ハッピー・ライフ・プロジェクト(10)ひとつ、事が、済んだ。肩の荷はおろせるか?
両親の介護(ハッピー・ライフ・プロジェクト)について、妻からアドバイスをもらったのでメモとしてまとめます。(前半、ほぼ、妻が話しており、夫は聞いております。後半は、夫もすこし発話しております)
出来ないで、ずっと置いてあるもの
【妻】年取ってくると、あれやらなくちゃ、これやらなくちゃと、気ばかりあせるんだけれど、結局、体力がついてこない。
そういう理由で、「出来ないで、ずっと置いてあるもの」がある。
ハッピー・ライフプロジェクトの中で、それを聞き出し、やることをサポートしてあげることが、大事なことだと思う。
聞くための表現
【妻】例えば、「聞くための表現」としては、「何か気になっていることある?」とか、「やっておきたいことある?」と聞いてあげるとよいと思う。
そうすると、たいてい、
・あの人にあっておいたほうが良いと思う
・元気なうちに、話ができるうちに、会っておきたい人がいる
・あるいは、大事にしてくれるんだったら、これを形見わけであげたい。
・ずっと借りていたんだけど、(借りてたつもりだった)ので、これをお返ししたい
・これ、あの人が好きだったからあげたい・・・など、思う事が沢山あって、それを実現させてあげたらいいなと思う。
それによって、「肩の荷がおりる感じがする」と思うのね。
【妻】気になっていると、ずっと、頭のなかでそれを思っている。
「あれやっておけばよかったのに。。。」と、体力がなくなって、自分で出来なくなった時に残念に思うんじゃないかしら。
それをサポートしあげることは、若い人にとっては、結構、簡単だったりするかもしれない。
気持ちがすっきりして、宿題を抱えている感をなくしてあげたら、前向きに/ハッピーに過ごせるようになるんじゃないかな?
そういう手助けは、家族としては、簡単にできることも多いかもしれない。気になっていたとしたら、心の衛生状態も良くなると思う。
私の母の例だと、
【妻】大したことじゃないんだけど、ある御三味線に関して、「これ、お借りしてたのよね」とずっと言っていた。でも、それをお借りした相手は、とうの昔に亡くなっているの。
でも、「この御三味線は、あそこのお弟子さんに返してさしあげたほうが良いと思う・・・」と、ずっと言っていて、
「分かったわかった、連絡するから・・」と言って連絡して、お弟子さんに引取りにきてもらったら、すごく安心して、よかった・よかったと、一件落着と言っていた。
また、この着物をAさんから「もう着ないから・・」ということで頂いたんだけど、「あそこには娘さんがいて、娘さんがもしかしたら着るかもしれないし、お母さんのものだから、返してあげたほうがいいと思う・・・」と言って、それも、その娘さんに連絡をして、取りに来てもらったの。
その人にとっては迷惑な話なのかもしれないんだけど、私の母は、それがとても気になっていて、お返ししなきゃ・・・と心残りだったみたいなのよね。それでちょっと、ホットしていたようなところがあったわ。
ちょっとしたことなんだけども、やっぱり本人にとっては、気になることだったんだろうね。
ひとつ、事がすんだ・・・と思って、ほっとすると思うのよね。
【妻】言いたかったこと、言いそびれていたことがあると、すごく気になるらしい。なので、それをホッとさせてあげたいなと思った。
人生、もうすぐ終わりかな・・と思った時に、やりそびれていたこと、言いそびれていたことは、クリアにしたいんだろうね。人間としてね。
あの人に、ひとことお礼を言いたかったのに、言いそびれちゃった・・・・とかあるじゃない。それを言いたいとか。
一言、おめでとうって伝えたかったのに、言いそびれてたとか。
その実現をサポートしてあげることが、家族としての、良いサポートのしかたなんじゃないかな
【妻】そういうのって心残りになるから、その実現をサポートしてあげることが、家族としての、良いサポートのしかたなんじゃないかな?・・・と思うわ。
【夫】言いそびれたこと、やり残したことは、「感謝」を示すとか、(感謝をこめて)モノを返すとか、それが心のこりにならないようにする・・・ことがポイントかな。
【妻】そうだと思う。
さらに、例えば、「自分が所有して大事にしているもの」を、もう体力ないから身に着けられないし、それを身につけてどこかに行くということも、できなくなってくるじゃない。
もう宝石も着物も、何にもいらない。もし、それを、すごく好きだって言ってくれた人がいたら、その人にしたもらったらいいな・・・と思うわけじゃない。そのモノも生きるし。だから差し上げておきたい。「大事にしてね!ってさしあげたい」と思うんだよね。その気持ちはすごく分かる。
【夫】それが、本質になってくるんだと思うね。ファミリー・アイデンティティの次シリーズで、「うけつぐ」に触れようかと思ってるんだけど。
ファミリー・アイデンティティをつくるワークショップを、子どもが受けついでくれることが、一番のポイントになると思う。
大切にしていることを、次の世代がうけついでくれるのが、自分の「在り方みたいなもの」を、正当化するような気がするな。
形見わけは、自分が大切にしてきたモノを、物質として形見わけていくんだと思うんだけど、それが物質でなく、思想・価値観・考え方という事かな。ファミリークレドとか、ファミリー・アイデンティティとか、家訓とか、半ば押し付けがましく残っていてしまうかもだけど。
安心して逝ける
【妻】安心して逝ける・・・という事なのかもしれないね。
昔みたいに、子ども/子孫を拘束するような家訓は、あんまり賛成できないけれど、でも、こういう人であってほしいという(理想を理解してくれる人であってほしい)のはあるかもね。
【夫】最後はみんな、認めてほしい・・・んだと思うよ。
何かのラジオ番組で聞いたんだけど、病院で看取りをしているお医者さんのインタビューで、最後に人間が発言することが2つある。
ひとつは感謝を示すこと、もう一つは、私のことを忘れないでください・・という発言だと聞いたことがある。
【妻】人間は死して名前を残す・・という事かしら?
【夫】誰かに存在を・・正当化/認めてほしいんじゃない?生きた証を。
【妻】誰かが言ってたね・・象は、象牙をのこし、●●は、●●を残し、人間は名前を残す。
【夫】文字がのこって、文化が生まれたからそうなったのかもしれないけどね。
【妻】でもそれって、とても男性的な考え方よね。
【夫】そうだと思う。
【妻】名誉欲ってのがあるんじゃないかな・・って思う。それって。
【夫】男性は、そんなふうに、正当化しないと前に進めない生き物だと思うよ。
【妻】承認欲求だよね。
【夫】承認欲求です。
何か気になることはある?
【妻】このフレーズは、それを確認するフレーズだよね。安心したいんだと思うんだよね。ほっとしたいと思うとか、よかったと思いたいんだろうね。
【夫】そうだね。そうなると、普段ぼくらが効いている安全・安心とは、違う「安心」だわね。
【妻】生活におけるセキュリティ上の安心ではなく、安堵といったほうが良いのかもね。
【夫】それは、TODOが終わるとか、そういうレベルなのかね?
三味線と、着物と、伊勢崎町
【妻】凄く気になっていることを、繰り返し思い出しちゃうんじゃないかな?うちの母が気にしてたのは、三味線と、着物と、伊勢崎町だね。
【夫】銀行口座?
【妻】そう。ほんのちょっとしか入ってないよ。でも、あれだけ解約しそびれたって、ずっと言ってたよね。私も忙しいからさ、そこまでわざわざいって、数万円を解約しにいくの大変じゃない。
分かったから、覚えてるから、私メモしたから、ちゃんと行くからと言ってるのに、「あれ/銀行口座がまだあるから・・と」
あれって、もともと、東日本銀行の鎌倉駅前支店だったのよね。そこで、生活費の出し入れのための、ちょっとした口座をつくってたらしくって。それが閉鎖しちゃったという知らせを、まだ元気な時にうけとっているのよ。
それが伊勢崎町支店と一緒になったというので、すっごい気になってたみたいで、私は体力がないから、もう行かれないから、あなた行って解約してきてちょうだいっていって、でもそんな事をしているうちに、入院しちゃったので、委任状がとれなくなっちゃったの。もう字もかけないし。こまったなと思っていたら、印鑑証明が必要だっていったから、印鑑証明がみつからなくて、大変で、印鑑証明どこにしまったの?って聞いても、分からない・・・とか言われて。もうだめじゃんと言われて・・・
印鑑は、整理してもらったほうがいい。
【妻】印鑑は、整理してもらったほうがいいよ。使っていない印鑑は処分してもらって、どの口座に、どの印鑑がつかわれているか、キチンと整理しておかないともう分けわからないからね。
あそこに行きたい・・・
【妻】〇〇に行きたいって、旅行だけじゃなくて、すっごい暫くいっていない誰かのお墓参りとか、すごくいきたいと思ってたけど、行きそびれていた所とか、昔、子どもの頃によくなじんでた所なんだけど、しばらく行ってなくって、あそこどうなったんだろうと、気になってた場所もあって、一回ちょっと行ってみたいわとか・・・というのが、あるみたいなのよね。人には。
気になっているところに連れて行ってあげる、そこがなぜ気になっているのか、本人にしかわからないだろうし、
何で気になっているのかは、そんなのどうでもいいのよ。本人が気になっているんだから、それはそれを認めてあげて、「じゃあ、行ってみようか・・確認しに行こうか・・」って言ってあげるといいかなと思う。
「あそこの通りの、あの桜の木は、どうなってるのかしら?」とよく言ってたわね。どうでもいい事だと私はおもうんだけど、でも、時々おもいだすんじゃない?
「あそこのあの木は、元気なのかしら、しげっているのかしら・・?」とか思うんじゃない。
何かで引っかかるものがあるんだね。
【妻】昔、良く言っていたのは、うちの母が日本舞踊のお稽古をやってて、お稽古場を借りてたらしいの。借りて、そこで教えてたらしいんだけど、そこの大家さんがすごくいい人で、すごいお世話になったんだって。
そこのおじちゃんに会いに行きたい・・って言っていて、なんかの時に「ここ、おじちゃんの家の近くだと思う・・って、急に言い始めて、中学生くらいの私をおいて、私いってくるから!っと、急にでかけていっちゃったの。かえってくるから、ここにいなさい・・と言われて。
会いにいって、そのおじちゃんは・・・、そのおじちゃんという人は、もうすごい御爺さんになっていて、寝たきりでもうろくしちゃって、でも行って話をしたら、気が付いてくれたんだって。●●ちゃんだねって。昔、キセルをお別れのときにプレゼントしてたんだって、昔の人だから、キセルを吸っていて。
それを出してこいって、(そのおじいさんが)おばさんに言って、出してきて、これこれって言って、しばらくぶりにキセルを吸ったんだって。で、それからしばらくして亡くなったらしんだって。会えて良かったって言ってた。あの時に会いにいかなかったら、会えなかったと思う。おじちゃんも喜んでくれたって。
捨てられないものも、何かの想いでなんだよね。
【妻】終活カウンセラーに近いものがあるかもしれないけど、そういうモノ/情報を引き出していくのは、金銭的なものではなくって、その人個人の価値なんだよね。それを理解してあげる寄り添ってあげるのが、大切なんじゃないかなと思う。
【夫】どこから・・・どこからビジネスをつくろうかねぇ?
【妻】笑!だから、どうやって寄り添うか・・というカウンセリングをしてあげる事じゃないかな?と思うんだけどね。
だから、どうしていいか分からないんじゃない。若い人はさ。周りにいても。年寄りがだんだん愚痴っぽくなるとか、体が動かないとか。痛いの、かゆいの、ブーブーいうわけじゃない。めんどくさいなと周りで、若い人は思うわけよ。
今まで、ぴんぴんしているのを見て育っているから、子どもとしては、なんでこんなになっちゃったんだろう(老いちゃったんだろう)とショックだよね。自分の親が老いていくのを見るのは、ショックだと思うの。どんな人でも。認めたくないという気持ちも、子どもには、あると思うのね。
いつまでも元気でいたほしいという、理想の親ってのがあって、それに反して、絶対に人間は衰えてくわけだし、何でというジレンマがおきて
それを理解してあげなきゃいけないし、寄り添ってあげなきゃいけない・・といのもあるんだけど、若いから、どうしていいかわからないだよね。わかんないから。
でも、どうしていいか分かんないところを、例えば、こういう方法もあるよ?っと言ってあげたら、すごく良いアドバイスだと思うんだよね。そこがビジネスなんじゃないの?
【夫】やるとしたら、ファミリー・アイデンティティ・カウンセラーを創り、それは一生使えるスキルなので、パートナーシップ期で学ぶか、インキュベーション期で学ぶか、サステナビリティ期で学ぶか・・・
サステナビリティ期に、介護モードというのもあるし、子どもを応援するというモードもあるし、夫婦のお互いの応援というモードの3つに分かれると思うんだけど、
全般的に、幅広く学んでおきましょう・・・というのであれば、キャリアカウンセラーを同じような感じだね。
【妻】私も、もっと前に知っていればよかったなと思うし、今自分が、もう10年も、あういう年寄りに付き合っていて、なんとなく、だんだん分かってきた感じで、10年前に知っていれば、もっとスムーズだったような気がする。わかんなかったもん、何いっちゃってるんだろう・・ってのがあったからね。