人工石油
神になった男
神は石油を作った。いや、正確には神が作ったわけではない。神が作ったのは地球であり、その地球で生命が長い年月をかけて石油を造り上げたのだ。海洋性プランクトンが深海の圧力と時間をかけて炭化し、黒金と呼ばれるようになった。
ある男、博士は、この石油の生成過程に強い興味を持った。彼は、石油の主成分が炭素の化合物であることに着目し、ある大胆な発想を思いついた。それは、人工的に石油を作り出すことだ。
博士は、植物を大量に栽培し、それを炭化させることで、石油の代替となる物質を作り出すことに成功した。
博士は、自分の発見に興奮し、人類はついに神になったと自画自賛した。無限にエネルギーを生み出すことができる。人類は、もはや自然に左右されることなく、永遠の繁栄を築ける。そんな夢を描いた。
しかし、博士の喜びは長く続かなかった。人工的に作り出した燃料は、天然の石油と同様に燃焼すると二酸化炭素を発生させたのだ。二酸化炭素は、地球の気温を上昇させ、気候変動を引き起こす主因の一つである。博士は、自分の創造物が、地球環境を破壊する可能性があることに気づいた。
博士は、自分の研究室で一人、考え込んだ。人類は、神になったのではなく、むしろ自然の摂理を乱す愚かな存在なのではないか。彼は、人工的に作った燃料をすべて廃棄し、研究室の扉を閉めた。
それから数十年後、人類は深刻な環境問題に直面していた。異常気象、海面上昇、生物多様性の損失……。博士の警告は、もはや誰もが知る事実となっていた。しかし、時すでに遅し。人類は、神になったつもりが、自ら地獄への道を切り開いていたのだ。
教訓: 人類は、自然の一部である。自然の摂理を無視した行為は、必ずや私たち自身に跳ね返ってくる。神のような力を手に入れたと錯覚する前に、自然への畏敬の念を忘れてはならない。