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星を、結ぶ ‐standard (mix) edition‐

青が紅く染まり始めた空に

白い月が浮かび上がる頃

東京タワーを横目にホールに到着

入場を待つ長い列に加わる

40年目の大いなる輝きを見届けたくて



カッコ良く楽器を奏でたい

誰かの心に残るものをつくりたい

彼等に憧れ夢を重ねた

私達は小さな星だ

様々に時を経た光がこの夜 集う



開幕は大きくジャンプし捉まえ

次は澄んだ青空を渡り

並べたドミノを鮮やかに倒す3曲目

言葉は無い 4つの楽器が歌い

イメージを伝え聴かせる


ゲストの5本の管楽器が加わり

より熱くなる 音も場の空気も

普段は後方のドラムが前面に来て

メンバー4人が並ぶ後ろに

横一列で立ち吹き

背に風を送る

強い力を受けバンドは走る


自分の席はドラムとの距離が近く

打音の圧を直に全身で受ける中

彼方は体ごと向いて弾き隣を煽り

端側から他の3人を覗いたり

飛び交う視線が結び合うと笑顔

観ている此方も嬉しくなり笑顔に


中盤はゲストやスタッフも参加して

曲の間に会場全体で愉快なダンス

別の曲では“くい”に合わせ指を差し

ドラムソロを手拍子足踏みで盛り上げ

客席内に現れたベース弾きは

子供を見つけては楽器で遊ばせ

沸き立つ会場の中を弾き徘徊し

ステージと客席をひと続きにする


山場は30年奏でられてきた曲から

半分に欠けてしまったバンドに

先程のベースともう一人が入り

支えてくれた頃を思い出す

ホールに喜びが満ち

ブラスの5人が再び呼ばれ

出だしのギターのカッティング音に

昔々 心を摑まれた曲へ

オルガンソロにリズム隊の掛け合いと

今のメンバーが曲の中で遊び

ギターの番になるや音も心も上昇

管楽器達の追い風に乗り

一番熱くなる代表曲に突入

後はもう駆けてゆく

9つの音に合わせ

歓喜を込めた右腕が高く強く振り上げられる


9人分のソロ回しが賑やかな

アンコール1回目を経ての2回目

突然の機材不調に重苦しくなる空気が

「黙らない」と客席からの叱咤をきっかけに

次々と声が上がり

激励で熱気は戻り音も復活

新作のラスト曲が演奏される



出会い

別れ離れ

戻り

通り過ぎ

遠くで見守り

途切れても忘れかけても

結び繋がり

続いてゆく



記念のこの夜とて長い歴史の通過点

彼らは次に向かい始めている

今を突き進むその背に

私は 私達は 付いてゆこう

ステージを去る4人に拍手を送りながら 思う



全てが終わり ひとりホールを出る

夜の藍の帳が当に落ちた空に月が輝く

星は 見えない

帰りの新幹線に乗り込んだ後SNSを開くと

同じ場所で時を過ごした人の呟きを見かけ

「ご無事の帰路を」と返信

小さな星と星がひと時繋がる

あちらこちらでも誰かと誰かが

この夜を語り繋がり

地にひとつの星座を結んだ

2019年12月8日を



忘れない



久しぶりの詩、5月末締切の公募の結果が三次選考まではいかなかったよ通知が先日届いたので此方にアップ、しかし打っている内に少し手直ししたからのmixです。タイトルも当初の句読点入りに戻しました。ライブ前や後のことも書いたフルバースト版はこれより1.5倍位長め、更にファンクラブに送り載らなかったレポートバージョンもありまーす。どちらも読みたい人手を下げてー(笑)まあそれくらいこの夜は、CASIOPEA3rdの東京メルパルクホールでのライブは楽しかったのです。投稿版に改めて取り組む前にこのライブのブルーレイが出て何回見たか。詩で特に細かく書いた本編ラスト3曲の辺りが私的ライブのピークで、今も繰り返しそこは見てます。夏以降はCD版が発売され此方を何度も流してます。ソフトの詳細は『今が昨日(かこ)になる前に』に貼ってます。アレが前夜で今回のがメインイベントさ。
この詩はどストレートにライブを伝えたく書いたのですが、ライブレポの詩化はどうにも受けない通用しないというか、まあ特殊なのは自覚してますがコレを書いてゆきたいんだよーん、チクショーとここで吠えておきます。投稿先じゃない詩の雑誌を読むとより己の作風の異端さを自覚しましたわ。30年近くこうならもう開き直るきゃねぇべ、どこまで貫き通せるか分かりませんけど。ツイッターでも引用して呟きましたが、たったひとりでも届けばと。まあ沢山の人の目に留まってほしい欲もありますが、現実は甘くない、と。
投稿版をまとめていた5月はより強くライブの良さを込めたいと思ってました。3月以降沢山の中止や延期を聞きながらあの夜感じたものを自分なりに描いて残し留め、今に触れるべきかは悩んだ末に吐きそうな気持ちでラストの一文にその諸々を込めました。 そこから半年近く経ち、ライブは出来るけれども風当たりやら経済的には厳しいのが辛い。配信という手段も広まり自分もカシ三番やその関連で何本も見て良さも分かりましたがやはり生音が恋しいです。騒がなくても立ち上がらなくともその場で音を直に、集まった人と抱き付かなくても手を合わせなくても共に楽しさを、感じたいし忘れたくないです。このライブのほぼ一年後になる来月、場所は六本木EXシアターですがCASIOPEA3rdのライブが行われます、対策をした上で。日本も世界もやんごとない状況な今、なんとかどうにかと祈る気持ちで今回は締めます。