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武器としての科学リテラシー

「○○リテラシー」って、最近よく耳にします。

それがあるとかないとか他人に云々されると、上から目線で言われてる感もあってちょっといやらしいのですが、今そこは目をつむってもらって(笑)。

いわゆる科学リテラシーとはどんなものか、それを身につけることにどういう意味があるのかを、特に疑似科学との関連で考えてみたいのです。

科学リテラシーをひとことで表現するなら、科学的な知識を理解し科学的な方法を使って情報を評価する能力、とでもなるでしょうか。

現代社会に生きる上では重要なスキルと言えます。

科学リテラシーは、あなたをデマや誤った情報から守り、信頼性のある情報を選び判断する力を養ってくれるものです。

また科学リテラシーには、批判的思考や問題解決能力を育てるという効果も期待できます。

一方、占い、ホメオパシー、超能力、UFO、陰謀論など、疑似科学にカテゴライズされるものには、事象の再現性や公共性が棚上げされ、背後にある理論の根本は追究されずブラックボックスに、という共通の特徴があります。

例えば疑似科学的な治療法やサプリなどは、その根拠の有無とは無関係に、そこでうたわれる効果・効用に多くの人々が魅了され、高額で取引が行われる現実があります。

疑似科学に対抗する手段としての、科学リテラシーの役割についてみていきましょう。


科学思考と知識の信頼性

今日知られている科学的な方法論や推論の原則は、この宇宙・自然がどんな姿をしているのか、そこにはどんな法則性が貫いているのかを明らかにするために生まれ、使われてきました。

科学的な方法では、観察結果に基づいて仮説を立て、その仮説を実験や観察によって検証し、結果を分析します。

このプロセスは反復的に行われ、より高精度な知識が集積されてきました。

ここで批判的思考は本質的な重要性を持ちます。

たとえ相手がどんな「権威」のある有名人であろうと、研究の結果や提示する仮説に疑問を持つことが重要です。

これけっこう、言うは易く行うは‥ですがね。

また自分の唱える説:自説についても、どんなに自分では正しさに自信があっても、世間的にそれが正しいと認められるためには、他の科学者による検証や批判に耐える必要があります。

これらの科学的な方法論によって、人類知の実証的な発展が可能となります。

主観に頼らず根拠に基づいた判断を行う科学思考は、信頼性の高い結果を得るためだけでなく、誤った主張や迷信に無用に誘導されないためにも重要です。

科学的な方法論と推論の原則を理解し、科学的思考を養うことは、より信頼性の高い知識へのアクセスを可能にします。

疑似科学:その魅力と心理的要因

不確かな将来や不安定な生活環境にある人にとって、即効性のある希望や癒しを提供するように見えるサプリや代替医療、占いなどは、明瞭な回答と安心感を与えてくれるもののように見えるでしょう。

それら疑似科学は、言明が得てして直感的であり、かつ科学知識や厳密な論証を要求しません。

専門的な知識や方法論に疎い人にとっては、この疑似科学の「分かりやすさ」はとても魅力的に映るでしょう。

また、その内容が個人的な信念や価値観と合致している場合、個人のニーズや信じたいことに対して疑似科学側が都合の良い答えや理論を提供することとなります。

人は信じたいものを信じる生き物。

ここに疑似科学がすぽっとハマるのです。

集団に属することによる一体感、共感してもらえる安心感、疎外感からの解放といった心理的作用も、疑似科学の広まりに関与しています。

同じ信念や思考を共有するグループに属することで、安心感や自己肯定感が得られます。

これらの心理的要因が組み合わさると、疑似科学は広まりやすい。

こんな時こそ、科学リテラシーに基づく情報の評価能力の向上が求められます。

情報評価の重要性

科学リテラシーを向上って簡単に言うけど、一体どうしたらよいのでしょう?

信頼性の高い科学ニュースや専門記事に日頃から接し、最新の科学知識になじんでおく、そのように心がけることは第一歩となるでしょう。

正直言って何が信頼性が高いかの判断は難しいところですが、日経サイエンスやニュートンといった科学雑誌は歴史があり、最新の研究情報を得るという点では定評があります(批判的見地が不要という訳ではもちろんありません)。

各地の科学館や天文台などが開催しているオンライン・オフラインの講演会・イベント・ワークショップを利用するのもよい考えです。

科学に関するオンライン講習会や学習プラットフォームを活用することで、自分のペースで科学的な知識を深めることができます。

SNSを通じた情報収集は、手軽な反面その内容は玉石混交。

デマの温床となっている事実を心にとめておく必要がありそうです。

ノーベル賞受賞者などの著名人の言明であれば、その限りにおいて信頼できそうですが、彼らも人の子。

個人の見解として述べられているのであれば、あくまでそういうものとして受け止めるべきでしょう。

FacebookやLinkedInなどを通じた科学コミュニティに参加し、専門家だけでなく科学に興味を持つ人々と交流・ディスカッションすることで、新たな視点や知識を得ることが期待できます。

正否はともかく、自分には思いもよらなかった新たな視座に触れることは楽しいものです。

ある程度専門性があれば、その分野での学術論文を読むことももちろんアリです。

一部は無料でネット上に置かれていますが、もちろん論文だからと言って鵜呑みは厳禁ですよ。

これらの方法や資源を活用することで、情報を評価する力を養うことができます。

そして、認知のバイアスや情報の偏りについての見極めは、科学リテラシーの主要な部分です。

バイアスについては例えばブログ「マインドコントロールと確証バイアス
https://note.com/parasitefermion/n/ne6467766ed14)。

情報を提供する側の意図はなんなのか?その背景は? ⇒ クリティカルシンキングが重要です(参考:「生き抜く上でクリティカルシンキングが不可欠な理由」
https://note.com/parasitefermion/n/nd1a9344ec1bd))。

科学的な研究結果やデータが示されているか、専門家の見解が添えられているかを調べることで、情報の信頼性を確認することができます。

また、情報の網羅性や一貫性を確認することも有効です。

情報が複数の信頼性のある情報源で一致しているか、矛盾がないかを確認することも情報の信頼性を高めることに寄与します。

科学教育の役割

学校教育では、現状でも実験や観察を通じた体験的な学習が取り入れられています。

これらは生徒・学生たちが科学的な手法や原理を直感的に理解することの手助けになりますが、そのためにも教師の専門性は重要です。

科学教育を担う教師は率先して、最新の科学知識を習得し教育手法の研究に取り組む必要があるのではないでしょうか。

私が高校生の時受けた「化学実験」の授業では、我々生徒は実験室に集められはしましたが、実際に実験を行うのではなく、教師が演壇で解説しながら実験をするのを延々と遠目で見ているだけでした。

短時間で多くの実験課題を詰め込みたい、教師側のやむにやまれぬ事情はあるでしょう。

しかし体験を通じて学ぶ本筋から言えば、やはり生徒自身が手をくだすに越したことはありません。

第一、広い実験室で遠い演壇上の教師が手元でおこなっている実験を90分(この学校の授業時間)注視するには、集中力がなかなか持ちません。

学校教育という点で付け加えるなら、科学教育の魅力を高めるために現実世界の応用例や、興味を引くアップデートな話題を取り入れることも効果的です。

月食や流星群観察など、都度起こる天文ショーはトピックとして使えそう。

学校をすでに卒業した社会人向けに、科学的なテーマで啓蒙活動を行う学芸員や科学コミュニケーションの役割も重要です。

最新の情報を提供する、興味を喚起する、にとどまらず科学思考のエッセンス、科学の基本的な原則や方法論という武器としての素養を提供してくれます。

これも、世に蔓延する疑似科学に対抗する力を養うのに有効でしょう。

またこういった活動を通じ対話の機会が増えることで、社会に対する科学会の透明性が高まり、ひいては科学への信頼度を高めることができるでしょう。

インターネットとSNSが発達した今、より正確な科学情報へのアクセスを容易にすることは、疑似科学に対する有効な対抗手段と言えます。

科学コミュニケータの役割はこの意味でも重要です。

まとめ

適切な科学的な情報を理解し、評価する能力を身につけることで、疑似科学の誤った主張や根拠のない信念を見抜くことができます。

科学リテラシーの向上には、科学的な方法論や推論の原則、データの解釈、情報の評価方法などの基礎知識の習得が重要です。

また、信頼できる情報源の選択や情報のクリティカルな分析能力の向上も求められます。

科学リテラシーの向上は、個人の自己防衛だけでなく、社会全体の意思決定にも寄与します。

誤情報の識別能力と科学知識を身につけることで、より信頼性の高い情報の下、より妥当な判断を下すことができるようになるでしょう。

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