【昆虫の脳を完全マッピング】史上初の脳内神経接続を12年かけて把握したぞ
ずいぶん前に上野の博物館で人体の不思議展という催し物があって、ホルマリンでは無く、プラスティネーションというホルマリンとは違って、モーションをつけることもできるし、触れるほどの保存状態なので、ホルマリンに漬かった臓器とくらべて、イメージがつかみやすいものだった。
ここの展示品で人体を輪切りにしたものがあって、まるでチャーシューのような質感で眺めることができた。いまはMRIで輪切りで見ることができる。いずれは神経の働きをトレースすることもできるかな。
神経の電気信号をリアルタイムで計測できたら、きっとすごい発見があるだろう。そして、脳の働きが完璧にトレースできたら、さらに脳に対する理解がうんと深まるに違いない。
イギリス、アメリカ、ドイツの大規模な研究チームがショウジョウバエの幼虫の脳内のすべての神経接続を記述し、これまでで最も大きく最も複雑な脳マップを完成させた。
人間の脳のサイズと複雑さにはほど遠いが、3016個の神経細胞が548000個の結合を網羅していることがわかった。
コネクトームという壮大な多機能マップを作成するために、研究者は高解像度の電子顕微鏡でショウジョウバエの幼虫の脳を何千ものスライススキャンを行った。次に写真をまとめて、すでに収集して置いたデータに追加し、ニューロン間のすべての接続を細心の注意を払ってマークした。
脳の半球で互いに話をする細胞と2つの半球間で通信する細胞の両方が含まれており、脳全体の相互作用を詳細に研究することが可能になった。
しかし、複雑な行動や認知のために両側からの情報をどのように統合して使っているかはまだわかっていないという。
いずれは人間のコネクトームを完成させる予定であるが、まだ現在の技術ではかなり難しい。ショウジョウバエの脳でも12年かかっているから。
「すべての脳は類似しており、相互接続されたニューロンのネットワークであり、すべての種のすべての脳は多くの複雑な行動を実行しなければなりません。それらはすべて、感覚情報を処理し、学習し、行動を選択し、環境をナビゲートし、食物を選択し、同種を認識し、捕食者から逃れる必要があります」
ショウジョウバエは、研究しやすい特徴、複雑でありながらコンパクトな脳をもち、陣原と多くの生物学的類似点を共有しているため、人気のある科学研究モデルである。
ショウジョウバエのコードについて研究したことは、人間のコードにも応用が利くという。次のステップは学習や意思決定などの特定の行動機能に関する神経構造についてさらに研究し、昆虫が活動に従事している間のコネクトーム全体の活動を調べることであるという。
じつは脳の地図の作成を最初に試みたのは、1970年代のことでC・エレガンスという線虫が対象だった。当時は単純なものだったので、不完全な地図だったが、それでも画期的なものだったのでノーベル賞が贈られていた。50年たった今完全なコネクトームが完成できた。
ここから先はきっともっとうまくいくだろう。人間のコネクトームを完成させるのも案外早いかもしれない。