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「ガセネタ」というバンド
ガセネタは、精神的にはパンクだ。しかし、本人たちはパンクを否定し、むしろ軽蔑していた。
ギターの浜野純は後年、「普通の音楽が好きなので」と、あっさり言い放っている。なのに、彼らの音楽(音霊)は、どう聴いてもパンクそのものだ。
もちろん、ただのパンクでは終わらない。
気ちがいじみたボーカル、
うねるベース、
タイトなドラム。
その混沌を切り裂くギター。
いや、切り裂くどころではない。
とにかく速い。
速く、速く。気づけば「速度」そのものになっている。
浜野のギターを聴いた者たちの感想を拾ってみる。
・「もの凄いギター」
・「凶暴なギター」
・「クスリ臭いギター」
・「空間をつんざくギター」
・「前衛にもポピュラーにも逃げないギター」
・「パンク以上のギター」
まるで中学生が書いたような言葉がならぶ。正確に言えば、彼らは浜野のギターに宿る圧倒的な情報量と、聴く者を覚醒させる何かに対し、何を言えばいいのか分からず、ただ「あっけ」にとられているのだ。
浜野の「速度」に「言葉」は、永遠に追いつけない。説明しようとするだけ無駄だ。大里俊晴も『ガセネタの荒野』で言ってたけど、言葉は遅すぎる。
評論のためのレトリックはいらない。ただ「すごい」。それだけで十分。
自称「最後のハードロックバンド」ガセネタ。
50年経っても、ガセネタは、いまだに聴く者をかく乱し続けている。
生きたくないから 突っ立っている
食べたくないから 引きずっている
眠れないから 咳き込んでいる
死にきれないから つばを吐く
交わらないから 腐っていく
遊ばないから 突き飛ばされる
やりきれないから 笑っている
続かないから 壊している
人間だらけの 星くず砂漠に
どこからも見えない 空中のおまえ