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TOKYO2020:江戸の伝統工芸と園芸文化のおもてなしin浅草
こんにちは。parkERs ブランドコミュニケーション室の森です。来たる2020年開催される東京オリンピック・パラリンピック競技大会。
チケット販売も始まり、今大会ではどの競技でどのようなストーリーが生まれるのか楽しみになってきました。そこで 2020東京大会にはどんな盛り上がりがあるのか、そのひとつをご紹介します。
浅草に咲く、夏の風景
浅草寺の前を通る並木通りの中央分離帯に誕生したのがこちら。
「江戸ルネサンス 伝統と文化が薫るおもてなし」をテーマにした並木通りのイメージパース
こちらは2020東京オリンピック・パラリンピック競技大会のマラソンコースでランナーが走る道。浅草地区の「おもてなしの庭」プロジェクトの企画・コンセプト提案・デザイン設計・施工まで、parkERsが手がけさせていただきました。
庶民の暮らしに彩を添えてきた朝顔と竹。「江戸文化」のうち、台東区で特に盛んであった「伝統工芸 / 竹細工」と「園芸文化 / 朝顔」に着目し、“ツナグ”をテーマとして全体のプランを計画。“ツナグ”には、「伝統をツナグ、未来へツナグ、地球とツナガル、世界とツナガル、人をツナゲル...」といった想いを込めています。
そして昨年こちらのプロジェクトが『都市の環境プラン大賞』を受賞いたしました!
2020年7月に行なわれる東京オリンピックの開会式を前に、関係者を招いて「おもてなしの庭」の除幕式が9月5日に行なわれます。
また9月15日に開催される、2020東京オリンピックの日本代表選考会も兼ねた「マラソングランドチャンピオンシップ(MGC)」ではこのコースが使用され、はじめてランナーがコースを疾走する姿を見られます!
MGCでもオリンピック当日も浅草付近はチケットなしで観戦できるエリアなので、チケット争奪戦に溢れてしまった人にもおすすめ。混雑は予想されますがレースの雰囲気を味わうにはおすすめのスポットです。
「おもてなしの庭」の見どころは?
2020東京オリンピックのマラソンコースとなる並木通りの中央分離帯には、日本人が「朝顔」から連想するであろう竹簾(すだれ)といった夏の原風景を、「園芸文化 / 朝顔」の支柱に「伝統工芸 / 竹細工」を使用するデザインで表現。また、在来種の植物を下草に植えることで、昔から今へ受け継がれる浅草地区の文化の伝承を期待しています。
この竹編みの支柱、実は朝顔の特性や習慣を調べ上げ制作に至ったもの。
ランナーや沿道の観客が横から見たときの姿から、空撮など上から見下ろしたときの姿まで、360度から“朝顔”を感じられる並木通りの景色をつくるため、朝顔のつぼみは右回りに巻きつけて伸びていく性質を考え作りあげているのです。
また朝顔が巻きつく竹細工の支柱は、大分県の竹職人を訪ね直談判し、六つ目編みの技術を用いて制作いただいたもの。
打合せを重ね、かごの編み方の一つである六つ目編みと、継ぎ目にはやたら編みを採用。植物が絡まりやすいサイズで編まれ、上段に向けて編み目を大きくしています。
様々な伝統工芸が受け継がれる台東区ですが、竹職人が亡くなり技術が途絶えてしまうという過去がありました。今回、あえて劣化してしまう竹素材を使用することで、2年毎に編み直す必要があるからこそ、台東区に居なくなってしまった竹職人(伝統工芸)を再び活性化し 文化を取り戻したいという思いからこのデザインは生まれました。
支柱を組み立て竹細工を設置している様子
竹編みの支柱 設置完了時の記念撮影
「夏・朝顔・竹簾...この3つの要素が揃い生まれる風景。そういった風景をこの浅草という空間に創りたい想いがあったため、竹細工は“朝顔が巻きつく支柱”の役割が大きいです。
竹細工のデザイン美で成り立つものではなく、朝顔が竹にしっかりと巻き付いた時に一番綺麗に見えることが最も重要なことなのです。」
ー parkERs空間デザイナー 片平麻衣子(写真中央)
「おもてなしの庭」で行なわれるチャレンジとは?
一番注目されるのは、通称『花咲かじいさん作戦』(社内ではそう呼んでいます。笑)
ランナーが浅草寺を通過する午前6時40~45分前後のピンポイントの時間帯に、一番美しい状態で朝顔の花をひらかせてみせる!というチャレンジです。本来自然の原理で咲き人間にコントロールできない儚さも美しいですが、浅草寺付近を通過する際の目玉になる朝顔を咲かせないわけにはいきません。
「朝顔って朝に花がひらくから、午前中のマラソンだったらそんなに大変じゃないんじゃない?」というお声に向けて大切なポイントです。
朝顔が花をひらかせるのは、名前の通り「朝」の時間帯です。
実は朝顔には体内時計があって、日が落ちてから約11時間後に花をひらかせる習性があります。ですがいつ日が落ちるのか人間のわたしたちにはコントロールできないこと。でもこのプロジェクトは、それを何とかして咲かせてみせる!というもの。しかもマラソン競技当日の2020年8月2日(女子)と9日(男子)午前6時40~45分前後に一番綺麗な状態で!というピンポイントな時間帯で!
さらにいうと、夏場は猛暑のため、朝顔がひらいている時間は短め...。朝顔は暑いと花がひらいても早くしぼんでしまう習性があるので、そう簡単にはいきません。
入谷の朝顔市の関係者、朝顔の生産者、市場、東京都農業試験場の方等々、さまざまなプロフェッショナルと自身の専門性を掛け合わせて、プランツチーム全力で実験しています。
朝顔の知見を増やすため 東京都農業試験場を視察
生産地を訪れ 朝顔の育成チェック
(こちらの朝顔たちが現在並木通りに移され今花を咲かせています!)
また実際にはこのようなことをして東京オリンピックに備えています↓
・1日の中で咲いている時間が長く、花芽が多くつくのにもっとも適した朝顔の品種探し
・暗くなってから11時間後に花をひらかせる性質を利用した計画立て(浅草周辺は意外と夜も明るいのです...)
・真夏の暑さでも枯れない自動潅水システムの計画・設置
・自宅の庭でとにかく実験!
parkERsプランツコーディネーター辻永の
自宅実験の様子①
朝顔の育成実証実験・成長観察
parkERsプランツコーディネーター辻永の
自宅実験の様子②
ツルはどこまで伸びるのかの検証
1年以上前からこのような実験を続けて、朝顔を咲かせる一大プロジェクトに臨んでいます。
「単なる装飾ではなく“地域の文化を取り戻す”ことが主軸にあるため、この先も10年間の維持管理が続いていきます。
地域の小学生に朝顔をタネから育ててもらったり、竹細工が劣化したら職人の手で編み直し張り替えるなど、地元の子供たちと職人を巻き込みながら続けていくことで、また未来に新しい文化を繋げられるよう、むしろ東京オリンピックの後の時間の方が大事だと考えて取り組んでいます。」
(左:プランツコーディネーター 辻永、右:空間デザイナー 片平)
2020東京五輪まで、あと336日!
残すところ開会式まで336日になりました。
まずは9月15日のマラソングランドチャンピオンシップのスタートを待つのみです。ここで第一次実験の成果が表れます...!果たして花はひらくのか?筆者も沿道で応援しようと思います。熱中症対策...。
マラソングランドチャンピオンシップの様子もまたnoteでご紹介します。
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この記事を書いた人
森 美波(もり みなみ)
park corporation/parkERs
ブランドコミュニケーション室所属。
学生時代海外に渡り、英語 フランス語 韓国語などの言語を学ぶ。
「いま一番世界に届けたい日本の仕事」とparkERsに入社。
PR活動をメインに活動中。