映画感想 『ルックバック』
こんばんは。
やっとヒューマントラストシネマ渋谷で『ルックバック』を見てきました。原作だけでなく絵描きや絵を描き続けることそのものへのリスペクトに溢れた作品だったと思います。
以下ネタバレも含むかもしれない感想です。
あと最後に昼ごはんに食べたラーメンの感想もあります。
まず第一に、風景の既視感と少年時代の経験への共感。実は私も藤本タツキ先生と同じく秋田県の生まれなのですが、学校と行き帰りの道がどっち見ても田んぼとか、猛吹雪のなか30分はかかる最寄りのコンビニまで雪中行軍する羽目になるとか、すごくリアルな東北の田舎だ。ていうか前に原作読んだとき気づかなかったけど、京本の通う大学、東北芸術工科大学なのね。友達が通ってて去年遊びに行ったからめちゃくちゃ既視感ありました。
藤本タツキの雪国への思い、もっと感じたい。チェンソーマンのアキの故郷とかファイアパンチの雪に閉ざされた世界とかを見る限り、一言で表しきれない拗れた郷土への想いや終末的なノスタルジーを感じてしまっているんだろう???としばしば勝手に己の気持ちを重ねています。
それから最初と最後の、絵を描く藤野の背中のシーンの長さ、静かさが良い味を出していた。
音響にこだわっていて、グッとくるシーンでしっかり盛り上げてくるんだけれど、あえてその背中は静かに描く。
絵を描くことは地味で、つまらなくて、いくら書いても終わらない。それでも描き続ける。
そこでラストを無駄に盛り上げないところに、誠実さを感じた作品でした。
あと気になったのは初めのほう、藤野の書いている4コマ漫画がアニメーションになって動き出すシーン。
あそこで映し出された4コマよく見ると原作にはないコマがあったりしたのは、何だろう。(「わたし日記付けてるからどんな小さなことも覚えてるの」みたいな男女のやり取りとかとか、トラックのコマとか)
藤野の頭の中?試行錯誤でボツになったコマ?
それとも敢えてのアニメーションの絵コンテを映したとかだったのかな。個人的にはそうだったら良いなと思う。
やはりアニメーターも、地道に描き続ける仕事だから。あのシーンは好き嫌いの別れるところだなと思うけれど、私はあそこに藤野とアニメーターの情熱の重なりを何となく感じた。作中に京アニ事件を彷彿とさせる描写があるけれど、漫画だけでなくアニメーションへの想いも込められた映画になっていたと思うから。
『ルックバック』というタイトルにはいろいろな意味が込められて、しかしその複雑さは言葉ではなく、絵や映像で重なって伝わるようになっている。
漫画を描く藤野の背中、藤野に手を引かれる京本の表情。ふと藤野が部屋で振り返ったとき目に映る、京本のはんてんの背に書かれた藤野のサイン。
また英国のテロ追悼集会で歌われたOasisの「Don't look back in anger」も意識されています。
誰かの背中を見て追いかけること、自分の後ろを追いかけてきた人を振り返ること。過去を振り返ること、怒りで過去を振り返らないこと。そうやって描き続ける背中を、スクリーン越しにわれわれが見つめている。
描きたいという情熱と描いてもどうにもならないという虚無感、憧れと嫉妬、焦燥感、描くことへの愛憎のなかで、描き続ける。
描くことへの想いが極限まで詰まった作品で、ほんとに絵と映像の良さにそれが表れているなあと始終感じました。
余談。
「俺流塩らーめん 渋谷総本店」で食べた昼飯が美味しかったです。
すごい繊細な味の塩ラーメンの店なんだけど、メンマとか野菜とか細切りにしてあったり、細かなこだわりが全部美味しくて良かった。値段もお手頃。
席に置いてあるトッピングを自由にできるんだけど、柚子胡椒とかとろろ昆布まである。これがめっちゃ合う。あと普通はラーメンって四角い大きな海苔が最初からのっかってると思うんだけど、ここは岩海苔も自分でトッピングするスタイル。シナシナになって幾らかは失われる海苔の旨みが、フルに活躍している。すごい。
私はいちばんスタンダードな塩ラーメンを頂いたけれど、鶏ガラと豚骨のこってり塩ラーメン(具多め)もあって、あれに焦がしにんにくをトッピングしながら食べたら飛ぶだろうなとも思いました。写真撮り忘れた。また行きた〜い。
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