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元引きこもりがシステマで変わった話②

 私がシステマを始めたきっかけはいくつかあるのですが、最も大きなきっかけとなったのはシステマ東京のインストラクターである北川貴英さんの著作「ストレス、パニックを消す!最強の呼吸法 システマ・ブリージング」

を読んだことです。この本を読んだきっかけは当時の私がメンタルマネジメントに強い関心があったからです。それでは、なぜそれほどまでに当時の自分が精神改善に拘っていたか、ということを説明するために、引きこもりを始めたときの自分の状況をお話しします。自分の弱い部分について語っているため、人をうんざりさせてしまうかもしれない内容で申し訳ありませんが、説得力を出すには、このエピソードを話すことが不可避だと判断したため、詳細に書かせていただきます。

 当時、私は職場でのいじめと自分への自信のなさが原因で正社員として勤めていた警備会社を退職し、両親の実家で特に次の就職に繋がる行動を取ることもなく、PCをぼぅっと眺めたり、スマホゲームに熱中しながら、自堕落な生活を送っていました。最初は寛容な姿勢を示していた両親もこのままでは正社員の道が断たれ、将来的に大変なことになると言い、「早く仕事を見つけなさい」とプレッシャーを強くかけるようになりました。周囲からのプレッシャーと期待通りに行動できない自分に対する苛立ち、罪悪感から、次第に鳩尾が締め付けられるような気分になったり、胸がざわつくような違和感を覚えることが増えてきました。精神科に受診し、相談にも乗ってもらいましたが、得られたのは自分の記憶力が平均より低く、発達障害を持っている可能性ありと示すデータと、職場の上司よりは話しやすいが、物足りなさを感じる精神科医との対談でした。両親は発達障害に関する書籍などを買って私に読ませてくれましたが、正直なところ、ただでさえ高い就職難易度を更に上げる面倒を避けたい気持ちが強く、また診察費が惜しかったので、私は精神科の受診結果も医師の言葉も無視しました。

 今思うと、無視した理由は単に、プライドとか、自分の話を医者に伝えることが退屈だったから、だと思います。当時は引きこもってばかりで生産的行動をしていなかったため、日常にドラマチックな要素が生まれるはずもなく、そんな代わり映えがない話を誰かにし続けるというのは苦痛でした。無論、引きこもりの日常よりネットフリックスで観ている映画やスマホゲームのシナリオのほうが変化が多いという意味で、娯楽として面白いのは当然ですが。

 ともかく精神科に頼らないと決意した以上、医療以外の方法で、自分を変えていくしかない。そう考え、私は自己啓発系の本やサイトを読んだり、色々な健康法を試したり、大学卒業までほとんどさぼっていた運動を始めたりしました。本や健康法はすぐに飽きてしまうことが多かったですが、運動は習慣化することが叶いました。

 当時やっていた運動はジョギングと筋トレです。運動の中からこれらを選んだ理由は2つあります。一つ目は運動神経があろうとなかろうと自分に合った負荷がかけられる点が魅力的に感じたこと。二つ目は、ジョギングの為に外に出て、周囲の空気や風を感じたり、筋トレで筋肉を痙攣させるレベルまで自分を追い込むと、その間は自分の悩みを一切考えられなくなり、その心地良さにはまったからです。身体に少しずつ筋肉がついてきたことを鏡などで実感できたため、それもモチベーション維持に繋がりました。

 運動を始めると以前より少しだけ自信が生まれ、行動しやすくなり、仕事探しにかける時間も長くなりました。しかし、新たな問題も生まれました。時間をかけただけで「やった」気になり、満足してしまう自分に気づいたのです。このままでは実際の行動に結びつかないで、永久にニートのままじゃないか。そう考え焦った私は肉体だけでなく、精神と知性を改善させるような、メンタルマネジメント的なメソッドを探し始めました。しかし、どこを探しても、書いてあるのは「正しい心構え」とか「考え方」とかそんな言葉ばかりで、「毎回そういうことを意識してやるようにしてるけどうまくいかねえんだよ!!!」と心の中でつい罵声を発してしまう日々。そんなとき、私は「システマ」という言葉と出会いました。


 「システマ」という言葉を私が初めて知ったのがいつか、正確には思い出せないのですが、恐らく「イコライザー」か「アジョシ」がシステマという武術を使っているらしい、というネット上の記事をどこかで読んで、それが頭に引っかかったのだと思います。知らない方の為に説明しておくと、上記の二つはどちらも映画で、映画内で主演俳優が使っている武術も特にシステマとは関係がないのですが、映画としてはどちらもハード・アクション好きにおすすめできる良作です。

 話は脱線しましたが、その「システマ」が「冷静さ」を重要視される武術だということをあるサイトで知り、常に焦りっぱなしの私が心の底から求めているものがここにあるのではないか、と期待した私は試しに「システマ」関連の書籍を一つ読んでみることに決めました。そうして、本記事で最初に紹介した「最強の呼吸法」と出会ったのです。

 その本は今まで読んだ自己啓発本と違い、「意識」とか「考え方」に力点を置いている本ではありませんでした。紹介しているのは「鼻から吸って、口から吐く」というごく普通の呼吸法。それが私が今までの人生で疎かにしていたものだと気づいて、呼吸を意識するようになってから、止まっていた私の日常に少しずつ、確かな変化が起き始めました。


 今回はここまでです。次回はこの本に影響を受けた私が武術への関心を強め、キックボクシングジムに半年間通った話と、システマのプライベート・レッスンを受けた話、職業訓練の話などを投稿する予定です。最後まで読んでくださり、ありがとうございました。また、前回の記事で、「いいね」してくださった方にもこの場を借りてお礼申し上げます。それでは、また。

 

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