元引きこもりがシステマで変わった話③

だいぶ間が空いてしまいましたが、続きを書かせていただきます。実はこんなタイトルの記事を書いておいて言うのもなんですが、自分が変わったかどうか自信がない時期が続いていて、更新しようとする度に「俺、嘘書いているかも」と不安になったのです。

そういう不安がどこから発生したか、分析してみると、自分がまだ社会的な目線で見ると、大きな変化をしていないことが原因だと思います。私は現在、アルバイトと正社員の中間くらいの立場でとある遊興施設で働いています。ここから順調に成果を出し、待遇を上げていけば、正社員も狙うことも可能です。引きこもりの状態から一応仕事には就くことができたという意味で、小さな成功体験を経験することは叶いました。しかし、そんな小さな変化が起きたというだけで、「引きこもりからステップアップした!!」と胸を張って言っていいのだろうか、ということに私は悩んでいたんだと思います。恐らく、収入が劇的に増えたとか、資格を多数取得し起業した、とかそういう劇的な変化が経験し、他人にそれを見せたいという自己顕示欲的な野心をどこかで持っていたから、自分の変化を確かな変化として実感できなかったんだと思います。

今は、自己顕示欲より、世界の為に人間として何かしたい、という動機で動いたほうが、自然に素直な気がしています。そう考える理由はエゴが悪いから、というより、エゴによって自分を視野狭窄にしてしまい、パフォーマンスに制限をかけてしまうからです。焦点が自分に向くか、世界に向くか、という違いによって視野の広さがかなり変化し、動きの質がまったく異なります。スポーツなどでも周辺視が適切に使える選手が高いパフォーマンスを発揮する例が多いようです。

話が逸れてしまいましたが、前回の続きです。私が「最強の呼吸法」と出会い、健康状態が改善するのを自覚し始めたところまでを前回書きました。

「最強の呼吸法」のエクササイズをやっていくうちに行動意欲が出てきた私は手始めとしてハローワークの職業訓練校でPCの基本スキルを学ぶコースを受講することに決めました。仕事で何をやりたいか、ということはさっぱり決まっていなかったので、とりあえず多くの職場で需要が高そうなものを身につけたいと思ったのです。試験はありましたが、筆記はなく面接のみで、私以外にも様々な年齢層(22~55歳くらい)の人達と一緒に同じ教室で授業を受けました。皆社会でうまくいかず、新しい進路を模索している人達ばかりで、境遇が似ているところがあった為か、コミュ障の自分でもそこそこ仲良く会話することができました。DV夫と離婚して自分一人で子共の為に生計を立てようとしている主婦の方などもおり、そういう人達と自分の状況を比較して、大きな切迫感もなく、なんとなくスキルを身につけたくて学んでいることに気後れしてしまったりしたこともありましたが、「学ぶ」という行為自体が久しぶりで懐かしかったせいか、勉強自体は結構楽しく進められました。

その間にシステマ東京のプライベート・レッスンに初めて通いました。最初のときはマッサージ(緊張が多いとめっちゃ痛くなることもあるが、終わると気持ち良く動けたり、その後の1週間調子が良くなったりする)を受けて、基礎エクササイズをいくつかやり、あとはひたすらインストラクターの人からテイクダウンされまくっていたと思います。ただ、床に倒されているだけなのに、終わるとかなり汗をかきました。その汗が妙に心地良く、こんなに倒されまくったのになんで気持ちが良いのだろうと疑問を感じつつも、それをまた味わいたいという欲求が自分の中で強くなるのを感じました。それで、システマに限定せず、何かマーシャルアーツをやってみようと思いました。

ただ、武術をやるといっても、人と殴り合ったりするのは怖くてできそうになかったので、まずは近所のボクシング・ジムでミット打ちをするところから始めました。ジムのインストラクターは厳しい人もいましたが、皆初心者にも丁寧に教えてくれる優しい人達ばかりで、自分の体力の限界くらいまで身体を追い込むことをサポートしてくれました。当時はボクシング・ジムに週2,3回ほど通い、システマのほうは筋トレやシャドースパといった自主練後に身体をリラックスさせる為にエクササイズを最後のほうにやる、という感じでした。結構疲労している状態でも呼吸を通しながらシステマのエクササイズを得られることがありました。

ちなみに今はもうジムには通っていません。良いジムだったのでやめるときはかなり悩みました。やめた理由はボクシングとシステマという2つの格闘技を同時に習えるほど自分が器用な人間ではないと思ったからです。やめた後、とにかく「リラックス」を意識しすぎて静かなワークばかりやったせいで筋肉量が下がって動きにくくなり焦ってしまうことが何度もありましたが、システマには適切に身体を使えないときついフィジカルワークもたくさんあるので、今はそういうものを日常でやることで、結果的にジムに通っていた頃よりも動きやすくなり、体力が増えたと実感しています。勿論ジムに通い、ボクシングを習い続けていても体力はついていたでしょう。どちらが上、という優劣の話ではありません。恐らく、私にはシステマのほうが身体に合っていた、ということだと思います。

結果的に体脂肪計で筋肉量が「少ない→普通」になり、職業訓練を通して取りたかった資格はすべて得て、また独学でも苦手意識を感じていた漢検2級やITパスポートの資格も取得し、自分にとって望ましい状況で卒業することがなんとかできました。それから、資格を活かせるような仕事に就きたいと思い、IT企業の面接を受け始め、最終的に12社ほど受けてから採用が決まりました。そこで私は安堵をしたのですが、プラグラミングの研修を受けて、安堵をするのが早かったことに気付きました。その研修で担当の人から受けるプレッシャーに耐え難いものを感じてしまったのです。

最初はスローペースながらなんとか相手の期待に応えようとし、研修を終えられるように頑張ろうと課題に家や会社で取り組んでいたのですが、ある日、私はやめることに決めました。なんというか、身体が拒否している、と感じたのです。当時は担当の人に会うと、お腹のあたりがキリキリと収縮し、鳩尾が苦しくなり、最初は感じていた喜びを次第に感じなくなっていました。毎晩帰ってからシステマのマッサージやエクササイズで身体をほぐしたり、相手との距離感を微妙に変えたりしてなんとか対処するようにしていましたが、あるとき、「あっ、このままじゃ警備員時代の二の舞だぞ」と思い、違う職場を探すことに決めました。いざ、やめてみると、両親はかなりがっかりした様子でしたが、私は前職をやめたときとは違う、何か、自由な心地がしました。

私がそう感じた理由は「自分がやりたいことを本気でやるチャンスができた」と思ったからだと思います。当時は正直、私は調子に乗ってのぼせ上がっており、躁鬱的な危うさはあったのですが、今でもやめたことに対する後悔を感じることはありません。プログラミングのスキル自体は今、需要が高まっているスキルのひとつで重要だと思いますし、もしかしたら、将来的にまた学び直すかもしれませんが、恐らくそのときは、独学か、オンライン講座などを通してやることになると思います。

そこから、今に至ります。遊興施設スタッフとして身体を使う仕事で、また始めての接客業ということで、難しいと感じることは多くとも、予想できない相手に対応する、という接客業特有の状況には、どこか武術的な楽しさを感じます。周囲の人達は学生中心で、若干年齢は離れており、何を考えているのかよくわからず、人間関係上のストレスや疎外感を感じることも時折ありますが、そういうときはシステマの呼吸をしたりすることで、なるべく早く精神を平衡状態に戻すようにしています。ちなみに職場はコロナで1ヶ月以上営業停止状態だったのですが、政府が緊急事態宣言を解除した為、6月1日までには再開しそうです。

多くの人々に助けられ、徐々に自分の状態を身体的・精神的に改善してくことで、私はなんとか職を得て、社会人として生きていくことができました。そして、システマもまた、なくてはならないものでした。システマのおかげで私は物事のとらえ方や日常的に身体の使い方、仕事の進め方が変化するようになり、結果的にそれが自分に少しずつ自信を与えてくれていると日々感じます。

けれど、ここで満足しては恐らく私は「システマで自分の状況が改善したし、ラッキー!」くらいのところで思考を停止させ、あとはずるずると現状維持するだけの人間になってしまうのではないか、という危機感があります。自分だけ状況が改善するより、周りの悩んだり苦しんでいる人々が強くなって自分の状況を改善する力を得るほうが、結果的に世の中の問題は少なくなります。

私は今まで与えられるだけで、自分から他人に何かを与える、ということを怠って生きていました。ようするに「もらいっぱなし」のままなのです。今だって実家に暮らしながら両親に生活の為の資金を出してもらっているし、最近は自宅待機中なので、日本や海外の様々なインストラクターやマスターのシステマ・オンラインクラスに参加することができ、非常に充実した時間を過ごし、多くのことをインプットする機会を得ています。そうやってたくさんのものを受け取って、受け取って、その豊かさにとてつもないありがたさを感じつつも、「じゃあ、これだけたくさんもらっている俺は何か返せるものがあるのだろうか?」と思うと、急に自分が小さく、卑小な存在に感じて、情けなくなってしまうことがあります。自己憐憫に囚われてしまうというか。

そこで、最近はtwitterでシステマ・オンラインクラスの内容を自分の視点で振り返って感想を書いたり、与えてくれる人に感謝を伝えたり、こうやってnoteに自分の経験談を書いたり、投資の勉強を始めたり、自分にできそうなことを少しずつやるようにしました。それをもっと広いレベルでごく当たり前のように行えるようになるには、金銭力やスキル等、色々と足りていないものがあります。将来的にシステマをより深く学ぶ為に本部があるロシアやカナダにも行きたいので、語学力も身につけておきたい。

将来どういうことがしたいのか、という目標はあやふやなところが多いですが、ひとつだけ確かなものがあります。システマのインストラクターです。私はシステマのおかげで健康状態が改善し、社会に対する恐怖をある程度コントロールすることが可能になったおかげで、結果的に仕事に就き、少しずつ自分に自信が持てるようになってきました。システマには人生をより良い方向に向かわせるパワーがある、と感じます。そのパワーの源泉が何か、ということを探るには、それをより深いレベルで修練することが求められる職業に就くのが近道だと思うので、その為に私はインストラクターを目指したいと思うようになりました。

そんなことを言っていても、油断すると私はすぐに引きこもりの頃のメンタルに戻り、嫌なことから逃げたくなってしまいがちなので、まずはそういう自分の弱さを否定したり、肯定したりせず、観察するところから始め、苦手なところに自分の伸びしろがあると考えながら、毎日積み上げていけるようにしたいです。

これにて、このシリーズはひとまず終わりです。初めて書いたnoteの記事シリーズですが、読んでくださり、誠にありがとうございました。今後も、面白そうだと思ったことや、有用だと思ったことは記事にして書いていく予定です。今後もよろしくお願いします。


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