【本棚】#10 明け方の若者たち
友達に勧められてこの間読んだ小説
なんだかんだ本は読んでいたけど書いてはなかったからようやく#10
明け方の若者たち カツセマサヒコ
「私と飲んだ方が、楽しいかもよ?笑」
という最強の殺し文句がきっかけとなり始める20代前半の沼のような恋愛ストーリー
2つの「ずるい」
読んだ後にまず浮かんだ感想、「ずるい」
まず、退屈な飲み会において、なんとなく気にかかった女性からこんな言葉をかけられたらそりゃ「行きます!」ってなる笑
主人公はどちらかというと意志は強くなく、リードされる側の性格
その性格を一目で見抜いたかは定かではないが、「たまたま」目があって「たまたま」スマホが見つからなくて、「たまたま」着信歴にあったから
うん、確信犯。
ここから泥沼のような甘く、甘美な恋愛が前半押し寄せるわけだがそういう意味のずるい、が1つめ
(もう一つのずるい、は最後に。)
エモいを体験できる作品
正直「エモい」という言葉は今までよくわからない感覚だったが、この作品が「エモい」ということか、と納得した作品
エモい
・哀愁的、切ない、寂しい
・心に響く、感動的である
・ヤバい、イケてる
by ニコニコ大百科(https://dic.nicovideo.jp/t/a/エモい)※意味合いはニコニコが一番適切な気がした笑
この作品は恋愛面だけでなく、仕事パートについても半分は描かれている
その中で何がエモいの?と聞かれると、すごく難しいものがあるが
恋愛パートでは、「現実に起こりうる程度の理想」が詰め込まれている部分だと思う
真冬におでんを求めて探し回った後で飲んだ恵比寿駅での缶ビールも、真夏の折り返し地点のように暑い日に食べた定食屋のシラス丼も、全てがやたらと美味かった
いい意味でうへぇ、となるほど、いつぞやに夢見て、いつしか忘れていった気がする理想。おそらくこの懐かしいような寂しいようなでも心にくるもの、が「エモい」なんだろうと思う。
‥違ったらすいません
かつ、仕事パートはなかなか重い。(というかこっちは終始重い)
学生の頃、内定が早いだけで感じていた「勝ち組」
「何かしてやる」という全能感
仕事し始めてわかる「こんなはずじゃない」感情
周りとの比較から感じる劣等感
こっちは徹頭徹尾えげつないぐらいの現実
恋愛面との対比もあって、ちょっと苦しくなるほどの青さを感じることができ、理想とは程遠い現実に溺れる様がよくわかる
20代後半〜30代ぐらいにピンポイントで刺さりそう
2つ目のずるい
さて、ずるいの2つ目
なんで飛ばしたかといえば、個人的にすごくしっくりこないから。
ゆえにこの本は半分好きで半分嫌い、が正直なところ。
で、何がずるいか。それは物語の構成
ネタバレになるが、「私と飲んだ方が、楽しいかもよ?笑」なんて誘い文句をかました彼女。
そしてその彼氏となった主人公は最終的に別れることとなる(まあそれは冒頭でわかることではあるのだが)
ただし、その理由が相当な後出し。
唐突感がありすぎて一旦戻ってしまったぐらい。
それがずるい
類い的には「夢オチ」を読んだ時のような感じ(比喩であり、夢オチではない)
しかもそれが「実は主人公も知っていて、知らないのは読者(と友人)だけでした」なんてものだから、ちょっと理解が追いつかなかった。
というわけで、あまり好きではないという感想に至ってしまった、残念。
せめてもう少し前半で匂わせてくれればなー、と思った次第である。…一応家に絶対あげてくれないという描写はあったけど(自分の嗅覚が腐ってる可能性もややあるが)
詳細は読んで知るべし、だが、前半はむせ返る程甘く、後半は嫌になる程淡々と読める本。
「エモい」の勉強用にぜひ
オワリ
余談だが読んでて乾くるみさんのイニシエーションラブを思い出した
理由は多分明確
ちゃぶ台返しならこっちがおすすめ
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