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snafu_2020
角川歌壇で掲載された短歌をこちらに。
角川歌壇に投稿して掲載された歌をこちらに掲載していきます。(上が新しいものです)
大股の一歩でまたぐふりをして見えない土に生む水たまり
バースデーソングながれて店内の照れてるひとがちょうど見えない
プレゼンの通し練習したいので見守る上司をお願いします
水底に張り付いたまま歌ってるように揺れてる去年の枯れ葉
結末を知ってる映画をなんどでも見るようにまた種を埋めよう
急流に抗いながら浮かぶ葉を昨日も見てた まだ大丈夫
僕らから影を取れるのならば取れまぶしさ強く切り立つ八月
嘘が下手そうでやわらかいコーデュロイ父の両手の手触りがする
午後四時のどっちつかずのくもり空みたいに笑っているから平気
文庫本を読み終えるころ車窓には世界に正しく傾く陽射し
しあわせの形を残しておくようにジンジャーエールの瓶を並べる
カレーやの先にもカレーやがあってカレーの匂いがする夕まぐれ
もう少し優しい嘘で生きるから丸いレンズの眼鏡を選ぶ
一本の支木として君といる間に言えた言葉であった
退職を切り出すときに右上に架空の俺がもう一人いる
猫舌の上司がすするラーメンを横目に胡椒の原産地を読む
くっついたビニール傘を開くとき俺の羽音が銀河に響く
玉ねぎを一枚一枚剥いでいくわたしはあなたのわたしではない
この街にむりやりねじを巻くようにマックのMが回る朝焼け
陽のあたる道を一人で歩くとき風はしばしば追い風になる
信号が滲んできれいな赤だよと誰に言えばいいのかぬるいコーヒー
あなたには見せたくはないすっぴんをウーバーイーツに平気で見せる
殻の中外の世界をミュートしてアサリは何を聞いているのか