一人の顧客を起点にしたマーケティング戦略
この記事は「たった一人の分析から事業は成長する 実践 顧客起点マーケティング」(MarkeZine BOOKS) (Japanese) Tankobon Softcover – April 8, 2019 が元になっています。
まずは私見ばかりですが、サマリです。
デジタル技術がどんどん加速的に発展して複雑化している今、マーケットはリアルタイムで変わります。その時代だからこそ変わる技術ではなく、顧客にスポットを当てたN=1の顧客を徹底的に分析する、N1分析による顧客起点マーケティングをするべきです。
有名な顧客ピラミッドとブランド選考度を組み合わせることで顧客を分類し、キーになる顧客セグメントの顧客を1人1人をヒアリングすることによって統計的アプローチでは得られない心を動かすアイデアを生み出します。
それを使った仮説検証をすることこそが現代のマーケティングとなります。
デジタル時代の顧客分析の重要性
クラウドの発展
クラウドの発展により、プロダクトアイデアがあれば、圧倒的安価で開発・運営・データ蓄積・データ活用ができるようになりました。
これによりプロダクトアイデアに共感する顧客へアプローチの最適化がほぼ自動的にできるようになりました。
アプリが大量に開発され、スマホの大量生産に繋がり、全世界的にスマホが浸透しました。
今では時間・場所を選ばずあらゆる情報・メディアにアクセスできるようになりました。
この流れは物理的・時間的・心理的制約を取り払う形で広がっていきます。
様々な情報が入り乱れ、個人の趣味趣向も細分化して把握が難しくなりました。変化に合わせ戦略を変え続ける柔軟性が求められます。
そこで出てくるのがN1マーケティングです。
マーケティングとブランディングの両立
N1とはいえ、誰でも良いわけではありません。
未認知顧客・認知/未購買顧客・離反顧客・一般顧客・ロイヤル顧客のセグメントで顧客を分類します。
顧客分類では最終購買日・購入頻度・購買金額・で見るRFMも有名ですが、行動データは見ることはできますが、どんな心理で購入に至ったかの要素が欠けます。行動データのみによるアプローチは最適化し自動化することが容易になった今、これだけでは足りません。
ここで出てくるのがブランド選考度です。
よくブランディングとマーケティングでの視点のスパンの違いによる衝突がありますが、視点は両方必要になります。
行動データと心理データを各顧客セグメントで比較しギャップを見つけます。同じものを見ているのに、ロイヤル顧客では心理も行動もうまくハマっていて、一般顧客や未購買顧客では心理データに反して購買が進まないなどもあります。
顧客セグメントを行動・心理に細分化して、投資費用・利益を見ていくと力をかけるべき場所が見えてきます。ここからN1マーケティングがされるので、例をみて整理をしたいと思います。
スマートニュースの事例
顧客セグメントを分けて分析したところ、「自分が知らなかった情報を教えてくれる」、「情報が多い」、「操作がしやすい」が高評価であることがわかりました。そして競合分析をしたところ、スマートニュースからロイヤル・一般顧客の離反がなく、競合からの離反がスマートニュースのロイヤルになっていました。N1分析から30以上のアイデア候補を作り、それを19種類に絞って定量調査が開始されました。このうち1つのアイデアが英語ニュースチャンネルでした。筆者の奥さんへのN1インタビューで娘の英語の勉強のためにスマートニュースの英語版を使っており、便利さを評価していました。N1分析を進める中で英語版の独自性を評価されていったため、パブリッシャーに許諾を得ることになりました。
上位コンセプトへの受容度を元に認知リーチを定量化すると、高ボリュームの新規獲得が見込めたため、短期決戦でテレビCMを選択します。
一番反応が良かったのはワールドニュースでした。長期的にはワールドニュースを読まなくなる顧客も出てきたのですが、自分にあったチャンネルを登録する形で継続利用がされていきました。
必要だったのは初使用喚起につながる独自性と便益の組み合わせたプロダクトアイデアだったというわけです。
N1起点のマーケティングとは?
改めて書くのであれば、具体的な顧客一人ひとりに焦点を当て、いつ・どのようなきっかけで・ブランドを知ったのか/買ったのか/ロイヤル化したのかを明らかにすることです。
心理データと行動データを比較することによって問題を浮き彫りにしていく中で、どこに一番注力しなくてはならないかを明確にします。
もしロイヤル顧客で得られたきっかけがそれ以外の層で出てこなければチャンスとなります。
選択肢が絞られたら分類したターゲットとなるセグメントに対してアイデアがプラスに働くのか検証のタイミングに入ります。小さく始め、再現性が担保されたタイミングで一気に踏むマーケティングとなります。
まとめ
直接データの書籍ではないのですが、データを扱う立場としてデータの限界を突きつけられるような書籍で、個人的には刺激をもらいました。
一方で今取れているデータが全てと思わず、仮説をたてデータを取りに行き、既存データと照らし合わせることは多いのですが、それの延長線上のようなマーケティング戦略な印象を受けました。
特に量的アプローチでは心は動かないというのがとても印象的でした。
最後まで読んでいただきありがとうございました!
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?