【自己修復するレザー】菌糸で作ったレザーは自己修復を可能にするぞ
むかし、ボスジャンがほしくて、ボスのシールを集めていた時期があった。自分も飲んで集めたし、知人からもいただいたし、くずかごに見かけたらいただいたこともあった。
そうして、たくさん集めて祈りを込めてはがきを投函した結果、まだ届かない。
時が過ぎて、初詣に訪れたとき、ボスジャンを着ている参拝者の背中を見たとき、自分は外れたのだなとようやく悟った。本革のジャケットは防寒力もあるけれども、質感がいいし、その重量感が心地いい。
それなりに耐久力もありそうだから、なんとなくタフになれたような気分にすらなる。
イギリス、ニューカッスル大学、ノーザンブリア大学の研究者は菌糸体を使って自己修復可能なウェアラブル素材を作る方法を開発した。
菌糸は、ある種の菌類が作り出す糸状の構造物であり、菌類のコロニーは菌糸が絡み合いながら枝分かれして発生し、大きなマット状の構造物が成長することが明らかになっている。
さらに、菌糸体マットを処理すると牛革に似ていることから菌糸体レザーと呼ばれる素材が得られることも先行研究で明らかになっている。
しかし、菌糸体マットを処理するとクラミドスポアが死滅する傾向がある。クラミドスポアとは素材が適切な環境下で復活するための小さな結節。サンプルと革の加工工程を調査した結果、クラミドスポアを死滅させないように調整することで、素材が適切な環境に置かれた場合自己再生する可能性を検討した。
研究チームは、炭水化物やタンパク質などの栄養素を含む水溶液に、活性のあるクラミドスポアを加えて菌糸を育てた。十分な時間をかけて液体に厚い皮ができるまで放置したら、その皮を剥がして乾燥させた。そこから、温度と化学物質を混ぜ合わせることで埋め込まれたクラミドスポアを死滅させることもなく、皮のような素材にすることができた。
できあがった素材は菌糸レザーに似ており、そこに自然治癒力があるのかを調べるために穴を開けた。そして、作成したときと同じ液体に満たしてパットを当てたところ、復活したクラミドスポアが穴を埋めていくことがわかった。
自己修復できるレザー製品なら、本革レザーよりも需要がありそう。ただ、自己修復させるためには液体を用意しなくてはならないから、自分で修理するのはちょっと難しいかもしれない。でも、菌糸レザーならプラントがあれば、どんどん作れるだろうから、いずれはお安く防寒力の高い菌糸レザージャケットなんかが広まるんじゃないかなと思う。