ノベルアップで「呪怨」×「ぼっち・ざ・ろっく!」のクロスオーバーSSを連載します!
佐伯伽耶子は生きた人間を呪い殺すのが簡単過ぎて、飽きた。
「どいつもこいつも・・・骨がない。あっさりと抵抗を放棄しやがって・・・・ったくこれだから、最近の若いもんは」
また現象として求められ、利用され続ける己と息子の行く末に思いを馳せ、げんなりした。
「雑コラばかりに使われても、その作成者が死ぬときは皆だいたい同じ顔だ。つまらん」
そこで、方向性をがらりと変えた。具体的にはボイストレーナーを始めたのだ。ある人間の女性の胎内から受肉し、肉体を得た彼女は下北沢の住宅地で、多種多様な人間の需要に即したボイストレーニングの指導をひっそりと始めた。
(生きた人間が私の指導で...それまでより生命エネルギー豊かになる様、観察するの、思ったより面白)
そのことに気づいた彼女は、一方で己の破壊衝動と折り合いがつけるべく、とりま、「生きていない相手」を呪い殺す対象に定めた。
「そちらのほうが生者よりは骨のある相手が多いはず」
そう踏んでいたが、神秘が衰えた現代では、彼女と張り合える相手はなかなかいない。3Rもいかずに降参して命乞いを命もないくせに始める冴えない連中ばかりだ。
(生きている人間がぱっとしないと、死んだ人間も弱い。やれやれ・・・戦うのは、しばらくやめよう。私の利益にならない)
仕方なく色々勉強して、講習にも真面目に通い、カウンセラーの真似事をして会話を始めたら、延々生前の報われない妄念語りに付き合わされたりして、げんなり。最初は話が長い相手は容赦なく呪い襲い殺し魂を貪り喰らっていたが、最近は息子も手がかからなくなってきてボイトレも軌道に乗り始めたものだから、心理的余裕も以前とは違い、なるべく真摯に、誠実に付き合うようにはしています・・・ただし山村テメーとは...決着をつける。
そんな彼女の教え子の一人が「結束バンド」ボーカルの喜多郁代。彼女が「SIDEROS」の大槻ヨヨコを引き連れ佐伯邸に訪れたとき、新たな「呪い」の回路が開かれ、戦いの火蓋が切られる。