以下は、戦争研究所(ISW)の9月15日付ウクライナ情勢評価報告から、その記述の一部を引用し、それに日本語訳をつけたものである。
日本語訳:
ロシア国防省は、北アフリカにおけるワグネル・グループの活動を自らに取り込もうとする取り組みを続けており、航空宇宙軍(VKS)元司令官セルゲイ・スロヴィキンをこの任務に就けた可能性がある。ロシア側情報筋は9月15日、ワグネルと関係があり、すでに解任された元VKS司令官セルゲイ・スロヴィキン上級大将がアルジェリアにいることが分かる写真を投稿した。ロシア国営報道メディア「コメルサント」は、スロヴィキンと近しい情報筋の話として、この旅行は、スロヴィキンがアフリカでの何らかの活動を監督する役割に任命された可能性があることと関連している可能性があると報じた。複数のロシア軍事ブロガーは、スロヴィキンの新たな公式な役職である独立国家共同体(CIS)国防相会議・防空問題調整委員長というのはまったく名ばかりのものだと主張した。また、これらの軍事ブロガーは、スロヴィキンがこの地域におけるワグネルのアセットと任務を引き継ぐ可能性に関して、憶測を巡らした。スロヴィキンのワグネルとの関係、彼の部隊指揮経験を踏まえると、ワグネルの任務を体制内に取り込もうとするロシアの取り組みに、スロヴィキンが関与している可能性はある。一方で、ロシア国防省がこれらの取り組みに関する直接的な指揮をスロヴィキンに任せるつもりであるかどうかは不明だ。ロシア国防次官ユヌス=ベク・エフクロフ大将と参謀本部情報総局(GRU)の要員が、中東とアフリカにおけるワグネルの活動を体制内に取り込もうとする取り組みに、熱心に関わっていることも伝えられている。ウォール・ストリート・ジャーナル紙の報道によると、エフクロフを含む複数のロシア当局者が、トブルクに拠点を構えるリビア国民軍司令官ハリファ・ハフタルとここ数週間で会談を行い、ベンガジ港もしくはトブルク港へのロシア軍艦の入港許可を求めたとのことだ。報道によると、エフクロフは、リビアにいる「民間軍事会社(PMC)」をロシア国防省統制下の部隊に置きかえる目的で、ここ数カ月の間に何回かリビアを訪問したという。クレムリンは、地中海に面したリビアの港湾へのアクセスを確保しようとする長きにわたる政治工作の再開を試みるのと並行して、リビアにおけるワグネルの活動を自身の支配下に置く取り組みも試みている可能性が高い。