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塔2023年10月号若葉集より(好きだなと思った10首)
塔の会誌を読みながら、ああいいなと思った歌に印をつけています。印をつけただけだと忘れてしまうので書き写すようにしました。こちらではそのうち10首を紹介します。
夕映えを眩しみながら帰りゆくけふの無傷を恥とも思ふ/浅野馨
「男子」とふレッテル重し学校でよく叱らるるほうの括りで/林陶子
からっぽの郵便受けの奥底で夜露に濡れてねむる右耳/河上類
手のひらに優しい闇を含ませて窓の外へと蜘蛛を放した/初夏みどり
モツアレラやズッキーニなどない頃の大食堂の皿の煌めき/奏樹
難聴の患者になりて点滴の無音聞いてる桜の雫/藤島優作
水曜は娘二人がやってきて家がちょっぴりふくらんでいる/三好碧
ここに来てここに座れどもう会へぬ天神川にホタル飛び交ふ/森田敦子
録音を文字に起こしてゆくときに細部に凝ればはるかな旅路/吉村おもち
食卓の塩や胡椒に囲まれて母の写真は父を見ており/丸山かなえ