読書感想 『2028年 街から書店が消える日』
こんにちは。
小島俊一『2028年 街から書店が消える日』を読みました。なかなか衝撃的なタイトルですね、出版業界の現状に警鐘を鳴らし構造転換を求める強いメッセージという感じの本でした。
業界の置かれている状況や利益の形態が一般読者にもわかりやすいように語られている一方で、ちょっとインタビューとかの聞き方と書き方が恣意的かなーという気もします。まあ事実、旧態依然のままでは業界全体が立ち行かなくなるのは確かなので、意義ある内容の本です。
著者の小島氏は元トーハン、その後愛媛県松山市の明屋書店に出向し代表取締役として赤字続きであった経営をV字回復。現在は独立してコンサルティングに従事、という経歴の方。
本書では、取次と書店の経験で得た知見と人脈の広さから、複数の視点で出版業界の経営をめぐる現状を伝えています。
本書の執筆の動機は「本屋はもう経営構造として成立していない」。
論点をまとめると、現状の収益形態ではどこも経費を賄うのがギリギリ、店舗を自社所有しておらず賃料を支払う必要のある書店の多くが厳しい状況に置かれている。物流コストの上昇もあり取次も赤字状態。書店の減少は中小出版社、いずれは大手出版社にも影響を与える。
大まかに必要なこととして挙げられているのは、
①利益率の改善(現在の書店の粗利は2割程度、これを3割程度まで改善する必要性)
②書店自身が仕入れる本や数を自ら決めることの出来る仕組みづくり(現在は取次が決めた冊数を配本し、売れない場合は自由に返品できる委託制度が主流。これが書店の自主的な仕入れや特色ある店作りを妨げるとともに、返品コストが取次の負担にもなっている)
③こうした改革を進め、一丸となって本を売っていかなければならない出版社、取次、書店間での意識共有と連携
…という感じです。
ほかにも、2022年に大手出版社が共同出資で設立したPubtexや、2023年に紀伊国屋・TSUTAYA・日販が共同で設立したブックセラーズ&カンパニー、日販のコンビニ雑誌配送からの撤退といった最近の業界のトピックについても分かり易く触れていました。
インタビューの幅も広く、大小の出版社や書店の経営者、取次や出版配送の現場や作家の声など、さまざまな角度から出版業界の現状を映し出しています。巻末には「有隣堂しか知らない世界」で注目を集める有隣堂の社長、松信健太郎さんの特別寄稿も。
全体的に、出版業界ひいては書店業界の現況をリアルに掴める興味深い内容でした。どちらかというと、最近増えつつある小商い的な独立型書店の取組ではなく、現実的なビジネスとしての書店全体の存続に重きを置いた本です。業界人以外はあんまり興味ある内容とは言えないかも……でも普段は見えない角度から書店を捉えられる面白い本です。
印象に残ったのは広島県庄原市で書店を営み、夏葉社の島田潤一郎さんと共著で『本屋を待つ』を出版している、佐藤友則さんの話。Amazonも初めはオンライン書店からスタートして、世界最大規模のオンラインショッピングサイトへ発展した。本はあらゆる商売の入口になるポテンシャルを秘めている、だからこそ本屋は本だけ売っている場合ではないんじゃないか。
たしかになー。ブックオフもそんなこと言ってたなー。てかAmazonって書店からスタートしたんだ、びっくり。
いろいろと勉強になる本でした。
今日はこの辺りで、おやすみなさいー。
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