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朱の空、月(きみ)を想う


規制退場の流れに乗り会場を出ると

青から朱へと変わりゆく空が広がる

日が一際長く街を照らす夏至前日

喜びと切なさを抱え帰路を行く



新作アルバムのタイトル曲から

明るく華やかに始まったライブ

序盤から熱のこもった演奏なのは

予定された地域が一本中止になり

初日から一ヶ月経ての

ツアー2日目に5人が燃え

更に2年振りの来訪に喜ぶ観客が

精一杯鳴らす手拍子に煽られたかは

定かではない けれど

40数年間守ってきたバンドを去る人が

2曲目で前方に進み出て

思う様ギターを弾く姿は

目に耳に焼き付いた



朱に染まる雲を背に列車がホームに入る

日曜日なのにあちこちに空席

空が明る過ぎて月は見えず

SNSニュースが伝える

今日の数字に喜びは萎む



代表曲が派手に奏でられるや

一階席は座って右腕を振り上げ

ステージへ大波を何度も打つ

波を浴びて激しくなる演奏

背中合わせで互いに凭れて

ギターを弾き

ウィンドシンセサイザーを吹く

一頻り二人は波の中で遊び

離れる刹那に目頭を押さえたのは

これからバンドを守ってゆく方

パフォーマンスだろう けれど

忘れられない瞬間



流れゆく車窓の中で朱に黒の帳が落ちる

楽しかった非日常はもう遠く

足元が不安定な日常に戻ると

皓々と輝く月が照らす



仲間と共にステージを去る背を

名を呼びたい衝動を飲み込んで

二階席から精一杯の拍手で見送った

ひとつの節目を見届けた

淋しくて幸せなひとときだった



ライブはミュージシャンと観客が

互いに分け与え合う場

次へと進み

いつか又帰る為の

風当たりが強い世が落ち着き

声を出し立って腕を振り上げられる時を

再び取り戻す為の 光を



ライブを 音楽を 守りたい



去年夏秋に公募に出し玉砕した詩サルベージシリーズその一。今回投稿した原稿のコピーを見ながら打っていて「ここの言葉を変えたい」となりはた、こりゃ選ばれないわと自覚。トホホな気持ちで変更はタイトルの無理矢理読ませと“皓皓”を“皓々”にしただけに抑えた内容は『~unbreakable act.3』の詩版。安藤さんに視点を固め、トップ画像にした終演後の燃えるような朱い夕空を追いながらライブを振り返り描いた、つもり。だから時期も2021年6月、GW前後に出た宣言の終了日。詩の最後に祈りを込めたが、半年以上経っても声出しは出来ない今の世に黙して泣く。更に今年も同じ頃にツアーがあり現時点の情報ではこの時中止だった地域が無かったのも切ない。追加があると良いなぁ。名古屋は今年は初日なのにはちと地元民は嬉しや。伊東さんのアレにはレポでもここでも拘ってたり。方々でしていたようだが振りのフリかな、とは妄想の領域。
大元の詩はもっと長くて違うエピソードも入っていたのを視点をひとつに絞った。規定枚数を超える為に『PRIME』前のギターソロも描いたものの泣く泣くカット。別のとある方の描写をまとめた詩をこの投稿後に別の公募向けに書き送ったのがその二になる。こちらも近日中にアップ。ひとつのライブで複数の詩が出来たのは自分でもレアだったがどちらも玉砕しているのがトホホ。情けない作品を晒すのは去年の自分の一部として残す為。いつか振り返ってこういう頃があったと懐かしめたら。いつか知らない誰かに届いたら、は夢見過ぎかな。