
変化の時代にどう適応する? ─ アニメが描く未来社会から学ぶキャリアの心理学
はじめに
「パパスン @ 心理学をアニメで例えたい人」です。
これまでの記事では、“失敗から学ぶ姿勢”や“過去ではなく目的を見据える生き方”を、アドラー心理学や認知行動療法の視点でご紹介してきました。
今回のテーマは、「変化の時代にどう適応するか?」。
リモートワークやAI技術が発展し、働き方が激変している現代において、私たちのキャリアや生き方はどう変わっていくのか──。
そこで参考にしたいのが、近未来を描くアニメです。今回は特に、『PSYCHO-PASS』と『攻殻機動隊』を例に取り上げて、社会やテクノロジーが激変した世界の中でキャラクターたちがどう生きるのかを見つめながら、心理学的に考察してみましょう。
1. “未来社会”で描かれる大きな変化とは
● 『PSYCHO-PASS』の世界観
シビュラシステムによって、人々の精神状態が数値化され、犯罪係数が一定を超えると“潜在犯”として隔離される社会。
「ストレスや負の感情を徹底的に排除する」という思想のもと、安全な社会は保たれているが、その一方で個人の自由や意思決定は狭められがち。
● 『攻殻機動隊』の世界観
電脳化やサイボーグ技術が一般化し、人々がネットワークと直接つながる近未来。
公安9課の面々は身体の一部を機械化し、ネットワークを駆使してテロや犯罪に立ち向かう。
しかし、テクノロジーに依存しすぎることで、アイデンティティや倫理観が揺らぐ問題も勃発。
これらのアニメに共通するのは、「テクノロジーの進化で社会が大きく変わり、個人の心や行動様式も大きな影響を受ける」という点。
まさにリモートワークやAIが当たり前になりつつある現代社会とシンクロする部分が大きいですよね。
2. アドラー心理学で捉える「変化への適応」とは
● 1) 自己決定感(主体性)を失わない
アドラーは“他者や環境に依存しすぎず、自分で選択し行動する”姿勢を強調します。
『PSYCHO-PASS』では、シビュラシステムに判断を委ねることで安心を得る人々が多数派。でも、主人公の常守朱(つねもり・あかね)は「自分の判断」を捨てるまいと奮闘します。
これはアドラー心理学のいう「主体的に生きる」姿勢を体現する例。どんなに社会制度やAIが発達しても、**“最後に決めるのは自分”**というスタンスを忘れないことが、変化の波に飲まれないための第一歩です。
● 2) 共同体感覚でテクノロジーを活かす
アドラー心理学には「共同体感覚」というキーワードがあります。「自分は社会の一員であり、貢献できる存在だ」という感覚です。
『攻殻機動隊』の公安9課メンバーは、個々が強化義体やネットワークへの接続能力を持ちながら、最終的には“チームとして”問題を解決していきます。
テクノロジーが進んでも、“孤立”するのではなく、“つながり”を意識することが重要。これもアドラーの共同体感覚に通じる考え方です。
3. アニメのワンシーンから学ぶポイント
(1)『PSYCHO-PASS』──常守朱の迷いと決断
ワンシーン:1期終盤、シビュラシステムの“正体”を知った常守が、自らの正義感とシステムの矛盾との板挟みで苦悩する場面。
朱は「シビュラが社会を安定させている事実」と「システムの陰に潜む倫理的不条理」の間で揺れ動きつつも、「自分の心に従う」という選択を取ります。
これは他者がどう思おうと、自分が納得できる行動を選ぶというアドラーの「自己決定」の理論と重なります。
(2)『攻殻機動隊』──草薙素子のアイデンティティ
ワンシーン:劇場版やTV版でも繰り返し描かれる、草薙素子(少佐)が電脳化した身体やネットワークへの接続を通じて、“自分”とは何かを問い続ける描写。
テクノロジーに依存しすぎると、心(ゴースト)さえも侵食される可能性がある。しかし素子は“チームとしての自分”や“目的のために行動する自分”を軸に、揺らがずに歩み続けます。
ここには、「共同体感覚」と「未来への目的」がはっきりしているからこそ、大きなテクノロジーの変化にも呑まれずにいられる、というアドラー的視点を感じます。
4. 現代社会に当てはめるとどうなる?
リモートワーク時代の自己管理
テクノロジーを使えば働く場所を選ばない代わりに、自己管理能力やセルフモチベーションが求められる。
まさに「常守朱のように、環境に流されるだけでなく、自己決定感を保つ意識」が大切。
AIツールとの向き合い方
ChatGPTや自動化ツールが普及する中、仕事や学習が大きく変わる。
ただ、“全部AIにお任せ”で主体性を失うと、かえって成長機会を逃す可能性も。
草薙素子のようにテクノロジーを活かしながらも、自分の目的や“つながり”をしっかり持っておくと、変化をポジティブに捉えられる。
共同体感覚の再確認
「自分だけ良ければいい」という考え方では、チームや社会から孤立しやすい。
アドラーが説くように、「互いに貢献し合う」という視点を持つと、新しい働き方や技術進歩の中でも“協力してイノベーションを起こす”可能性が高まる。
5. 具体的アクションプラン
“今の自分はどこまでテクノロジーに依存している?”を書き出す
SNSやAIツールに振り回されていないか? いつでもオフラインで行動できる自分がいるか?
チームでの共有を意識する
リモートワーク時にこそ定期的なオンラインランチや雑談を設け、互いの状況を話し合う場をつくる。
公安9課のような“チーム感覚”を日頃から醸成すると、メンバーのスキルや思考がシナジーを起こしやすい。
ゴール(目的)を再定義する
「自分はどんな働き方を理想としているか?」「この仕事を通じてどんな価値を提供したいか?」
変化が激しいほど、アドラーの“目的論”を意識し、未来を自分で描き直す作業が効果的。
まとめ
近未来を描くアニメには、「社会が激変しても、人間としての本質は変わらない」というテーマがしばしば描かれます。
『PSYCHO-PASS』でも『攻殻機動隊』でも、革新的な技術や制度があっても、最終的には人の意志や絆が物語を動かす鍵になっています。
アドラー心理学の「自己決定感」「共同体感覚」「目的論」を踏まえると、私たちもリモートワークやAIの波に飲み込まれるだけでなく、“自分で目的を定め、仲間と貢献し合う”生き方が選べるのではないでしょうか。
急激な変化の時代こそ、心理学×アニメをヒントに、“これからのキャリア”を前向きに捉えていきましょう!
次回予告
第5回:「“仲間”や“つながり”の力 ─ アドラー心理学で読み解く『ONE PIECE』の共同体感覚」
次は、ひとつなぎの大秘宝(ワンピース)を追い求めるルフィたちの物語を題材に、「共同体感覚」や「チームの力」をより深く掘り下げてみます。アドラー心理学のキーワードを通して、“仲間と一緒に未来を切り開くコツ”を考えましょう!