営業生産性を高めるデータ活用
この記事は営業生産性を高める! 「データ分析」の技術 (DOBOOKS) (Japanese) Tankobon Softcover – September 1, 2017が元になっています。
営業は定性データも多いですが、取れるデータも多くなってきた中、どのように活用したら良いでしょうか?
データが汚い、数が少ない、でも成功する企業はあります。成功しない企業と成功する企業では何が違うのでしょうか?
ざっくりですが、私見なサマリー
良い分析は良い分解から始まります。顧客の体験するステージを分解して、指標を分類してみましょう。指標には大きく3種類あります。①成果指標、②ストック指標、③フロー指標です。これを3つの軸から分析することができます。①営業・販促活動の軸、②顧客行動の軸、③企業属性の軸です。
分解ができたら、データを収集・変換・活用していきます。
収集から変換した段階で(a)多様な軸の指標、(b)指標と要因の関係性、(c)指標の予測値に集約されます。しかし変換だけではデータは機能しません。データにより動かすためには数字から直接わかる事実は何かを突き止め、数字の裏側を解釈し、そのまま対策をしない場合の事象を語り、ではどんな対策をすべきなのかを明示します。そんな実行部隊がスムーズに動ける立ち回りこそがデータ分析に必要な素養です。
良い分析は良い分解から
①成果分解
売上=顧客数×客単価に代表される、成果の構成要素を分解していきます。
この分解は部署やタイミングによりやり方が変わります。市場シェアが必要な時期ならばシェアにスポットを当てたものにすべきですし、成熟市場では売上よりも利益を求めるべきかもしれません。定期的に見直しが必要ですが、分解することで課題をシンプルにすることができます。
②プロセス分解
潜在顧客から成約に至るまでの、顧客ステータスを分解していきます。もちろん成約後もロイヤル化などありますが、別軸になるので本記事では触れません。
プロセス分解には5段階あります。
①過去の個々の案件ごとの受注プロセスを洗い出します。
②似た受注プロセスの過去の案件をグループ化します。
③グループごとにステータスの候補を洗い出します。
④グループごとにステータス候補を取捨選択します。
⑤グループを可能な限り統合します。
2つの分解により課題の見通しがよくなります。
指標には大きく3つの指標がある
①成果指標
成果分解を元に設計されるものです。一般にKGIやKPIに置かれる売上や利益などです。
②ストック指標
成果指標を作るリソースとなるのがストック指標です。潜在顧客から訪問件数や提案件数がいくつあるのか、そこから成約に至った件数はいくつあるのかです。ここの数値があることにより、改善前に予測を立てることができます。
③フロー指標
潜在から訪問に至ったのは何%か、提案から成約に至ったのは何%かなど、一般にウェブマーケでCVRと表現されるものです。
ある時点での顧客ステータスから次のステータスにどれくらい動いたのか流れを表した指標になります。フロー指標の改善がストック指標を作り、ストック指標が改善することにより、成果指標が作られます。
指標を解釈する上での3つの要因
3種類の指標を解釈するために3つのデータがあります。
①営業・販売促進活動
サービスのパンフレットを配った・配っていない、訪問回数、ダイレクトマーケティングの接触数など、自社から顧客に行った接触をまとめあ上げます。
②顧客行動
サイトからの資料ダウンロードやイベントへの参加者などこちらが自社で用意したコンテンツに対する顧客の反応をまとめます。インバウンドセールス/マーケティングで成果として数えられるものや訪問・DMからのコンバージョンを測ります。
③企業属性
資本金や従業員人数、設立年など自社からの顧客接触や顧客行動を裏付ける顧客属性まとめるものになります。ありきたりな指標ですが、体質により適切なアプローチが異なるのでグループ分けするときに使えます。
上記の3つの要因によりなぜその指標が出てきたのかを説明することができるようになります。
データだけでは人は動かない、動かすためには
データと現場の障壁は何か?
さらに部署ごとに標準偏差を出すことにより、部署内での担当者としての属人性の分析を出すことができます。また平均値や指標の回帰をすることにより、予測値を出すことができます。この3つの指標と3つの要因を繋げるところまでは、一般論が通用するサイエンスの領域です。
ですがデータ分析をする立場なら、データは出たが、誰も実行しないという課題にぶつかったことがあるのではないでしょうか?
壁が4つあります。
定義がわかりにくい、わかっているのは何?、総論何?、現場での納得感です。
前半の2つは定義をまとめてダッシュボードにすれば伝わります。後半の2つが問題です。ここは会社により解決法が違います。
動かす伝え方
伝えるべきことが5つあります。
①事実 数字から直接わかることは?
ここは3つの指標と3つの要因が入ります。事実は事実として伝えることで目線を合わせることができます。あくまで事実であり、大体よくない時ほど現場からの反発があるため、背景と切り分けて事実を先に伝える必要があります。
②解釈 数字の裏側で何が起こっているか?
ここが現場と合意をとる上で大事な部分になります。現場の定性情報は感覚的でデータ化されていないため、集めたデータには表れません。しかしここを疎かにすると現場の支持を得ることはできません。分析をしても実行するのは現場です。現場の支持がないものはどんなに正しくても、日の目を見ることはありません。ヒアリングの繰り返しにより今の現状を現場とデータの観点から明らかにしていきます。
③延長 対策を打たないと何が起こるか?
目線があったところで、データとして次に何が起こるかの仮説が立てられるようになります。これにより今アプローチしている顧客へこれからも時間をかけるべきか、またもっとかけるべきかを判断することができます。
ここで課題と継続で問題ないものに分けられます。
④対策 どのような対策を打つべきか?
課題に対して現場と一緒に考えます。もちろんデータによる統計的なアプローチは検証の面では強力ですが、今ないデータに関しては間接的には証明できても難しいケースも多いです。統計は打率を上げる面では役に立ちますが、顧客に深く刺さるアイデア自体は現場が持っているケースが多いです。
⑤解決 対策を打つと何が起こるか?
個々のアイデアが出たところで何を優先的にするべきかは、過去のデータから、インパクト、費用対効果、実現可能性を見ます。ここはデータ分析チームが腕の見せ所になります。ここの分析次第で予算獲得やリソースの分配を経営層が判断することになります。
ここまでの問題提起と解決策とそのリスクリターンをストーリーとして伝えることにより晴れてプロジェクト化します。
まとめ
CRMやSFAの導入によりデータ自体は取れるようになってきたものの、データの活用を考えたときにそれっぽいものは出力できても組織を上げたプロジェクトでクローズまでしっかりいけるものは多くないと思います。
数値でいけるところをデータチームがしっかり弾き、一方でそれを補完してくれる他部署の協力なしには上手くいきません。連携をするためにはデータでできるところはどこまでで、どこからが現場との連携が必須になるのか、データチームのトップが判断する必要があります。
悪意なく現実を突きつけてしまうデータチームと最善を尽くした上で予測不可能だった背景を知っている現場、本来強力なデータドリブンになれたはずの組織が機能しないのは実はちょっとした工夫なのだと思います。今回はそのことを改めて学べました。
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