SKETCH
それにしても、スケッチっていうのは難しい。見えているのに、その「見えている」を、受け手に正確に伝える絵が描けないわけです。美大に通ってたときにね。ある教授が、未だに「空」を正確に描けた人間はいないって言ってましたけど、言い得て妙です。ターナーの空だって、あれは絵の空で、本物とは全然違いますもんね。本物の空はあんなふうに見えない。
「そう…「水」も描けない。
アングルの「泉」っていう作品があるでしょう。あれだって少女は完璧描写な感じですけど、水瓶から滴り落ちる「水」は、あれじゃあ「棒」。かの巨匠にしてそうです。
(少女に比較して「水」にこだわりがなかったことにもよるんだと思いますが)
そんな感じですから、ましてや「時代」をスケッチしようなんてね。どう考えても至難です。
でもね。スケッチしたい…「観察から入りたい」「観察結果に従えたい」と言い換えてもいいかな。
人間、しばしば印象派ですからね。正確にスケッチする前にざっくり掴んであとは主観的な捏造だったりする。その習慣を改めるだけで、世の中、ずいぶん風通しよく過ごせるようになるような気がします。
たぶん、SKETCHが面倒だから、ざっくり掴んで捏造なんでしょうが、こういう体質をそのままにしていることが実生活における判断などに影響を与え、やがては命に関わる仕儀に至る…そういうこともありますからね。
怖いんですけどね。
※ 冒頭は奥さんのスケッチ画