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熟年離婚率が最高に、その背景は?

2022年に離婚した夫婦のうち、20年以上同居した「熟年離婚」の割合が23.5%に上り、統計のある1947年以降で過去最高になりました。

厚生労働省の22年の人口動態統計によると、離婚の全体件数は17万9099組で、02年の28万9836組をピークに比べると約4割減っています。

しかし、同居期間が20年以上の夫婦の離婚は3万8991組で、その割合はこの20年以上、4万組前後で高止まりしています。

熟年離婚率増加の背景


人生100年時代という長寿社会の影響があると思われます。

1950年ごろの男性の平均寿命は約58歳であるのに対して、今や男性の平均寿命は81歳。

定年後、夫婦で過ごす時間が長くなり、将来を考えた際に、またこの一緒にいることに耐えられず、新しい人生を歩みたいと夫婦関係をリセットしたいと思うようになっている人が増えているということです。

平成19年度から始まった年金分割制度も、熟年離婚の増加の一因と考えられます。
以前は、自分で年金保険料を払っていなかった専業主婦は、離婚すれば夫の年金をアテにできませんでした。

年金分割制度ができたので、専業主婦も離婚時に夫の年金の一部を分割してもらえるようになりました。

老後の資金の確保がしやすくなったため、熟年離婚を考える人も増えたのです。

熟年離婚の早期化が進む理由とは


これまでに2千件を超える離婚訴訟や夫婦トラブルを扱ってきたという堀井亜生弁護士によると、「以前は夫の定年退職がきっかけで熟年離婚するケースが多かったが、最近はその前段階で増えている」「50代以降、夫が役職定年を迎えることがきっかけで離婚話になるケースが最近、目立っている」とのことです。

55歳や60歳など、ある年齢に達すると管理職の肩書が一律に外され、給料も下がる「役職定年制度」。最近では、生産年齢人口減少を背景に、大企業を中心に廃止の動きもありますが、今も多くの企業が採用します。

役職定年になることでの、年収やモチベーションダウンが引き金となるということです。

役職定年をきっかけに夫婦関係が破綻したケース


朝日新聞の2024年8月12日の朝刊に紹介されていた、堀井弁護士が扱った事例をご紹介します。

まずは、妻から離婚を持ちかけられたケースです。

妻から相談を受けた堀井亜生弁護士によると、この夫も役職定年の対象となり、年収はほぼ半減。社内の一線から退いたことでモチベーションが下がり、情緒不安定になったという。

老後資金を計算し、「貯金がぜんぜん足りない」と妻に激怒。これまでの家計管理を妻から細かく聞き出し、「何をやっていたんだ」「俺はこれまですごく稼いだのに」などと暴言を吐いたり、暴力をふるったりするようになった。

妻は夫から渡される生活費をやりくりしてつつましく暮らしていたが、子どもたちの学費や住宅ローン返済、夫の両親の病気などもあり、貯蓄は思ったほどできなかったという。
夫は高収入ではあったものの、頻繁に仕事の付き合いと言って飲み会やゴルフにでかけ、浪費が多かった。
子どもたちが独立することになり、2人だけの生活は耐えられないと、妻は家を出た。

朝日新聞2024年8月12日朝刊

夫から離婚を持ちかけたケースもあります。

金融機関で管理職を務めていた夫は57歳で役職定年となり、年収が3割ダウン。当時49歳の妻、子どもと高級マンションに住んでいた。子どもは私立中学校や塾に通い、習い事も多数していて、将来は留学を考えていた。

年収ダウンを機に、夫が家計を見直したところ、この生活レベルを維持すると、子どもの留学費用はもちろん、大学費用も出すのは難しいことがわかった。そのため「このままでは老後はとてもやっていけないので、生活レベルを落として節約してほしい」「マンションも安いところに引っ越したい」と頼んだところ、妻は「収入が下がるのはあなたの努力不足、私には関係ない」と拒否し、夫を無視するようになったという。
夫は家を出て、堀井弁護士に相談にやってきたという。

これ以上、一緒に暮らすのはつらいということで、妻と話し合い、夫が養育費と学費を支払うことで離婚が成立した。貯蓄は少なかったため、財産分与は残った貯金を分ける程度だったという。

朝日新聞2024年8月12日朝刊

熟年離婚を気にすべきは男性


なお、熟年離婚を切り出すのは、圧倒的に妻である場合が多いです。

子育てが一段落したことも離婚を決断する要因となり、退職金や年金などの財産分与を考える場合、夫の定年の2~3年前から妻は準備に動きだすと言われています。

研究によれば、夫婦関係の不満度合いは、妻は夫の3倍というデータもあります。
ただ、夫側は、妻の不満に気づかず、自分は夫婦関係は問題無いと感じている場合が多いのです。

特に男性の方は、「自分の所は大丈夫」と楽観視するのではなく、意図せず熟年離婚を切り出せされないために、今から夫婦関係を良好なものにするために、できることに取り組んで頂きたいです。

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