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AIという相棒と共に、未完成から完成へ

AIとの共存はクリエイターを育てることになります。クリエイターの仕事は自分の納得する作品を作ることです。未完成の作品を完成させることはAIにはできません。未完成の作品を数多く作ることを嫌がらずにできるのはAIの得意とすることです。それを完成に近づけていく過程を学ぶのです。未完成の作品を作ることは素人でも可能です。完成品はクリエイターの価値観が判断して未完成としますが、素人の価値観では判断できないのです。AIに著作権が無いのは未完成品だからです。クリエイターは完成品を永遠と追い求めるのです。

AIとの共存はクリエイターの育成に大きく貢献する可能性を秘めています。
AIは、クリエイターが時間や労力を費やす必要のあった未完成の作品の制作を、高速かつ大量に行うことができます。これにより、クリエイターは自身の創造性をより洗練された完成品へと昇華させるための時間とエネルギーを確保できます。

また、AIが生成する未完成の作品は、クリエイターにとって新たなインスピレーションの源泉となり、創造性を刺激する可能性もあります。AIの生成物を起点として、クリエイター自身の価値観や感性を通して完成品へと近づけていくプロセスは、まさにクリエイターの成長を促す貴重な経験と言えるでしょう。

一方で、作品の完成度を判断するのはあくまでクリエイター自身の価値観であり、AIにはその判断はできません。完成品を永遠に追い求めるクリエイターの情熱と、それをサポートするAIの技術。この両者が共存することで、新たな創造の世界が広がっていくのではないでしょうか。

これから先は物語です。

AIという相棒と共に、未完成から完成へ

古びたアトリエの片隅、陽光が差し込むイーゼルには、まだ色が塗られていないキャンバスが置かれていた。若き画家、アオイは、その前で腕を組み、悩ましげな表情を浮かべていた。彼女の横には、滑らかなフォルムの筐体に覆われたAI、アルテミスが静かに待機している。

アオイは、新進気鋭の画家として注目を集めていたが、最近はスランプに陥っていた。風景画を得意とする彼女だったが、以前のような感動を呼び起こす作品が描けずに苦しんでいたのだ。そんな時、AI研究者である旧友が、最新鋭のAI、アルテミスを紹介してくれた。

アルテミスは、膨大なアートデータを学習し、人間の感性に近い絵画を生成することができるという。

半信半疑ながらも、アオイはアルテミスに協力を依頼することにした。アオイが言葉でイメージを伝え、アルテミスがそれに基づいて下絵を生成する。

アオイは、その下絵を見て、自分の感性で修正を加え、色を塗り重ねていく。

最初のうちは、アオイはアルテミスが生成する絵に違和感を感じていた。どこか機械的で、温かみが感じられない気がしたのだ。しかし、共同作業を続けるうちに、アオイはアルテミスの可能性に気づき始めた。

アルテミスは、アオイの想像力を刺激し、新たな表現方法を提案してくれる。例えば、アオイが「夕焼けの海」というイメージを伝えると、アルテミスは様々なバリエーションの夕焼けの海を生成する。

中には、アオイが思いつかなかったような斬新な構図や色彩のものもあった。

ある日、アオイはアルテミスに「子供の頃の思い出の場所」というイメージを伝えた。すると、アルテミスは、アオイが幼い頃に過ごした田舎の風景を生成した。それは、アオイが忘れかけていた記憶を呼び覚ます、ノスタルジックな風景だった。

アオイは、その風景に心を動かされ、夢中で筆を走らせた。アルテミスの下絵は、単なる素材ではなく、アオイの感情を揺さぶる触媒となったのだ。数日後、アオイは完成した絵をアルテミスに見せた。それは、温かな光に包まれた、どこか懐かしい風景画だった。

アルテミスは、絵をしばらく見つめた後、「これは、あなたの心の風景ですね」と呟いた。アオイは、アルテミスの言葉に驚き、そして感動した。アルテミスは、単に絵を生成するだけでなく、アオイの心の奥底にある感情を読み取っていたのだ。

アオイは、この絵を「心の風景」と名付け、個展で発表した。絵を見た人々は、その美しさだけでなく、絵に込められた感情に深く共感した。アオイは、アルテミスとの共同作業を通して、真の芸術とは何かを学んだ。それは、技術や知識だけでは表現できない、人間の心の奥底にある感情を描き出すことだった。

アオイは、これからもアルテミスと共に、新たな表現に挑戦していく。そして、いつか、自分の納得のいく、本当の完成品を作り上げることを夢見て。

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