よむラジオ耕耕 #18 「加藤の人生を変えたあの作品」
初夏のマティス展へ
加藤:ラジオ耕耕、8月の1週目ですが。どうですか。
星野:そういえば、PUNIO のみんなで *マティス展へ行ってきました。。
なんかポップというか。グッズもすごくかわいかったです。マティス展へ行く様子や感想を等身大で話す Youtube の撮影もしました。
*2023年4月27日(木)~8月20日(日)まで、東京都美術館で開催
加藤:マティスってさ、なんか若い子の間で最近流行ってるの?
星野:マティスのデザイン性や版画・現代アートとも通じるアーティストとしての柔軟さに惹かれているひとが多いのかもしれませんね。また、マティスは前時代的な額縁に飾る絵画の要素のほかにも、テキスタイルなど実用的なデザイン性も兼ね備えているので、若い子にもとっつきやすいのかもしれませんね。「おしゃれ〜」みたいな。
加藤:晩年にかけてアヴァンギャルドになるもんね、挑戦的に。そういうのがいいのかな。
星野:そうですね。切り絵をしたり、染色をしたり。
加藤:あと《ダンス》とかね。あんなの若い子好きなんだろうね。
星野:色もポップですもんね。すごいTシャツが売れていました。
加藤が激震した夏の映画
星野:加藤さんはこの夏どうしてましたか?
加藤:みんながオンラインお便りで送ってくれた『夏の作品』を観漁っていました。わりと普段、映画や本を観ないのですが、この夏はエアコンをガンガンに効かせて作品を観ていましたね。みんなに紹介してもらった作品の中には、映画が多かったですね。感動した作品をいくつか紹介していこうと思います。
星野:気になる作品多かったです。
加藤:ひとつ、僕の中で革命が起こった作品があったんですよ!「なんで今まで観てなかったんだろう!」と。秋葉原に住んでいてなんだけど、アニメーションに苦手意識があって⋯。セリフの言い回しとかテンションとか、パンチラとか胸の誇張表現もそうだし、安直そうなストーリーをずっと毛嫌いしていて。でも、せっかくみんながオススメしてくれているしこれを機に見てみようと。それで観たのが『サマーウォーズ』。
星野:いや。いまさらですか(笑)。
加藤:『サマーウォーズ』ってさあ⋯、流行りに流行りまくったんでしょう? でもぼくはじめて観たのよ。2009年の細田守監督作品。無茶苦茶泣いちゃった。
星野:うわあ、新鮮だな。今時はじめて観たひとってあんまり出会わないから。
加藤:ネタバレ注意⋯でもないか。今さら。『サマーウォーズ』って、勝手にポスターのイメージで、開発で取り壊される田舎を村人たちで守る!みたいな⋯女の子がんばれ!青春!みたいな作品だと思っていたんだけれど、全然違うんだね。
星野:全然ちがいますね(笑)。むしろ真逆というか。
加藤:僕が全然知らないサイバーな世界と,僕がこうあるべきだと思っていた社会や家族の表現が見事に融合していた。古い考えと、新しい考えを合わせて、みんなで大切なものを守っていこうというストーリーもいいんだけど⋯とにかく描写がすごくよかった。もうね⋯全身が震えた。実写至上主義で生きてきたけれど『アニメ』でしかできないことってあるんだね。スケール感というか。物理的には不可能なカメラワークを平気でやってのけるよね、アニメは。後は、感情表現の豊かさもよかったな。手の動きひとつで表現する。現実のリアルよりリアルに感じられるシーンがたくさん挟まれていて。
星野:言われてみると確かに。
加藤:こんなのいまさら言うの恥ずかしいけれど「最高」でした。しかも『サマーウォーズ』ってそんなにオタっぽくない絵柄というか、誇張されていないなんでもないひとたちが描かれているというか。
星野:あんまデフォルメされていない感じというか。
加藤:そう。等身大。目とかそんなに大きく描かれているわけでもないし。設定こそアニメっぽいところはあったけれど、単純に観ていてのめり込んでしまいました。おもしろかった。細田監督の作品は今後時間をかけて全部観てみようかなと思っています。アニメというジャンルにはじめて触れました。
加藤:この感覚がまさに共感ポイントで、その感じが作品全体から見てとれた。海外のクリエイターとも共同で作られた作品だし。スタッフロール見ながらひとつのアニメにこんなたくさんのひとが関わっているんだなあと改めて感心しました。しかも声、神木隆之介くんなんだ⋯とか。最後まで気づかなかった。
星野:めちゃくちゃ純粋な気持ちで観てますね(笑)
加藤:まさに『革命』が起きましたね。ということもあって、アニメを立て続きに見たんですよ。
アニメ『河童のクゥと夏休み』
加藤:これは2007年の作品ですね。『サマーウォーズ』より2、3年前の作品。河童がね、出るんですよ。そして世の中を騒がす。これも、おもしろかったねえ。ほんとに、40年生きてきてアニメの世界の魅力を何ひとつ知らなかった自分に落胆した。これもアニメとしてはデフォルメの少ない、まぁありきたりな物語なんですよ。「河童なんかいないよ!」と思いながら観るんだけれど、いてもおかしくないなと思わせるし、実写の映画になってもおかしくない感じ。
河童の設定もしっかりこだわっていて。民俗学者の柳田國男が『遠野物語』で語ったような河童伝説にルーツを持っていたりするんだよね。沖縄の妖怪も出るしね。物語の中でちゃんとリアルな河童の伝説を回収しているし、マスコミの過剰な報道など社会問題をしっかり踏まえながらも、友情や家族を描く。描写も実はリアルなんだよね。それってちゃんと懐かしい、センチメンタルな気持ちになる瞬間もある。これは見たら『豊か』になるなって思ったね。映画ではあまり感じられない。
星野:豊かさが得られる作品っていいですね。
加藤:あと、この作品に関しては『水の表現』が、実写よりすごくリアルに感じられた。そうそうこの感じ。映像でも写真でも伝わらないけど肉眼では見れている。こういうのできるって時点で、「アニメってありだな」とはじめて思いました。みなさん教えてくださってありがとうございました。
星野:では、ほかにもリスナーさんが教えてくださった作品を紹介しようと思います。
映画『ぼくたちと駐在さんの700日戦争』
星野:市原隼人主演の映画ですね。僕、紹介されたのを受けてこれ、観てみたんですけれど、ちょうどよかったです。めっちゃおもしろいとか、つまんないとか、そういう感想が野暮になるくらい、お昼過ぎにだらだら観るのにちょうどよかったです。市原隼人もすごく若くて。主人公の設定も中高生でした。秘密基地で次のイタズラの作戦を考えるみたいな。BGM の感じで観るのもよし、銭湯なんかで流れていたらちょうどいいな。ちゃんと見てなくても、いつか思い出しちゃうような映画。その温度観、結構好きなので。
テレビドラマ『キッズ・ウォー〜ざけんなよ〜』
加藤:これやってたよね。
星野:僕が生まれ年の1999年に製作されたんですね。
加藤:ちなみに、夏にオススメの本もきてましたね。ちょっと読む時間が取れなかったんですが、よしもとばななの『NP』『海のふた』、やまだないと『恋に似ている』。買いはしたので、また読み終わったら感想を言えたらと思います。後は「ベタかもしれませんが、麦茶を飲んで図書館に行きたくなります」とコメントを添えて紹介してくれたのは、ジブリの『耳をすませば』。これ、僕まだ観てないですね。
星野:きっとまた感動しちゃいますね(笑)。
加藤:ねー。でも、マイアニメブームが来てるので、ぜひ観させていただきます。『カントリーロード』の曲で有名だよね。
映画『サマーフィルムにのって』
星野:2021年の映画ですね。これ劇場で見ました。渋谷のシネクイントで。僕、この映画を夏に観て、その年の秋口に PUNIO をはじめたんです。だから、思い出の2021年に観た夏の映画だったので、結構覚えていますね。
映画『ピンポン PINGPONG』2002年公開
加藤:これ、ちゃんと見たことなかったけれど、原作が松本大洋で脚本は宮藤官九郎なんだね。見てみようかな。
星野:そのほかにもオススメの映画はいっぱい来てます。北野武監督『ソナチネ』1993年公開。『学校の怪談3』『ウォーターボーイズ』『眉山』『リンダリンダリンダ』『月とキャベツ』。アニメだったら『サマータイムレンダー』、久石譲の『あの夏へ』を『サマカル(サマーカルチャー)』で挙げてくれているひともいますね。『千と千尋の神隠し』の曲なので聴いたことあるひとも多そうですね。
映画『サマータイムマシンブルース』
加藤:星野くんもおもしろいと言っていた映画だね。何人かオススメしてくれていました。2005年の映画ですね。これ観ましたよ。もともと京都を拠点に活動する劇団『ヨーロッパ企画』の台本を、『踊る大捜査線』とかでおなじみの本広克行監督が惚れ込んで映画化した、瑛太が初主演の作品です。
星野:ぼくはすごく好きでしたが、どうでしたか?
加藤:え〜⋯。みんなで耕していくという意味で正直にいうと僕は苦手でした(笑)。おもしろいんだけれど、『苦手』でしたね。せっかく紹介してもらった作品だし、できるだけポジティブに観ようと思ったのだけれど、なんだかツッコミどころが多かったなあ。僕も高校生の時、演劇部で脚本も書いていたんですけれど、その当時の僕でも想像できる表現の範疇に常にありましたね。当時の僕が作ったのかと⋯(笑)。というのは半分冗談で、でも劇団ノリというのが苦手な反面、どこか懐かしいなと思いました。演劇のそのノリが嫌で東京では映画の世界に進もうと思った身なので、ちょっとノリが苦手だったかな。でもエンタメとしては最高だし、瑛太ってやっぱいい役者だなあと思いながら観ました。
星野:所々のギャグとかウケ狙いが小っ恥ずかしかったんですかねえ。
加藤:そうかもね。ただ、もっと若い頃に観ていたら、こういう作品を作りたかった!って悔しがっていたのかもしれません。と思うと、おっさんになったなぁ⋯(しみじみ)
おしまい
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