親の介護をきっかかけに、夫婦の亀裂が深まることを防ぐ「2つの大切な考え」
50代以降の夫婦にとって、どちらかの親の介護が必要となる可能性が高まります。
その親の介護をきっかけに、夫婦仲が険悪になったり、介護離婚に至るケースがあります。
親の介護をきっかけに夫婦仲が険悪化した事例
このような辞退をさけるために、ぜひ知っておいて頂きたい考えを2つご紹介します。
子どもは必ずしも直接介護する必要義務はない
親の介護は扶養義務に含まれており、民法877条第1項で「直系血族及び兄弟姉妹は、互いに扶養をする義務がある」と定められています。
扶養義務を負うのは、直系血族及び兄弟姉妹、親の配偶者です。
例えば、夫婦において、パートナーの親に介護が必要となった場合、その義務を負うべきは、その実の子であるパートナー自身であり、その配偶者は義務を負うことはありません。
また、パートナーに兄弟姉妹がいる場合には、同等に義務を負います。
「長男だから優先的に義務を負う」ということはありません。例えば3人兄弟だとすれば、3人で話し合って決めるということになります。
扶養義務の内容は、身の回りの面倒を見る義務、 経済的に扶養する義務です。
この義務は、義務を追う人が、通常通りの生活を送れることを前提として、通常の生活を犠牲にすることのない範囲で、余力でやればよいことになっています。
身の回りの世話をするというのは、必ずしも自分の身体を動かして直接介護するということだけではありません。
老人ホームなどの介護施設を選ぶとか、介護サービスの手配をするとなども含まれます。
扶養義務は生活費や介護費用などの経済的支援だけでも行えば、義務は果たされます。
扶養義務の程度は、扶養義務を負っている方が、収入に応じて生活できる範囲で親族を支援するとされています。
経済的に余裕がない場合、強制されません。
施設に入れることはかわいそうなことではない
「親を介護施設に入れるのはかわいそうなこと」
「身内の人間が必ず介護するべきである」
こんな思い込みを強く持っていて、そのため無理をしまで介護される方が少なからずいます。
結果、自分自身、無理をして、結果的に「介護うつ」になってしまう。
介護をするために仕事を辞めて、結果的に経済的に立ち行かなくなってしまう。
介護で無理をしているために、兄弟の中で介護を引き受けている人と引き受けていない人の間に亀裂が生じる。
介護で無理をしたことによってストレスが溜まって介護虐待に至る。
これらの思い込みの背後に、「親を介護施設に入れるのはかわいそうなこと」「身内の人間が必ず介護するべきである」という思い込みがあります。
ちなみに、家族による介護の方が介護施設での介護よりも圧倒的に介護虐待が起きやすいと言われています。
令和3年度の高齢者虐待の件数によると、介護施設における件数が739 件である一方、自宅において家族や同居人による虐待は1万6000件となっています。なんと、200倍以上なのです。
この数値は実際はもっと多いだろうと言われてます。虐待は家庭の密室で行われることであり、なおかつ、虐待を行う家族の多くはそれが虐待であると自覚していないことが多かったりします。
介護熱心で 献身的に介護するからこそ、無理をして介護疲れが蓄積して、その結果、介護虐待をするようになるというケースが多いのです。
介護施設に入るよりも、家族に介護される方が介護虐待の被害者になる確率は圧倒的に高いということを知っておきましょう。
もちろん、介護虐待まで行かなくても、何かをきつめに言われたりとか、不機嫌に答えされたりということになると、非常に多くなります。
こういう事実を見ると、「介護施設に入れるのはかわいそう」とか「 身内の人間が介護するべき」というのは、極めて偏った思い込みと言わざるを得ないです。
精神科医の和田秀樹先生の著書の中でこんな ことをおっしゃってます。
自分の親が認知症になったり要介護状態になったりすると、それまで親と会うのが盆と正月くらいだった人たちまでもが、家族で介護をしなければと考えて、いきなり親と同居しようとする。
そうしなければならないという風潮があるが、これは日本に未だに残っている封建的な考えである。
介護施設に入れる のはかわいそうとい風潮がまだまだ日本には根強いけれども、これは非常にナンセンスだ。
プロが行う介護と素人の家族が行う介護では多くの場合そのクオリティに大きな差がある。つまり公的な介護の方がより良いケアを受けられる。
親の介護に直面した場合、まずは
施設に入れることはかわいそうなことではない
ということと
子どもは必ずしも直接介護する必要義務はない
この2点をぜひ念頭において、夫婦で話し合って頂きたいです。
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