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【備忘録】2024年のお仕事まとめ
記録・整理の意味も含め、昨年1年間で携わった仕事を振り返ろう。本当は年末に書くべきだったけど、コミケ疲れでダウンしたので年始に書いたよ。
2024年の同人活動は、新刊1冊だけ。
でも、妥協なしの渾身の1冊になった。詳細は、下記リンクでどうぞ。
「さらば愛しき90年代サブカルよ―モンド/悪趣味系/面白主義の意義を再考する」『映画秘宝』2024年3月復刊号(1月19日発売)
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商業デビュー原稿。
2023年11月3日(金・祝)に開催された「おもしろ同人バザール」に出店していたところ、現編集長から声をかけられた。
それから1か月間、必死に原稿を書き上げた。今では特に何も感じないけれど、当時はミニコミ誌をのぞけばロクに文章を書いた経験もなく、不安と緊張で一杯だった気がする(今となっては遠~い昔のことのように感じる)。
記事の内容は要約するとこんな感じ。
1990年代は、「モンド」「悪趣味」「面白主義」といった独特なサブカルチャーが盛り上がった時代である。
1995年には、アメリカのカルト雑誌『Re/Search』の日本的解釈として『映画秘宝』が誕生した。この雑誌は、一般的な映画雑誌とは一線を画し、Z級映画や奇妙な音楽を「モンド的」な視点で楽しむ反骨的姿勢を持っていた。
「モンド」とは、一見価値のないものを逆に愛でる文化を指す。
たとえば、低予算のくだらない映画や、奇妙で素っ頓狂なコンテンツを「つまらない」ではなく「面白い」として楽しむ視点が「モンド」である。このような「悪趣味」文化は「面白主義」へと通じるもので、それは物事を「良い」「悪い」で判断せず、「面白いかどうか」で評価する考え方である。
が、この「なんでもかんでも面白がる」という態度は、現代社会において受け入れられにくくなっている。90年代サブカルが生み出した「アイロニカルな嗤い」は、成熟した価値観の中でその役割を終えつつある。
そんな時代に「サブカル」に翻弄される君たちはどう生きるのか?
ここでは「なんでも面白がる」ムーブの起源や広がり、その限界と可能性について、できるだけ偏らずに考察している。自省するつもりは更々ないけれど、ぼく自身、何でも面白がる性分だから『映画秘宝』の復刊にあわせて、その源泉である面白イズムを「自分の言葉で」問い直す必要があったのだ。
脱稿直後、ダウンタウンの松本人志が、いわゆる性加害問題で世間から厳しい目を向けられたのも、象徴的な出来事だったと思う。というのも、単に「コンプライアンスの問題」というだけじゃなくて、松本のように人をイジって笑いを取る「人権侵害スタイル」は、未来を生きる若者にとって、古臭くなっているどころか、場合によって有害ですらあると感じるからだ。
はっきりとした答えは出せないけど、負の感情のほうが注目を集めやすい昨今、「本当に面白いもの」は何かを突き詰めると、人間の哀歓をありのままに見つめ、共感を生み出すことが本質なんじゃないか、と思ったりもする。
「素朴なタッチと色っぽさ! 謎のマンガ家・室井至誠の情報求む!」『映画秘宝』2024年4月号(2月21日発売)
室井至誠という謎の漫画家について情報を求めたコラム。現在、彼の作品が載った雑誌を集めていて、インディーズで作品集を出そうと計画中。ちなみにコラム経由で情報は一切寄せられず、雑誌の隅っこに書く行為は、虚空に叫ぶようなもので、反響も何も分からず、空しく思ったのをおぼえている。
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「Hentaiの起源! 幻のエ〇アニメ『すヾみ舟』を追え!」『映画秘宝』 2024年5月号(3月21日発売)
ほぼ1年前の記事だけど、まだ続編を構想中。新しい情報をつかんでおり、まだまだ取材したいんだけど、編集から音信が途絶えており執筆中断中。
国産工口アニメ第1号『すヾみ舟』(1932) の記事を秘宝最新号に書きました。謎多き作家が自宅地下の工房で三年の歳月をかけて制作した幻の作品です。本記事では制作者のミステリアスな足跡と、数奇な運命を辿ったフィルムの行方に迫ります。日本版ヘンリー・ダーガーはここに。https://t.co/d47T9yTZFC pic.twitter.com/I3qM6BU6Uw
— 虫塚虫蔵@MGM2-44 1/26 板橋区立グリーンホール (@pareorogas) March 24, 2024
英語に翻訳した記事はnoteでも公開中。ちなみに俺はヘンタイぢゃない。
「この漫画のこのキャラがヤバい/虫塚虫蔵のTOP3」『実話BUNKA超タブー』2024年5月号(4月2日発売)
2~3日で書いたと思う。
『ねこぢる草』CD&アナログ再発盤ライナーノーツ(6月21日発売)
音楽理論なんて全然知らないのに、なぜか依頼が来た。
テーマ的にギリギリいけそうだったから引き受けたけど、2週間ちょっとで仕上げるのは本当にキツかった。正直、かなり消耗した原稿。
明日21日発売『ねこぢる草』オリジナル・サウンドトラックに「夢の記憶・記憶の夢」と題したライナーノーツを寄稿してます。主に制作手法と世界観について書きました。ポップでキッチュ、あるいは不穏でユーモラス。そんな世界観と一体化した「国産ダーク・アンビエントの傑作」がついに再発されます。 https://t.co/7KD8ymSnRt pic.twitter.com/Lfq875XM8Y
— 虫塚虫蔵@MGM2-44 1/26 板橋区立グリーンホール (@pareorogas) June 20, 2024
「4chan化する世界―反社会的ネットワーク」『映画秘宝』2024年9月号/11月号(7月21日/9月21日発売)
これも、面白主義の「罪」に焦点を当てた話。
話が長すぎるので前後編に分けたけど、全部で2万字超にもなった。
先月21日発売『映画秘宝』9月号に「4chan化する世界―反社会的ネットワーク~Chanカルチャーとは何か!?~」という記事を寄稿しています。ミームが生まれる/b/ボードの構造や、前身掲示板の二次エロ禁止令が議事堂襲撃につながった背景について書いてます。 pic.twitter.com/F6XHnl7ahv
— 虫塚虫蔵@MGM2-44 1/26 板橋区立グリーンホール (@pareorogas) August 1, 2024
本稿では、日本発の匿名掲示板「2ちゃんねる」と「ふたば☆ちゃんねる」から派生した匿名BBS文化(CHANカルチャー)が海外に広がった結果、何が起きたのかを追った。もともと「4chan」は日本アニメやジョークを楽しむオタクたちの遊び場だったが、反社会的な活動の拠点になり、いつしか極右勢力やアメリカの大統領選にまで影響を与える兵器に発展した。どうしてこんなことになってしまったのか。その経緯をざっくりと調べたのが本稿だ。
そんな感じの紹介をネットに書いたら、案の定、インターネットぶつかりおじさんが「それ妄想だろ」と突っかかってきた。でもまあ、そういう人たち(冷笑系だのネトウヨだの暇アノンだの)が生まれる構造そのものを論じた内容でもあるから、そんな反応は織り込み済み。敵対する気にもならない。
巨大匿名掲示板群「4chan」の変貌に迫る連載「4chan化する世界」完結編。『映画秘宝』11月号に寄稿しました。掲示板の「ネタ化」「嗤い」が、ゲーム的な過激思想と陰謀論の巣窟へと変貌する過程を解明する試み。アノニマスなどネットを揺るがすムーブメントと、背後に潜む現代ネット文化の闇に触れる。 https://t.co/q9glAaFfDa pic.twitter.com/0i2DyZjDlP
— 虫塚虫蔵@MGM2-44 1/26 板橋区立グリーンホール (@pareorogas) September 21, 2024
「謎のバンド、Panchiko復活の軌跡」『映画秘宝』2024年12月号(10月21日発売)
自分が最も好きなロストウェイブ「Panchiko」について取り上げた記事。
21日発売の雑誌『映画秘宝』12月号に、謎のバンド「#Panchiko」(@Panchiko4)の記事を書いております。たぶん「Panchiko」が日本の商業メディアで取り上げられるのは、これが初めてじゃないかなと思う。https://t.co/yvTKigDpVJ https://t.co/VDNlWHBTr2 pic.twitter.com/6dHzfhy21I
— 虫塚虫蔵@MGM2-44 1/26 板橋区立グリーンホール (@pareorogas) October 19, 2024
Wikipediaの記事がなかったので、とりあえず備忘録がてら自分が書いた。
私事ですが、2024年の春先に引っ越しました。そのゴタゴタが金銭的にも精神的にも一番大変だった。あらためて2024年は大変な年だったなあと感慨もひとしお。趣味やら道楽に、膨大な時間がさけるのは幸せなことですわい。