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タスクとワーク

タスク(task)は、雇い主のオーダーに従って業務を処理する仕事。具体的な命令があることが前提だ。「リンゴを24個ずつ箱に詰めてください」とか。従事者は「時間」を単位に「自分が労働する」を売る。作業される場所も与えられる場合が多い。

(イマドキは「自分の家で」も増えてきてきているけれど)

宅急便のセールスドライバーさんも、一見、タスクに働く人に見えるけれど、機械のように「荷物を届ける」では成り立たない仕事らしい。相手は留守かもしれないし、再配達の時間もデザインしなければならない。その日に担当する荷物を配達する順番、どこにクルマを停めるのかも、状況によって大きく変化する。

だから、こういう仕事はタスクというよりエッセンシャル・ワークなんだろう。看護師さんやお医者さんと同じ。建物の建築や修復作業のために足場を組む鳶さんの仕事も、とてもじゃないがタスクにはできないらしい。

エッセンシャル・ワークの「ワーク(work)」

ワークにもオーダーはある。オーダーはあるが、そのオーダーを処理するためには従事者に業務をデザインする能力が要求される。日ごと、時間ごとに変化する状況にも対応していかなければならない。だから「資格」や「長い経験」があることが要求されもする。

今日残るワークはマニュアル化が難しく、つまり、言語化、数値化、図式化が難しい業務だ。宅急便の荷物をエンドユーザーに届ける仕事がそうで、同じ「配達」でも、長距離輸送は決まった配送先に荷物を届ける色彩が強いので、だからAIとGPSによる無人運転が検討されている。ビルや工事現場の警備も同様だ。ガード・ロボットが働き始めている。

よく検索に引っかかる「オックスフォード大学の調査によると」によると、あと10年ほどで全仕事の49%が無くなるそうだ。何をもって「49%」なのかはさっぱりわからないが、おおむねのところは、この方向だろう。

「憶えて慣れる」のマニュアル・レーバーは危ない。つまりタスクだ。

同じ出版社勤めでも作家さんについてる編集や校了のみなさんは、当分安泰かもしれないけれど、経理部などの一般事務職は難しいかもしれない。フリーランスの編集や校了さんの助けを借りての作家さんの産直が当たり前になって出版社ごと、過去のものになっちゃうのかもしれない。3人くらいのユニットなら、出版不況でも付け入る隙はあるのかもしれない。つまりタスクの助けを借りなくともやっていける「純粋work」の時代の到来だ。

タスクはAIとロボットが肩代わりする。彼らは電気だけ食わせておけば24時間、365日働く。有給を要求することもない。たぶん労働者に冷徹な産業は、こちらを選ぶ。

で、使える人は個人でも使いこなしていく。やっぱり「純粋work」の時代の到来だ。

これから、この流れを阻止しようったって難しいだろう。「楽楽清算」だって「奉行クラウド」だって、この方向だ。

楽ちんだからと「チャットGPT」を汎用すればするほど、タスクが必要な時代は終わりに近づいていく。もうすぐ「組織ワーク」も無用の長物だ。

以前に比べれば「個人」は大切にされるようになるのかもしれない。でも「個人の責任」が明確になっていく時代でもある。

最近、有人のレジだと、レシートに、今、レジを打ってくれた人の名前が印字してあったりする。

もう間も無くだ。