食になり、知らないうちに知育レースを走らされていることがあります。忙しなくタスクをこなす日々に疲れたら、、身近にいるモダンエルダーを探してみるのがよいかもしれません。

モダンエルダーとは、50代で若者だらけのIT企業、Airbnbに飛び込んだ、チップ・コンリー氏が著書の中で紹介した言葉です。(『モダンエルダー 40代以上が「職場の賢者」を目指すこれからの働き方』) 老害と真逆の存在、職場の賢者として人生100年時代に尊敬され続ける、 新しい年長者としての在り方について書かれています。

私は、たまたま公園で出会い、ちょこっと会話をさせてもらった、彼の話に今でも励まされています。モダンエルダーは、職場にいるかもしれないし、子どもの学校や習い事の先生かもしれないし、海外ブロガーかもしれないし、映画(※)の中にいるかもしれない。はたまたラッキーな事に家族の中にいるかもしれません。

(※ちなみにロバート・デ・ニーロとアン・ハサウェイが主演の『マイインターン』はモダンエルダーを理解するのにベストチョイス。私の大好きな映画のひとつ♡ このポスターのキャッチコピーも好き!)


何もしなくていい。ただ子どもの自由を保障して。

先にご紹介した、85歳新人作家さんと同年代と思しき、娘の通園する幼稚園の園長先生が、保護者に向けて語った言葉の中で、印象的な話があります。

「お母さま方がお子様に一生懸命なのはよくわかります。でも無理強いはしないでください。子どもには子どもなりに、自分でスイッチを入れるタイミングがあります。成長スピードは子どもにより違います。早熟な子もいればスロースターターな子もいる。でも必ず子どもは成長します。お母さま方はただただ、子どもがア踏みたいタイミングでアクセルを踏ませてあげる、その自由を保障してください。」

何でもない日を人生で一番楽しい日に変える

note記事では何度も書いていることですが、私は「何でもない日をお祝いする」暮らし方に憧れをもっていて、なるべくそうありたいな、と思っています。どんな日だったら、お祝いできるのか?と考えると、、その解のひとつは、心から自由を満喫できた日なのかな?と思います。乗り物大好き男児は、自由気ままな路線バスの旅をして、素晴らしい一日を手に入れました。あなたは今日、自由を満喫できましたか?もし出来ていないとしたら、、そのヒントはあなたの周りにいるモダンエルダーの方々がお持ちかもしれません。

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