「直観」たより過ぎに注意
LinkedinはSNSの一種。
日本での認知度は、徐々に上がってきているとは言えTwitterやFacebookには未だ遠く及ばないかな。
このLinkedinである人が、「直観」の重要性を力説。
曰く「私たちが言葉を使ってお互いを理解し合う唯一の方法は、全員が直感的な心のレベルから話すときです。それまでは、エゴが私たちの思考に影響を与え、反応を調整しているため、議論するために話していることになります。焦点は言葉にあり、思考やイメージにあるわけではないので、やるべきことをやり、言いたいことを言い、ドラマを楽しんでください。しかし、理解されることを期待しないでください。(原文英語、AI和訳)」
理解し合うのに直観が邪魔?
言わんとすることはなんとなーくわかる気もする。
けどもし、例えばファーストインプレッションだけでこの人はこうだと決めつけて会話を始め、それが大外れだったとき、二人は理解し合えるのか?
理解し合えるものもできなくなってしまうのではないか?
ファーストインプレッションってまさに直観ですよね?
ちょっと気になったので私はこの人にコメントを返しました。
「直感に過度に頼ることは危険です。
経験に基づいた様々な認知バイアスや誤認識が発生する可能性があります。
正しい推論のためには論理的思考が不可欠です。
しかし、直感はインスピレーションを得るためには有用です」と。
すると先方は
「私は直感的な心について話しています。これは自然な心を超えて普遍的なものと融合する心の状態です。これはよりヨーガの用語であり、パーランスです。人間が直感として話すものは基本的に彼らの欲望や願望が潜在意識によって直感として再解釈されているに過ぎません。この意味で「直感」を指しているのであれば、あなたの言う通りです。
私は毎日、すべての情報が揃っていない中で短時間で意思決定を行っています。私の直感が働き、スキル、知識、過去の経験に基づいて迅速な評価を行うことができます。(同上)」
と返してきました。
なるほどー、ヨガか。
二種類ある、は本当?
もしヨガで達する新境地なるものがホンモノの直観で、それ以外の直観がニセモノだというのが本当だとしても、そのホンモノとやらを得るためには特別な訓練が必要ということか?
ますます危機感を覚え、私はこう返しました。
「欲望が潜在化し再解釈された直観と普遍的なものと融合された直観とを、ひょっとしたら一般の人は区別できないかも知れません。
だとしたら私はやはり警鐘を鳴らしたい。
進化的に我々人類は、生存のための様々な瞬発的判断力を付けてきた。
草むらに潜む害獣を素早く認識するため顔を認識する能力が備わった。
今日シミュラクラ現象として知られるその能力は、我々に壁の任意の模様にも顔を認識させる。
直観は素早い、そこがまさにポイント。
同時にそれは、時として間違うものだ。
危険回避のために求められる能力だが、素早さを取る代わりに誤認識を伴う。
これらはトレードオフの関係にある。
夢で見た人が翌日亡くなったら、虫の知らせと思い夢の不思議な力を信じてしまうかどうか。
その確率が実はそれほど低くないことが論理思考で分かれば、普通の出来事だと思える。
そのような論理思考のフィルタがない人は、サイコロの1の目が5回くらい連続で出てもこれからいいことが(あるいは悪いことが)起こると信じ込むかもしれない。
そういう人が陰謀論にハマり、治らないがん治療にダマされ、サイババの手品にダマされ、高額商材を買わされる。
科学研究において、未解決問題を解くモデル構築にはまずひらめきが必要だが、それは主として直観によるものであり、帰納的推論と呼ばれる。
これで仮説を立てるが、このままでは仮説であり真偽を確かめるために実証研究をしなければならない。
必要なら実験や観測を伴う、時間をかけて。
この過程が演繹思考である。
そうして99%の仮説が棄却され、わずかな仮説が正しさを認められ定説となるが、これとてその適用限界を探る研究がその後続くことになる。
こうして人類が慎重に積み上げてきたのが現代のわれわれが手にしている科学的知識であり、もしそれが直感だけで積み重なっているのであれば、これほど実用レベルに達するほどに応用技術が進むはずがない。
知識の持つパワーは個人も同じ。
もし直感だけで生きてきたという人がいても、どこかで本人も気づかぬうちに論理思考をしているはず。」
論理思考は養うもの
これに対する先方からの返事はありませんでした。
もちろんこんな簡単なやりとりで、人というものが信念を翻すものではないでしょうが。
少なくとも、簡単に早さだけを求めて割り切れるような、そんな単純な問題ではないと気づいてくれたのではないかな、と。
余談だが、大人になって三角形の面積を求めることもサイン関数を使うこともないから数学教育は無用だという人がいます。
実際には論理思考を養うため数学教育はなされているのです。
直観力と異なり、それは先天的に十分得られているものではないから。
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(つむぎ書房、2023年)
心の源は脳にあらずとする心身二元論と唯物論を統合する新説、「PF理論」のやさしい解説。テレパシーやミクロ念力などの超心理現象も物理学の範疇に。実証性を重視し、科学思考とは何か、その重要性をトコトン追求しつつ超心理現象に挑む、未だかつてない試み。「波動を整えれば病気は治る。」こんな「量子力学」に納得しちゃう人、この本を読んだ方が良いかも!?あなたの時間・お金・命を奪うエセ科学の魔の手から自分を救うクリティカルシンキング七ヶ条。本書により科学力も鍛えられちゃう。(概要より)
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