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『ヨコハマ買い出し紀行』

◾️漫画の概要
アルファは、オーナーからカフェを預かり、そこで帰りを待つロボット。
「夕凪の時代」の「てろてろの時間」を穏やかに描く。

◾️おすすめ
非常に独特の世界観があります。ポストアポカリプスとも呼ぶべきか、お話の随所に人類の緩やかな衰退が見え隠れしています。

物語を一貫しているテーマは、「時の流れ」のように感じます。
成長していく子供とそれを見届ける大人、街灯の過去と未来、姿が変わらないロボットと寿命を迎える人間...  
大きな主張こそはないけれど、終末という舞台装置はそれを残酷なほどに映し出すのに貢献しています。

好きなところは、アルファさんの何気なく過ごした1日の感じ方が、漫画としては贅沢なほどの描写とことばと構図で表現されるところです。モノクロのはずなのに鮮やかにしっとりと彩られているのです。こういった話は展開にほとんど影響がないのですが、これがなければまた違った印象の評価になっていたかもしれません。

エンジンの回転と風圧と景色の流れ方のちょうどいい速さを見つけると
ハンドルのこともアクセルのことも忘れてくる
だんだんバイクがなくなって……

まるで自分の体で地上1mの空中を飛んでる感じになってくる

私は小型二輪に乗るので、物語中のこの表現がとても好きです。

何気なくプロセスとして過ごしている毎日も、あえてまざまざと言葉で表してみると、すごかったり面白かったりすることに気づきます。ただ、そのあえて表すというのが非常に難しいことです。そんな難しいことが、この漫画ではかるーくさらりと描かれてしまうのです。

退廃的でもシニカルでもなく、
少し切なく淡々と終わりを迎えていく「心地良い破滅」
こんな時期だからこそのおすすめ漫画です。



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