変革の起点を担う「ミドルリーダー」と「ミドルセカンド」という存在
変革が軌道に乗る組織とそうではない組織の違いは何かを考えていた。もちろんただ一つの要因に基づきこの境が決まるわけではない。ここでは、共通する特徴の一つとして、「ミドルリーダー」と「ミドルセカンド」の存在をあげたいと思う。
伝統的な組織の構造はおなじみのピラミッドになっている。
変革の要因として、3つのディメンションがそれぞれ強調される。
(1) トップダウン
変革には全社的な方針策定が欠かせない。トップのコミットメントを前提に、トップのリーダーシップが必要だという説
(2) ボトムアップ
トップが旗振りしているだけでは実体として進むことはない。ボトムアップ的に現場から自発、自律的な動きでムーブメントを作るという説
(3) ミドルアップダウン
変革の鍵は間にあるミドルが握っている。トップに働きかけ、トップの指針を現場に翻訳し、そして現場の活動をトップへと伝えていくことで、変革の繋がりを作り出す説
結局、どれも欠くべからずディメンションになるわけだが、ここでは「ミドル」に注目したい。
レガシーな組織では、この先に向けて何を何のためにどのようにしていくのか、いわば組織の「芯」が多くの場合欠けてしまっている。組織の「芯」となる変革の芽を作り、手をかけて育てていく役割が不可欠となる。
トップはときに、最初の芽を生やすことは出来るがそれ以降、実体として育てていく動きが取れない。現場も、自発的に芽を生やすことはできるが、組織に広げていくところで壁にぶつかる。ゆえに、ミドルに変革のリーダーシップが期待される。
なお、ミドルが変革のリーダーシップを果たしていく場合は、芽吹かしの起点はトップでも、現場でもなく、ミドル自身になると考えられる。なぜならば、このリーダーシップが果たせる人材ならば、その気質を考えれば「誰かからバトンを受け取ってから動く」というよりは、誰に言われることもなく「自ら動き出しをはじめる」はずである。
逆に「バトンを渡されて動くミドル」という構図は、その時点で変革にはややビハインドであると言える。
さて、本題。変革が軌道に乗っていると感じる組織の特徴は、強い牽引力をもった「ミドルリーダー」の存在がある。これは、上記の説明からも想像に難くないだろう。
ただ、その強さとはいわゆるカリスマ性のことではなく、自身の行動量に特徴がある。圧倒的に自ら動く。これまでのあり方に最適化した組織は、判断や行動が極めて効率的(硬直的)になっている。この状況を突破するために動かす「はずみ車」は極めて重い。
どこを押せば回るのかが誰にも分からないので、試行錯誤するより他ない。その最初の一回転の役割を果たすのが、ミドルリーダーのかけ離れた行動量にある。
ただ、今回より強調したいのは、さらにそのリーダーとともに動く「ミドルセカンド」の存在である。
「ミドルセカンド」は、ミドルリーダーと現場の間の存在である。現場担当者よりリーダー業が求められ、ただし、ミドルにおけるトップを張っているわけではない、現場の「部隊長」というイメージだ。
「ミドルセカンド」がリーダーへのフォロワーシップを果たしながら、現場でオペレーションレベルでの働きかけを行う。
ミドルリーダーは先のとおり行動するリーダーのため、自ら一つのプロジェクトを引っ張ることもある。ただ、変革の現場とはその組織における最も多忙な場所の一つで、複数のプロジェクトが混沌に近い状態で乱立していることが多い。ミドルセカンドは、そうしたプロジェクトのリーダーを張る。
スクラムを適用した仕事ならば、ミドルセカンドがスクラムマスターまたは、スクラムマスターを含めてチーム全体をフォローする役割を務める。現場で必要なアウトプットを生み出し、期待するアウトカムへとじりじりと近づけていくための実際の下支えはミドルリーダー以上に、ミドルセカンドにかかっている。
ミドルリーダーがいくら「アジャイル」を掲げたところで、ミドルセカンドにその気も、その手立ても無ければ、掛け声だけで終わらざるを得ない。むしろ、ミドルセカンド以下現場に至るまで戸惑いが深まり、ミドルリーダーは孤立し、成果も見えてこない。「アジャイル」のマインドも、確かなプラクティスもミドルセカンドこそ持ち合わせていて欲しい、ということになる。
まとめるとこうだ。変革の起点として必要なのは、
こう考えるとミドルリーダーの仕事とは、まずもってミドルセカンドという存在を作ること。つまり、ミドルセカンドに変革の意図を伝え、そのために必要な手がかりとともに考え、具体的な動き方となるプラクティスを練習し、ミドルセカンドのケイパビリティを作り上げていくことにある。
変革がまがりなりも軌道に乗っている組織を注意深く見ると、先のような特徴が浮き上がってくる。あなたの組織にミドルセカンドは存在するだろうか。ミドルセカンドは、どのような指針をもって、日々何をしているだろうか。