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IDC2024に参加したのでセッションまとめ

ちょうど企画していたイベントで秋葉原の会場の下見をしたいと思っていたところに近場でIndie Developer Conferenceが行われていたので、自分は直接ゲームを開発しているわけではないのだが、何か役立てられることがあるかもしれないと、参加してみた。

「未解決事件は終わらせないといけないから」は素晴らしいゲームだったのでSOMIさんの講演は見たかったのだが、開発チームではない自分が唯一ちゃんと役立てられそうな著作権・契約書に関する講演と同じ時間になっていたこと、そしてSOMIさんの講演はアーカイブで見られるということで弁護士さんの講演を優先。

あとXboxでのゲームリリースやローカライズについては前職で大体分かってるので、知り合いとご飯を食べに行ったりしていた。

ちなみに、以下にまとめる内容は自分が聞いて理解した内容なので、自分の解釈が多分に含まれており、登壇者の言いたかったこととは食い違っている可能性があります、という予防線を張っておきたい。

あと、PICOPARK2開発者による講演は情報共有不可だったので割愛。

アーカイブが公開されたら見直して補足するかも。


ゲームに関する著作権と特許権

スピーカー:前野孝太朗氏 @kotaro_maeno

子供の頃に逆転裁判を遊んで、弁護士かっけー!となり、そのまま弁護士になってしまった人。今でもゲームを遊び倒している。最近ではユニコーンオーバーロードが良かったらしい。インディーゲームはあまり遊んできてないが、グノーシアやアンリアルライフは遊んだとのこと。

・著作権保護法について

裁判所の問題の見方は、著作権法に沿っているかどうか。見た目が似てるからという判断はしない。

そして著作権法とは「創作的な表現」を保護している。
つまり、ありふれたもの、事実、アイデアは保護されない。

作品1と作品2があり、類似点が幾つかあるとする。
だが、その類似点がありふれたものやアイデアだけであり、「創作的な表現」がない場合、著作権法的には問題ない。

*聞いてて思ったこと
最近ちょうどTencentのHorizonっぽいゲームが話題になってたが、そう考えると…
・アメリカインディアンデザイン > ありふれたもの
・武器が弓 > ありふれたもの
・機械獣 > これは創作的な表現っぽい
なので、著作権保護法から見ると機械獣のデザインがどんだけ似てるかとかで争いが生じるのかもしれない。でも、これはあくまでも日本の著作権保護法の考え方であって、海外だと違うのかもしれないな…

他に問題になるのは依拠性(インスパイアというか昇華というか) vs 類似性(本質的な特徴を感じられる)など。

そもそも、著作権問題になる以前に、危険性やリスク、問題発生時のコストを避けるようにするべき。

AI利用については経産省の「コンテンツ制作のための生成AI利活用ガイドブック」がおすすめ。
https://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/contents/aiguidebook.html
ただ、学習段階と生成段階は別に考えるべき。

特許権は「発明」を保護する。発明はアイデアなので、著作権保護法でアイデアは保護されないことと逆。
J-platpatというサイトで特許の検索ができる。例えばスクエニのアクティブタイムバトルとか。
https://www.j-platpat.inpit.go.jp/p0200

・契約書とは

契約書は問題が発生したときに必要になる。問題がないときは必要ない。
契約書があると裁判で有利になる、というか裁判になる以前に紛争を予防したり早期に解決できる。

権利を集約する機能もある。この部分は権利元だがこの部分は別の人とかなると、続編作るときとかややこしいことになる。

あと文化庁が作った契約書支援システムが万能ではないがそこそこ使える。文化庁:著作権契約書作成支援システム
https://pf.bunka.go.jp/chosaku/chosakuken/c-template/

・業務委託契約

業務の依頼は口約束ではなく、契約書やメールなどで明確にしておく。そうしないと、納期や金額が食い違ったときに無駄に論争になってしまう。

業務内容、成果物の仕様、どう使われるのか、IPの譲渡をするかしないか、などなど決めておくべきことは多い。

会社側としてはトラブルにかかる労力、コストを避けるためにもしっかりと作っておくべき。
委託を受ける側は自分を守るためにもしっかりと作っておく(作らせた場合はしっかりと見る)べき。

例えば、移植案件でオリジナルのコードはもちろん原作者が権利を持つが、移植会社が作ったバージョンはどちらに帰属するのかが怪しくなってるときとかある。

フリーランス保護法についてのお役立ちドキュメント:ここからはじめるフリーランス・事業者間取引適正化等法
https://roumu.com/archives/124107.html

・警告書について

著作権違反などで権利元から警告書が届いたとき:いついつまでに取り下げや支払いなど、書かれている内容に対応せず、速やかに詳しい人に連絡する。
*聞いてて思ったこと
そもそも偽物や言いがかりかもしれないし、期限や金額も相手側が一方的に言っているものだしなぁ。届いたらビビるだろうけど、即座に反応しないのがマジ大事そう。

困ったときの問い合わせ先:

特許・商標=弁理士
会計税務 会計士=税理士
労務について=社労士
法務関係について=弁護士

*聞き終わって思ったこと

めっちゃ面白い弁護士さんだった。逆裁の弁護士業界への貢献はマジででかいのではないだろうか。
逆裁から来たという時点でゲーム業界の人にとって無条件で信用できる弁護士さんだが、とにかく一般的に知識が薄いと思われるゲームに詳しい弁護士というのがでかい。
似たゲームを見かけると「これは似てる!著作権的にアウト!」と叫んでしまうが、創作的な表現に限るとなると、結構考え方が変わるな。
とは言え、著作権とか特許権とかは別にしても、「明らかに似ている」と思われるだけで印象が悪いので、まずしっかり調査して検討するべきというのはもちろんだなー。

ただ、困ったときの問い合わせ先が細かく分かれすぎているのがマジで困る。大体の場合は、そのうちの誰かに相談したら「その問題は別のこの人ですね」と説明してくれはするけど、第一歩で間違えると結構だるいので… ややこしすぎる…
あとは音楽のサンプラーにおける著作権はどうなってるのか個人的に聞きたかったけど、質問コーナーが大人気すぎて聞きに行く暇がなかった。いつか聞いてみたい。

8番出口開発振り返り / 短編ゲームを作るには

スピーカー:KOTAKE氏

8番出口の開発:エンジンはUE5で開発期間は9ヶ月。構想6ヶ月、作成3ヶ月。

・参考にしたゲーム

I'm on observation duty
https://store.steampowered.com/app/1046820/Im_on_Observation_Duty/?l=japanese

おじさんはmetahumanで作ったし、アセットは多め。
アセットで対応できなかった点字ブロック、ドア、異変などは自作した。

Steamは短編すぎると低評価レビューがついたりしてしまう。
で、今回はストア説明に「プレイ時間:15~60分」ときちんと書いておくことで低評価レビュー防止になったのかもしれない。でも、返品率は15%ほどだった。
*聞いてて思ったこと
返品率15%はなかなか高いぞ…!?でもストア説明を読んでゲーム買う人なんて正直数%とかだろうと思っているのでそんなものかもしれない。

ウィッシュリストは公開日で5600、発売前には40000まで増えた。SteamNextFestは不参加。

・短編の良いところ

開発序盤から開発の終わりが見えること。
ちなみにプレイ時間が1〜数時間のゲームを短編と考えている。

・ゲームを短くするには

とにかく要素を削ぎ落とす。

1. 遊びの部分を〇〇だけにする

2. 既存のシステムから要素を減らす

8番出口を作り始めた最初の目的としては、お金が必要になったからというものではあったが、それだけでは完成までたどり着けないので、作りたいものを作るというモチベーションも重要。
なので、自分が好きな地下通路という要素も組み込んだ。

その結果、8番出口のコンセプト:「無限に続く地下通路の不気味さを体験する」が誕生。

開発中は意識してなかったが、オズボーンのチェックリストが似た考え方になってる。

1.転用(Other uses):改変・改良すれば(またはそのままで)、他に用途はないか?
2.適合・応用(Adapt):他にこのようなものがあるか? 過去に匹敵したものは何か?
3.変更(Modify):色・形・音・匂い・意味・動きなど、新しいアングルはないか?
4.拡大(Magnify):大きさ・時間・頻度・高さ・長さ・強さを拡大できるか?
5.縮小(Minify):より小さくできるか?携帯化できるか?短くできるか?省略できるか?軽くできるか?
6.代用(Substitute):他の材料・他の過程・他の場所・他のアプローチ・他の声の調子・他の誰か・異なった成分など、他の何かに代用できないか?
7.再配置(Rearrange):要素・成分・部品・パターン・配列・レイアウト・位置・ペース・スケジュールなどを変えられないか?原因と結果を替えられないか?
8.逆転(Reverse):逆(正反対)にできないか? 後方(前方)に移動できないか? 役割を逆にできないか?ターンできないか?反対側を向けられないか?マイナスをプラスにできないか?
9.結合(Combine):組合わせられないか?目的や考えを結合できないか?一単位を複数にできないか?

https://www.keyence.co.jp/ss/general/manufacture-tips/osborns-checklist.jsp より引用

*聞き終わって思ったこと

正直なところ、短編ゲームを作る参考にはなるが、「8番出口と同じようなバズるものを作りたい!」という人の参考にはならなかっただろうな。
結局、バズったゲームを作った人の振り返りであり、やり方の一部にバズる要素は含まれていたものの、同じことをすればバズるわけではないし…
とは言え、最近売れているゲーム、いや、売れてなくても同様に「大規模ゲームから要素を削ったもの」もしくは「売れてるゲームの要素を差し替えてもの」が多いから、8番出口開発と似たような考え方で、作りたいものを、新規性のあるゲーム性を入れて、短い期間で作れたら、可能性はあるだろうなと思った。
それにつけてもやっぱり作りたいものを作るのが大事だなー。


PICOPARK2開発事例と新作・続編

スピーカー:GEMDROP 北尾雄一郎氏

・PICOPARK2の開発自体はスムーズに進んだ

マイルストーン開発で、3ヶ月毎に三宅さん(開発者)チェック。リアルではほぼ会ってない。コロナもあったし。

ただ、フットワークの軽さと、どちらも開発者ということで上手く働いた。リリース後のパッチも一日で相談、仕様決定、作成、公開申請まで進めるなどサクサク進んだ。

・ヒット作開発者の次回作/続編開発におけるジレンマ

規模は大きくしたい、でも新作も作りたい。マルチプラットフォーム展開もしたい > 一人ではムリ!

まあ、ヒットするしない関係なく、この新作/続編問題は起きるが。

で、このときの開発者の選択肢は3つ。

  • 新作作る

  • 続編作る

  • どっちもやる!

そして今回はどっちもやる!だった。となると今度は選択肢が2つ。それぞれの利点/欠点も挙げると…

  • 自分でやる/チームでやる

    • 個人でできることの限界が存在する

    • NDAとかないから好きなことを発表できる

    • 最悪協力者がバックレる

    • 好きな時間に働ける

    • でも費用が安く済む

  • 外部会社に投げる

    • 基本的にはバックレない

    • 人員を増やしやすい

    • 基本的に土日休み、一日8時間労働なので、土日に急いでパッチ当てて!みたいなのは大変

    • ただ金がかかる!これは成功報酬にするとかで対応できるかも

・会社と協力する場合に気をつけるべきは

  1. 資料やプロジェクトデータを全て共有する

  2. 手放しでやらせない

  3. 協力関係だということを意識する

*聞き終わって思ったこと

ヒット作の続編なり新作はマジで大変そうだよな… 何を出してもやっぱり、ターゲットではないユーザーが遊んで受け入れられなかったり、ターゲットだと思っていたユーザーでもヒット作からの印象が強すぎて思っていたのと違うとか言われそう…
でも、とにかくゲームをリリースするのが一番大事なので、少なくとも開発者が満足するタイトルをリリースするのが大事なんだなーと思った。今の時代だと、文句が出たところはパッチ修正できてしまうし。初動に影響が出るのは厳しいけど、問題をちゃんと修正できれば逆に評価が上がったりすることもある。
あとは、個人開発者でチーム組むとか他の個人に外注すると、マジでバックレることがあるから会社にしっかり頼むのはマジでありなんだろうなー。バックレなかったとしても、ちゃんと契約書を書いてなかったとか、書いてたとしても喧嘩になったりして無駄に時間を取られたりする… うーん、難しい。


ひとりで7年ゲームを作ってきた開発者の生存術

スピーカー:じぃ〜ま氏

スマホゲームのレビューが星4.9、しかも1万件のものもある。すごい開発者です!という自己紹介。
*聞いてて思ったこと
前からファンだったから知ってるけど、やっぱりすごい。

じぃ〜ま氏略歴

2007年:サラリーマン
2012年:雑貨屋
2017年:雑貨屋をやめた。趣味で作ってたTimeMachineがヒットして、専業にすることに。

・スマホで無料ゲームを出すだけで生きて行けている理由は?

ゲームのマーケティングはしてない。PRしてない。イベントも出てない。パブリッシャーもなし。Steam/Switch出してない。

スマホで基本無料のゲームを出しているだけ。

なぜそれでビジネスが成り立っているのか?

> 年に一回ゲームをリリースすると生きられる。

リリースそのものが宣伝に繋がる。
なぜなら新作に過去作へのストアリンクをつけているから。

気をつけているのは「世界観の統一」。その世界は「やさしい終末世界」
これのおかげでスターシステムにできて素材を流用できるしファンも喜ぶ。

あと、リリースしてすぐ売れなくても気にしない。
地道にやっていると、AppStoreは10数回取り上げてくれた。

また、毎年ゲームを出していると、毎年新作でコンテストに出られる。Googleは終わっちゃったけど、出るたびに順位が上がっていった。

・あとは開発の手数を増やすこと

Parsecでリモート作業、Switchbotで出先でPCをONにする。
これで家にいなくてもちょっとした時間で作業ができる。

・なぜイベントにも出ない?

イベントに出ないのは、人と話したりイベントに出ることで自分が消耗することを分かっているから。下手すると数日、月単位で燃え尽きて開発に手がつかなくなるかもしれない。
だから出ない。

・バズ狙いゲームを作るべきか?

どっちでも良い。それよりもやる気が大事。

ソロ開発だと、やる気がなくなったらそこで終わってしまう。

なので、バズりたい!作りたい!ってなったらそれで作る。
バズりそうだけど作りたくない!ってなったら作らない。

・テキスト主体のゲームは欧米では受けないのでは?

答えとしては「そうでもなかった」
パラサイトデイズは英語対応もしたら、日米同じくらいのDL数になってる。

・アセットを使うのはたまに危険

スマホのOSのアプデは頻繁で、アセットがそれに対応してくれるかどうかはわからないため。
なので、セーブ管理ツールとか重要なところはやらない方が良い。

・2Dスマホゲーをみんなも作ろう!

  • 最適化の手間が少ない

  • DLサイズが小さい。海外の回線だと不安定なものが多く、大きなサイズのDLは失敗・敬遠されがち。

  • プラットフォームは参入がめんどいがスマホは楽。

  • コンパクトでもアイデア次第で人を楽しませられる。

・あとは、健康大事!

以前はすぐに目が痛くなった。特にドット絵を描いていると目が乾く。ので、AR開発で目の健康を守れている。MetaQuestの拡大機能で楽になった。が、なかなか物理的に頭が重い。

・ひとりでやることのオススメや気をつけること

  • 物作りの楽しさを味わえる

  • 足りないスキルを身につけられる:作者は数年でドット絵パワーがだいぶ上がったりした。

  • SNSはほどほどに:闇が広がってたり、そうでなくても他の開発者が順調に開発をしていてぐぬぬとなるから。

  • モチベーションはとても大事:ひとりだと特に。なのでガンプラ作ったりしてモチベーションをキープする。作者の開発環境はテーブルが2つあり、片方がPC、もう片方がガンプラエリア。

*聞き終わって思ったこと

相変わらずトークが面白い。この人だからあのゲームを作れるんだな、というのがよく分かる。
実際ドット絵の向上が凄まじい。最初は正直グラフィックから余り人にオススメしても触ってくれないかも、というのがあったのだが、最近のタイトルは女の子が普通にかわいいのでジャケ買いするユーザーもいそう。
そして大事なのはグラフィックではなく、順調にどのタイトルも新しく、かつ面白いということ。
でも主体はゲーム性よりも世界観とテキストなので、ローカライズが大変でグローバルにリーチするのはそういう意味で大変そうだな…
基本無料ゲームだが、課金するととにかくゲーム内キャラや作者が感謝してくれるので気持ちよく課金してくれる。
あと、何の見返りもない「投げ銭」機能があるのも良い。
って、もはや聞き終わって思ったことではなくてファンの感想だけど、まあいいか。

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