歳を取るのは素敵なことです そうじゃないですか?
-中島みゆき「傾斜」より-
近年ちょくちょく耳にする「オタクの老い」問題。「疲れてアニメを見るのも億劫」とか「ガキの頃は延々とゲームし続けられたのに、今はもうハードの起動すらだるい」とか、そういうやつだ。決して他人事ではないから少しでも抗おうと、ぼくは昨年末あたりから「今月はこのゲームやる!」と計画と決意を固めてから遊ぶと決めている。いまのところほぼ予定通りに遊び続けられていることだし、ここ半年遊んだゲームの雑感など残しておこう。老いるとそんな思い出すらすぐどこかへ溶けていってしまうから。
2019年12月 ペルソナ5 ザ・ロイヤル
300時間ほど遊んだ無印版の完全版。新シナリオ「3学期」追加くらいで食いつくのも我ながらチョロい客だなあなどと思ったのだけど、約2年越しのプレイゆえ、そこそこ新鮮な気分で遊んでしまった。ただ、2学期までの展開は新キャラがからまない限りほぼ無印と同じため退屈で、「銃が(ほぼ)無制限で撃てる」「ボスのギミック追加」「いまいち可愛くなかった杏の笑顔が描き直してある」など、細かい変更点を探す遊びになっていた。
でまあ、肝心の3学期シナリオは小並感丸出しで言うと「ふつうにおもしろかった」といった所感。「偽りの幸せ」みたいなのに惑わされるくだりがあって、不幸な青春を過ごしてきた主人公たちの「あったかもしれない幸せ」を見るにつけ、ああ、これなら偽りでもこのままがいいんじゃないかなあ……でも、それだと根本的な解決になんないしなあ……みたいな葛藤をもたらすあたりが好みだった。ちょっと違うけれど、ドラクエ11もそんなふうに迷わされるところがツボ。
2020年1月 十三機兵防衛圏
ペルソナのプレイ中にこのゲームを知り、「おっ、こっちにも福潤ボイスのインテリメガネ(郷戸先輩)出るやんけ」と、声ヲタムーヴで食指が動いたのだけれども、タワーディフェンス嫌いが災していっぺん保留してしまっていた。楠木正成の千早城防衛など、軍記物でたまに面白いシチュエーションはあるが、防衛戦はゲームでやってもあまり楽しくはなく……。あと、敵も味方もじわーっと動く感じも嫌い。
んで、タイショウ浪漫なスチームパンクもののリニューアルはどんなもんだべと、似たような時期に出たそっちを選んだのだけど、これがなかなかの「(好きな罵倒語を入れよう!)ゲー」だったのであえなくギブアップ。世間様の盛り上がりもあって、結局十三機兵を買い求めたのであった。
でまあ本編の物語がどう最高だったかみたいな話はもうあちこちで語られているからわざわざ書かないとして、まあ最高。戦闘パートは懸念していた通りあまり面白くなかったのだけれど、「あるクライマックスシーンを演出するうえではこのシステムがベストだった」ようにしか思えず、「ならばよし」の気持ちで胸が一杯。マクロスファンなら絶対グッとくるやつよな。
2020年2月 龍が如く7
仕事でおもしろおかしく紹介したところ、コタツ記事にもかかわらずヤフートップを飾ってしまったので、「これは責任を取らなくてはならないのでは?」と謎の使命感に駆られてシリーズ未経験ながらプレイ。正直なところ、ハジけた演出はさておいてRPG部分の根幹が平凡で退屈だったのだけれども、主人公と俳優陣の演技や、しょうもないギャグを織り交ぜながら展開されるマジなストーリーが良かったので最後まで遊べた。
RPGとしては退屈と書いてしまったけれども、「ロールプレイ」の意味でいえば、脇道の会社経営ゲームは秀逸だった。ヘタすると同作のゲーム要素で一番面白い。細かい説明はしないけれど、やり込むと「複数の愛人に支店を任せる地方のタコ社長ごっこ」ができて最高。会社が小さいうちも、「チンパンジーに任せたミリタリーショップが大繁盛」なんて事態がナチュラルに発生するので油断がならない。
2020年3月 ペルソナ5 スクランブル ザ ファントム ストライカーズ
なんかずっとセガのターンな気もするがセガに強い思い入れはなく、たまたまである。こちらは前述した「ペルソナ5」のスピンオフで、開発はオメガフォースが手がける「ペルソナ無双」的なアクションRPG。ストーリーは正統な続編にあたるのだけれど(「ロイヤル」の要素はない)、前作を遊んでない人向けの解説を一切しない潔い作りで、話が早くて助かる。ま、よく知らないゲームのスピンオフから始める人なんかそうそうおらんだろうし。
「アクションRPG化されたペルソナってどうよ」については、「敵のバリエーションが減少」「中ボス以上の敵が硬くて少々ダレる」といった弊害はありつつも、さすがオメガと言うべきかキビキビ動いて好感触。ぼくはアクションゲームの良さを「触ってて気持ちよければOK」くらいの解像度でしか判断できないところもあるけれど。ただ、前作の「カバーポジションに入ってさえいれば、敵と目が合っても発見されない」ガバガバ警備が修正されていて、そこそこ緊張感をもって遊べたのはよかった。基本的に文句はあまりないけれど、「ロイヤル」開発チームから絵素材が回っていなかったのか、杏の笑顔がいまいちかわいくないままだったのは残念である。
2020年4月 FINAL FANTASY VII REMAKE
ネットではいろいろ賛否だったやつ。ぼくはブツブツ文句を言いながらきっちり楽しんだ。「気をつけろ。そこはまだできてない」みたいなセリフでゲラゲラ笑ったのが一番の思い出である。分作に文句はないし、ロードマップを出せと言う気もなく、「風呂敷を広げたからには完結してくれ」とだけ願っている。なんとか半世紀ぐらいなら待つからさ。
2020年5月 極限脱出シリーズ
第1作目の初出が2009年のDS版、リメイク版すら2017年とかいう少々古いアドベンチャー。昨年に勇者ああああのプレゼン企画で知った「EVER17」に感心してニワカ打越鋼太郎ファンになって以来、少しずつ遊び続けていた。
ネタバレでかなりの価値を失う作品なので詳細を説明する気はなく、ぼくの大好きな「ゲームの構造そのものがストーリーと密接に関わるやつ」だったとだけ書いておく。十三機兵もそうだったわけで。
これは余談だが、「『何をするゲームか』さえ伝えられればゲームにレビューは不要ではないだろうか」と、長年ずっと考えている。それさえ分かれば、読者は自分で判断するはずだろうと。でも、このように説明しすぎると魅力が損なわれる作品の場合、結局のところ何らかの婉曲的な物言いで魅力を伝えるようなレビューが必要になるだろうなとも思い直している。
5月はXbox Gamepassに入ったので、ほかのゲームも幅広く少しずつチョコチョコ遊んでいる。一番楽しんだGears Tacticsについては先日書いた。実を言うとサブミッションのダルさ(しかも強制)がネックでそこまで強く推せはしないのだが、本筋に一切関わらないNPCがいい感じだった。
2020年6月 UNDERTALE
「ヤホーで検索して超面白いインディーゲームを見つけたんですよ。『UNDERTALE』っていうんですけどね」
――などと前フリしないと恥ずかしくて、今更面白かったとは言いにくい名作。なぜ今コレかというと、一昨年にNルートクリアで保留していたところデータがHDDごと御臨終し、モチベが消滅したときの傷がようやく癒えたからだ。
そんなわけで今回はPルート狙いで進めたのだが、一番驚いたのは作り込まれた「楽しくもダークな世界」でなく、自分の記憶力のいい加減さだった。サンズのジョークもアルフィーの「オタの早口」もメタトンの変身も、何もかもが初見のように新鮮。このゲーム、クライマックスにちょっとドッキリ系の仕掛けがあるのだけれど、それにすら心臓が大きく震わせられた。「ああ、そういえば前回もこれでビビったっけ……」といったパターンでなく、普通に不具合かと心配した。
「十三機兵」をはじめ、最近ストーリーやゲーム自体の構造の核心が見えたときの感動がとてつもないゲームが目立ち、しばしば「記憶を消してもう一度遊びたい」と願われる(半ば賛辞の意で慣用句化されてはいるが)。ただ、そんなものは耄碌するだけですぐ叶うと分かったので、その点では歳を取るのも悪くはないのかなとか思った。良かった探しでしかないけれど。
忘れっぽいのは素敵なことです そうじゃないですか
-中島みゆき「傾斜」より-
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