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正しいものを正しくつくる

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書籍「正しいものを正しくつくる」に関するマガジン。 https://beyondagile.info/ https://www.amazon.co.jp/gp/product/4…
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2023年10月の記事一覧

スプリントを「番号」ではなく「名前」で見分ける

 ドン・ノーマンの「より良い世界のためのデザイン」を仕事の合間に読み通した。  忙しい日々の中ゆるんだ視座、視野をしゃんと元通りにしてくれる一服の清涼剤。ノーマン先生に外れなし。特に、パートⅣ「人間性中心」に心地よさを感じる。これまでも何度となく出会ってきた、デザインとアジャイルの再邂逅。いや、本当この道を信じてやってきて良かったよ。先生。  モジュラーの概念を引っ張り出して、アジャイルの解説を入れてくる。モジュラーか、そうだね。スプリントの概念はモジュラーに通じるんだよ

アジャイルに期待する「はやさ」とは何か

 「アジャイルは速い」「速くやるためのアジャイル」といった見方はどこからやってくるのか。かつて、ソフトウェア開発で交わされたこの手の期待が今またアジャイルを組織に適用する文脈でも繰り返されている。「アジャイル」のその実体がなんだか分からないまま、こうした高速論が先立つことが多い。  当然ながらソフトウェア開発においては、非アジャイル型の開発との比較で、アジャイルの本質とは何か?を捉えていくことができる。一方、組織論では比較の解像度がやや劣る。「効率に最適化しすぎた結果、かえ

探索チームに「ロジカルシンカー」の居場所はあるか

 既存事業でこそ「探索」が必要であるという話を書いた。  この話を踏まえて、「探索チーム」について、もう少し語りたい。既存プロダクト、事業の文脈で、あらためて顧客の状況やインサイトを集めにいく、その際のチームのフォーメーションについてだ。  まず、さらに前提を加えるが、この探索活動のチームの動き方には「アジャイル」が期待される。つまり、スクラムのようなプロセスを適用することになる。探索になぜアジャイルが必要かという話は、いくつかの本に何度も書いているので割愛する。  「

「探索」は、新規事業としてではなく、既存事業でこそ行う

 散々、「組織には探索と適応が必要だ」と言って回っている通り、最近の仕事では「探索チームを結成し、探索に出る」ということが多い。ここでいう「探索」は、その組織にとって「今まで取り組んでこなかったこと」「重要だが緊急性が低かったもの(でも今は高まっている)」といったテーマが主となる。  概ね共通するのは「あらためて顧客に向き合い直す」ということだ。目の前の製品、事業を売るということに最適化してきた結果、そもそも顧客の状況やインサイトが分かっていない。それでも目の前のビジネスを

「アジャイルとして合っているか?」 なのか、「アジャイルで合っているか? 」 なのか

 「アジャイルにいこう」という心意気は良し、だが、アジャイルの様々な「作法」が本来の意図とどう繋がるのかがよくわからない。よくわからないけども、アジャイルの精神に則り、「やってみよう」ではじめてみる。まあ、上手くいかない。上手くいっているように思えないから立ち止まる。立ち止まって、考え直してみる。そもそも、「アジャイルにいこう」で期待していた意図とは何だったんだっけ。おや?  最初にある「作法が意図通りか?」について精査するのは難しい。「作法」そのものが新しいためその是非が

「やってみよう」で上手くいかない場に欠けている「流れ」とは何か

 ミーティングであっても、プロジェクトであっても、あるいはチームとしての活動であっても。つまり、人が集団で取り組む、ほぼあらゆる活動に通じるかもしれない潜在課題について考えてみる。  場に対してファシリテーターないし、コーチが存在することは珍しいことではない。そうした役割が、人々を促し、励まし、場作りを後押ししていく。ゆえに、場に動き出しを与える「とにかくやってみよう」であったり、場がより良くなるようにと「改善を考えよう」といったことは、一昔に比べると進みやすくなった。

「上手く答えるための学習」 と 「問いを得るための学習」

 経験から学びを得て、自分の武器にする。皆さんも日々コルブの経験学習モデルを回しまくっていることと思う。  このモデルを回転させる際のコツはいくつもあるが、まずは「具体的経験」に着目してみよう。何が役立つ概念にまで昇華していくかは事前には判然としないため、最初はとにかく経験の「絶対量」を上げる作戦を取ることになる。  量は質を凌駕する。というか、量を上げる以外あまり手がなかったりする。質をあらかじめ狙って、量を限定できるとしたら、それはすでに学習が進んでおり、何かしらの手