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安全装置は外しとけ

アンブッシュで伏せていたトレンチの脇を敵影が横切っていく。慌てて立ち上がりブッシュを隔てて、その敵影を平行に追いかけ、切れ目に差し掛かり、互いに見合わせたものの数コンマ秒の瞬間。指にかけた引き金にどれだけ力が入っていたかもわからないくらい力が入っていたと思うが、まったく微動だにせず、そうこうしてる間に、見合わせた敵に銃弾を撃ち込まれ、そのまま小高い崖の下へもんどりうって落ち、かすかな水音の中で、しばし動けず倒れこんでしまっていた。
そうだ、大馬鹿者、安全装置がかかったままで引き金を思い切り弾こうとしていた救いようのない大馬鹿者だったのだ。これはある日のサバゲ―のワンシーンなのであるが、その時に、どうもアバラを痛めたらしく、折れてはいないだろうがヒビが入った状態と後で医者に診断されてしまった。
痛くて咳も出来ず、もうじっとしているしかない状態の中、招待されて行かねばならなかった国立演芸場へ車を走らせた。

当時まだ立川ボーイズ時代だった志らくと談春さんに招待されて楽しませてもらったのだが、落語の最中、ずっと笑いの中のアバラ痛みと闘いつづけ、お願いだから笑わせないでくれと心のなかで叫んでいた。落語で笑いに来てるのに、笑わせないでくれとは言語道断だが、涙が出るくらいの悲痛な叫びだったのだ。

終わって楽屋を訪れると、ステージから客席はほんとによく見えるらしく、PANTAさんが険しい顔で見ていているので、どうしていいかわからなくなってしまいましたと言われ、いやいや、これこれこういう事情で、いま肋骨を痛め、とてもそのステキな笑いに耐えられない状況なのですよと弁解しきりの国立演芸場のひとコマだったことを思い返していた・・・♪

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