[ネタバレしかない(あと虫注意)] Arctic Eggs レビュー
プラットフォーム:Steam
値段:1200円 (サントラも1200円)
リリース日:2024/5/16
クリアまで:2.5時間
日本語:対応済み。高クオリティ
未来の南極で両面焼きを作るゲーム
noteでウムランギジェネレーションでエゴサしていたときに見つけた、一見荒いポリゴンゲーム。ただ、それだけではなく…
「未来の南極で卵を焼く」というシチュエーションにヨダレが出たので思わず購入。
グラフィックも良いが世界観もいいし、何より卵をとにかく両面焼きしなければならないというその変態的なまでにストイック過ぎるゲーム性にしびれた。そこまで長いゲームではないので一気に遊んでしまいそうになったため、ちょいちょい合間を開けて遊んでいた。
普通に難易度が高く、集中力が持たないという理由もある。
未来ということもあり、荒いポリゴンでもわかる人々のサイバー感とディストピア感。鼻からチューブが出てたり、片手がなかったり、南極なのに裸だったり(これはSF関係ない気はする)、頭がロボだったり、イルカもロボだったり、兵士がフル装備だったり。
ポリゴンの粗さはマジでポリゴン初期で、顔も体もほぼ平面。だけどテクスチャが詳細なのと、なぜかそのテクスチャが蠢くのでチープ感ではなく、なんか独特の空気感を与える。
街もバリバリのローポリなのだが、やっぱりローポリ独特の良さがある。
あと、常に漂っている氷の結晶が雰囲気や良し。チルい音楽と合わせてバッドなトリップを楽しめる。このゲームを遊んでいること自体が白昼夢のよう。なぜ自分は必死にフライパンを振っているんだ…?
・ストーリー
正直良くわかっていない。未来の南極でフラミンゴなど色々な生物が絶滅しており、鶏はかろうじて存在するが、政府が厳しく管理していて、卵はとても重要な食物となっている。(それにしてはプレイヤーが調理失敗して数限りなく無駄にするけど…)
六胃星という、胃を六つ持ってそうなトップがすべての決定権を持っており、最近だとエイの販売を禁止したとかなんとか。割と政府への反抗心が強く、兵士の中にもなかなかやってられなくなってる人も。そういう人も含めて人々全員がだいぶダウナーになっている。
そんな中、調理人となって飢えた人達に美味しい両面焼きの目玉焼きをふるまってあげるのが主人公。どんなわけわからんリクエストにも答えていくぜ!失敗すると投獄だぜ!
・ゲーム性
マジで卵を焼くことだけがゲーム要素。あとはそこそこ狭い基地を徒歩で歩き回ってクセしかない人々とクセしかない会話を楽しむ。
あ、あとYボタンでタバコを咥え、なぜかそのタバコにこれまでごちそうした人の数が表示される。IOTかな?
「卵を焼くだけ」というと最初の数人にごちそうしたらもうそのゲーム飽きるやろ、と思われそうなところ、普通じゃないのがその具材。
卵だけじゃなく肉や魚というそこそこ普通の具材もあるが、火のついたタバコ、ビール、氷入りショットグラス、虫、銃弾など頭がおかしい具材をフライパンからこぼさないようにしっかりと焼いてお客に提供しなければならない。
クラブや兵士の駐屯所、刑務所など様々な場所に決まった数だけお腹を減らした客がいるので、その人達に両面焼きだったり彼らの求める具材をきちんと焼いてごちそうしていく。
ただ、全員の腹を満たす必要はなく、難しいと思ったミッションはある程度スキップしてもクリアまでは行ける(ラストミッションの難易度も相当高いけど…)
また、クリア後は「サンドボックス」機能が開放される。ステージを作れるのかと思ったら、好きな具材、好きな邪魔アイテム、好きなBGMで幾らでもクッキングができるという、謎機能。好きすぎる。しかもここでしか解除できない実績が幾つかある。
・操作性
操作性は正直言って悪い。が、慣れるとこれしかないな、と思える。ただ、設定から自分のスタイルに合った感度に変更するのは大事。
自分はSteamdeckで遊んでいたので右スティックでフライパンを動かし、LTで動きを抑える操作になる。調理パートではそれ以外やることない。
しかし、LT押しながらでゆっくりフライパンを動かせるってチュートリアル、あったか?これは最初に遊んでからちょっと日を開けて遊んだせいで記憶が飛んでいたのかもしれない。
ただ、このLTホールドをしなければほぼクリア不可能なので必須。
右スティック操作はマウスより難易度が高いのかもしれないが、結構直感的で遊びやすい。いっそフライパン型コントローラーを出して欲しいレベル。WiiコントローラーとかJoyconとかで対応できそう。Switch移植求む!
また、鍋のサイズが難易度で変化し、イージーだと中華鍋、ノーマルだとフライパン、ハードだと端にほとんど丸みがない鉄板となる。
ハードで最後の客をクリアする実績もあるが、世界観を味わうならノーマルでもイージーでも全然良い。
自分は最初から最後までノーマルでやって、十分楽しかったし十分苦しんだ。
・具材?
これ以上難易度上がるのか?卵とビールくらいか?と思ってたら突然のハリセンボン!丸い!跳ねる!焼けても跳ねる!コイキング並みに跳ねる。
大きな魚も普通に跳ねて、裏面が焼けても跳ねてもとに戻ったりする。
氷はすぐ溶けるのでショットグラスの中に入れて倒さないように気をつけなきゃならない。ビールは瓶ごと調理するが、倒れると中身が飛び散り、一滴でも外にこぼすとやり直し。タバコはタイマー的お邪魔キャラで、時間が経つと焼けてなくなってやりなおし。
普通の食材としてベーコンやソーセージ、ピザなどもあるが、どっちかというと理不尽食材の方が多い。
オイルサーディンの缶を温めて開封するのはまだいいが、開封すると中からなぜか生きた小さいサバが飛び出してくるので、それらを改めて調理する必要がある。
他にもキューブ型の謎肉で6面全部焼かないといけないとか、でかいピザやでかいエイなども。目まぐるしく、楽しい。でも卵どこ行った?
巨大プールで泳ぐクジラに目玉焼きをあげるというミッションも地味に難しかった。目玉焼きを回転させる拍子に色んなところに飛んでくのはよく見る光景だが、狙った場所に飛ばすのはなかなかいらないテクがいる。
クリアした今でも正しい攻略法がわからない。右下に寄せてからはねさせるのか、左下に滑らせてから手前で持ち上げるのか… もうプールにたくさん落ちてるからそれを食べて満足してくれ…
・あの虫(ネタバレとは関係なく閲覧注意)と銃弾という二大お邪魔
そして極めつけが割とリアルなG!しかも動きまくる!裏返さないと飛んで逃げる!地獄!
(写真は割愛します)
しかも別クエストでは二匹!無理だろ!だいぶ長い間、卵半面焼くだけで限界だった。
しかもGは焼いても焼いても死なない上に、表になってると時間ではなくたぶん確率で飛ぶ。ので、フライパンに落とした瞬間に飛ぶすらある。
なので、常に横か裏にしておく必要がある。だが表じゃない状態になってると一定時間で100%表に戻り、その瞬間にまた飛び立つ可能性が出る。これは色んな意味でクソだー!味がありすぎて良いけど!クソだー!
しかもある意味このGが一番リアルなポリゴンなんじゃないかと思うくらい、足も羽もきちんと動く。画面側に飛んでくるときはのけぞってしまうほど。ただ、難易度が高すぎてもうモザイクかけろとか言う気持ちも失せる。というか、モザイクかけられると裏表の判別ができなくなってクリア不可になるから無修正のままでいいです…
30分くらい繰り返し、数限りない卵とGを床に落としてようやくクリア。
唯一助かるのは、Gはちょっと動かしただけでバランスを崩しやすいことか。だから表になったらすぐ軽くフライパンを動かすことでまた動きを妨害できる。そしてちょっと動かすだけなので卵が裏返ることはない。まあ、それでも8割くらい運だけど…
Gが極めつけかと思ったら次は銃弾が定期的に補充される!ほっとくと爆発して具材を弾き飛ばすので、早めに捨てるか、端っこに置いておいて爆発を耐えるかなど慎重に対応する必要がある。
自分の攻略法としては、端っこに寄せておけば1つなら爆発は耐えられることが多かった。
が、複数置かれたり、具材の下に行っちゃった入りすると地獄。ひっくり返すのに合わせて捨てられると良いが、だいぶ運。
最初に自分で置くことになるやつは直接捨ててもミスにならないのでちょっとだけ時間を稼げる。
・クエスト
クエストというか調理前後の人々との会話なんだが、どれも印象に残りまくる。
息子に、全身を少しずつメカに変えられている父親に魚とハリセンボンを調理してあげたら、君の目が美しかったよありがとうと言って氷の海に飛び込んでいった。…いや、釣りに行っただけだよきっと。
刑務所に入っている囚人たちはなぜかみんな頭と体の一部がメカになっている。どうやって卵を食べるのかは知らないが、急に踊りだしたりバク転したり元々は音楽を作ってる人だったり、様々なバックグラウンドが垣間見える。
戦争後に仕事がなくなった改造イルカが娯楽を求めていたりもする。
芸術論をぶつ兵士もいる。
難しい話をしていたと思ったら突然かわいくなる人もいる。
・サントラ
チルすぎて余り目立たないのだが、音楽がとにかく良い。調理中は忙しくて余り耳に入らないけど、移動中にはサイバーパンクな風景と相まって自分がその世界に入り込んでいるかのような幻覚を感じる。
ゲームが1200円のところ、サントラも1200円というのが結構お高めではあるが、合わせても2400円、10連ガチャより安いんだからセットで買って楽しむが吉。
・ローカライズ
サイバーパンク且つおかしい人々の雰囲気を確実に保っている良ローカライズ。
たまに画面からはみ出して読めない箇所があるのは御愛嬌。ただ、ごちそうした人のカウントはタバコを吸えばわかると教えてくれる人の肝心のセリフがはみ出して読めないのはちょいまずい。
そしてフォントが独特!グラフィックと相まって漢字がほとんど潰れている。しかも世界観も独特なため、表現がぶっ飛んでおり、漢字は読めるが意味はわからん!けど良し!みたいなのが頻発する。ノリで行こう!
可読性が低いのに逆に評価が上がるというのはそうそうないぞ…
いやまあ、ちゃんと読めたほうがもちろん良いんだけども。でもここでエフェクトもなにもかかっていないメイリオとかでびしっと表示されちゃったら雰囲気は台無しになっただろうとは思う。
・問題
バグがそこそこある。自分の場合はオイルサーディンの缶が一生蓋が開かないバグに遭遇してなかなか困った。これは、本来2つ同時に調理することになる缶が1つしか出てこないという問題だった。再起動したら治った。
そんな感じに、フライパンに落とす食材が暴れることが多い。その場合は冷静にESCなどで一旦やり直すと良い。
あと、食材が横や縦、本来ありえない角度で立つことがある。この場合、焼けてるエフェクトは出るが実際は焼けてないのでほどよく倒す必要がある。高難度ミッションのときにこれが起きるとなかなかきつい。
また、実績解除タイミングがゲーム終了時なので、プレイ中は絶対に達成してるのに実績が解除されない!バグか!?となる。
ゲームを一旦終わらせると一気に解除される。
最大の問題としては、マジで虫がきつい。難易度的にもビジュアル的にも色んな意味で。が、幸い全クエストをクリアしなくてもゲームはクリアできるので、きつい人は見なかったことにしてゲームを続けよう。
・まとめ
変わったゲームが好きか、退廃的な雰囲気が好きか、サイバーパンクが好きか、荒いポリゴンゲームが好きか、わけわからん世界観が好きか、チルい音楽が好きか、両面焼きが好きか、どれかに当てはまる人がいればオススメ。自分は全部好きだったので良すぎて吐きそう。
クリア時間が2.5時間になっているが、体感6時間くらい遊んでた気がした。それほど濃密な時間を過ごせた。