よむラジオ耕耕 #19 「真夏にイン、マイマイン」
加藤:8月の2週目ですね。前回に引き続き、ラジオを通してみんなが教えてくれた映画で、ぼくらが観た作品を紹介します。
とのお便りでした。『佐々木、イン、マイマイン』は2020年の映画で、King Gnu や平井堅の MV の監督をしている内山拓也さんが手がけた青春映画ですね。
加藤:これ、気になったので観てみたんですが、なんていうんだろう⋯青春映画特有のノリの描写が、もう40歳を超えると、結構きついのかなと思いました。もうついていけなくなっているのかも、と思った。あと、どの役者さんも(村上虹郎以外は)わからなかったのよ。この役者さんは誰だろうな。となってしまいました。もちろんみんな演技良かったけれども。
加藤:とはいえ、これはぼくが高齢化しているだけで、低評価ってわけではなくて、青春映画に漂う独特な『臭さ』みたいなものをスタイリッシュにきれいに収めていて、そこは嫌ではなかったな。むしろ素晴らしかった。この映画、時系列を高校生の時と、現在と行き来させて、いわゆる「将来どうしたいの?お前の人生どうなってくの?」を描いているんだと思うけれど、その中で『佐々木』という存在がどんどん大きくなっていって、最後のピークに向かっていく。悪ノリの寒い感じではなくて、どこか哲学的なおもしろさがあるなぁと。ただ、このポップなタイトルのせいで、サブカルおじさんがふるいにかけられている感じがしたけどね(笑)。『若者向け』と言われているみたいで。でも勇気を出して観てみてよかったな。40代の僕じゃなくて、星野くんの年代のひとが見ると、たまらないと思いますね。
星野:ぼくはまだ見れていないんですが、それこそ叫びたくなる感じですかね。
加藤:そうそう。ラストの展開も含めてね。きっと自分の人生も加速する感じがあると思う。20代、30代と。40代はさすがに加速しない。なるほどと構えていまった(笑)。あ、あと観ていて思ったんだけど、『佐々木、イン、マイマイン』ってタイトルがボーンと出てくるんだけど、これぼくの友人が作りそうだなと思いながら。エンドロール見たらぼくの友人がデザイン担当でした。
星野:ええ、すごい。そんなつながりもある映画だったんですね。
加藤:PUNIO で上映会とかしてみんなで観たらグッとくると思うよ。
星野:実はちょっと怖いんですよね。止まっちゃいそうで。僕たちはまだ青春の渦中にいるわけで。でも、観てみます。
加藤:なるほどね。でも、今抱えている迷いを払拭してくれるかもしれない。
星野:後ろ向きな感じで終わらないですか?
加藤:終わらないと思うね。「今を思い切り生きるために」という意味に近い。ただ、今まで過去に目を背けたものがあったのならば、効くかもね(笑)。過去のダメな自分も真っ直ぐに向き合った方がいいよというメッセージな気もするし、後ろめたさがあればあるほど引きずっていると思うからダメージ大きいかも。見た時の。そのダメージに耐えるべく、叫びたくなるというのがあるかも。リスナーのみんなの中でも、20代で、人生行き詰まったり、悩んでいるなら観た方がいいのかもしれない。あと、単純にカッコよかった。というわけで、映画の感想はここまでで、今週は星野回に。PUNIO の話をしてもらえれば。
PUNIO の原点となった展示
星野:ありがとうございます。いまは YouTube チャンネルを立ち上げるなど新しい挑戦をしています。あと、PUNIO の原点となった展示を再度しています。羽鳥弘興(はとりひろおき)という作家がおりまして、年は僕の3つ上かな。27歳。出会ったきっかけが、僕が北千住で PUNIO の前に住んでいた『アサヒ荘』というシェアハウス。そこに住んでいた彼にはじめて出会って、部屋に行って作品を見せてもらった時にすごく感動したという話です。
加藤:部屋中が作品で埋め尽くされて、青に囲まれたってエピソードね。あれいいよん。
星野:そうです。両腕いっぱいくらいの大きさの作品が4点くらい壁を埋め尽くしていて、床にもデッサンが散らばっていて。展示に至った経緯も、もともと決まっていた彼の展示の予定がキャンセルになって、タイミング良く PUNIO に決まりました。年末だったので200人近くも PUNIO に来てくださいました。
加藤:PUNIO のこけら落としということもあってね。すごいね。
星野:それがすごくうれしかったし、自分たちで何かやるということを最初に一緒にできた作家さんというのは、特別じゃないですか。さらに、作家さんとの相性も良かったというか。彼が拠点にしている海外に戻ったあとも、向こうの作家を紹介してくれたり。一緒に歩み、縁をつないでくれています。
加藤:京都の出張も一緒に行ってたよね。
星野:そうですね。ちなみに今回の展示は、1年ぶりの展示で、彼がブラジルなどへ武者修行として行った中で描いた作品を展示するというものでした。彼は「アーティストだから」とツンとせず、どんどん自分から話しかけにいくんですよ。彼のコミュニケーション方法のひとつとして、水彩を使って相手の似顔絵を描き続けるんですよ、すごくオープンマインドな作家さんです。もともと韓国のアートスクールに通っていたこともあり、言語も達者で、壁を越えて接してくれるような、いろんな場所に自らおもむいて、いろんなひととコミュニケーションをとって作品にしていく。それが珍しくて、おもしろいなと。
加藤:根アカだ! みんなが恐れている⋯。
星野:陽キャと言われる分類かもしれない(笑)。
加藤:でも一見そう見えても、どこかに海のような深層心理を持っているかもしれないね。絵を描くひとっていうのは。
星野:そうですね。なのでぜひ会いにきてほしいです。『波紋 Ring on the water』という展示です。その中でドビュッシーの『月の光』という曲があるんですが、それがテーマソングというか、BGM にかかっている印象にしています。彼が、湖の前に立って、いろんな色彩のついた筆で色を落としていく。それがどんどん広がっていく。頭上には月があって、月光がそれらを照らしているようなイメージです。
加藤:ほんと星野くんが惚れ込んだひとなんだね。
星野:だいぶですね。
加藤:ぜひ、3人で話す公開収録をしましょう。僕も興味あるし、話してみたい。活動の拠点が世界に羽ばたいているひとって、やっぱり話してみたい。いろんな話を聞けたらいいですね。
星野:ぜひよろしくお願いします。
加藤:『佐々木、イン、マイマイン』も、佐々木が画家志望で。部屋の中で絵に囲まれて埋もれて暮らしている感じや、男の子たちの不器用な感じが、ほんと PUNIO の世界観にそっくりなんだよ。ぜひ、改めて観てほしいな。ラジオネームさくらいさんも、そういう PUNIO と重ね合わせて、それで PUNIO とリンクさせたのかなと思いましたね。
星野:なるほど。ぜひ見てみます!
おわり
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