ポテンシャル指向が未来を拓く
2013年から2014年にかけて、NHKでその名もズバリ「超常現象」というタイトルの番組が、地上波およびBSで放送されました。
阿部寛さんが主演で、薄暗い研究室風の部屋にたたずむ怪しい雰囲気の、白衣着たいかにもな風情の研究者が話を回すやつ。
ご覧になった方も多いでしょう。
この一連の番組の制作統括・大里智之は著書の中で、超常現象を研究することの意義として錬金術や占星術を例に挙げ、
とします。
これは非常に重要な視点。
現代に生きる錬金術
錬金術は遠く古代エジプトやギリシャに端を発し、近代まで連綿と引き継がれた化学研究。
化学研究という表現に違和感を感じるかも知れません。
現代的解釈を当てはめれば確かにちょっとね、と。
でもまあ、使われている実験手法は煮たり焼いたり何かに溶かしたり、と化学実験そのまま。
当時はこれ以外の術もなかったでしょうし。
それで卑金属やその他さまざまな物質、果ては言霊や念といったスピリチュアルなものから金をつくり出そうとしていた。
原子や原子核の構造・知識を持ち合わせる現代人には、それは途方もない戯言とすぐに察しが付くのですが、そこは時代背景ですね。
当時の人は可能性を信じ、化学反応で金を作ろうとまじめに取り組んでいました。
結果として、当然ながら金をつくり出すことには失敗。
しかしこの壮大なチャレンジの過程で蓄積された経験が、化学実験の方法論の飛躍的発展を導き、そして多くの化学物質が発見され、化学という研究分野の端緒となって今日の発展の礎となったのはご存じのとおり。
占星術だってそう。
「占い?科学的じゃないよ」と切り捨てるのは簡単、知ってる。
「それは統計だ」論ふくめ「科学的な」理由付けを行う人はいろいろいます。
が断言します、実際その言説に科学的根拠はありません。
その上で歴史の事実を見ると、あまたの占星術師たちによる継続的な天体観測の結果の積み重ねが、今日的意味での天文学の基礎を築いたというのもまた事実。
ポテンシャル指向で科学思考が養われる
視点が「あり得ない」に釘付けになっている限り(私はこれを不可能指向と呼んでいます)、その先に思考が及ぶ可能性が永遠に断たれます。
本当は大きな可能性が秘められていたかもしれないのに。
そうでなく背後に何かあるかも知れない(ポテンシャル指向)と思っていると、例え当初の目的はかなわなくとも何らかの知見が得られるものです(※)。
これはひょっとしたら人生全体に言えることかもしれないけどね。
もちろんこれは、なんでも信じていいよということを意味していません。
むしろ逆です。
信じ込むのではなく、背景に何があるのか、新奇な物理現象の現れなのか人間の心理なのか、それともほかの要因なのか、予断をもつことなく科学的思考・手続きに従って(ココ重要!)突き詰めること。
それが重要なことだよというのが、汲むべき教訓なのではないでしょうか。
(※)この意味で言うと、基礎研究よりも実学重視の極端な予算配分となっている近年の日本の現状は、学問の発展という意味からは大変危ういと言わなければならない。
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