ダージリン・シッキムの山旅③ ~カルカッタ 悪党税関 のさばりぬ~
カルカッタにつく。インドが押し寄せてくる。パスポートチェック、税関、深呼吸して”さぁ、街へ!”となるわけなのだが、今回は税関で大変な目に合ってしまった。
別に悪いものを持ち込んだわけではない。荷物がちと大きかったのだ。子ども連れということで、狙われてしまったのだ。通常の手続きもしないで、別室へと連れていかれる。
「さあさあ、マダムと子供さんたちはこちらにお座りください」
二人の男たち(れっきとした空港の係官だ)の物腰は穏やかなのだが…。
「大きなザックの中身は一体何かね?」
「食糧と衣類、なるほど」
「だが、多すぎはしないかね」
「いやいや、開けるにはおよばない。」
一辺が50センチ、厚さが7センチ程もあるやたら大きいだけの台帳を広げ、片手にパスポート、片手にボールペンでポーズをつくり、何やら書き込もうと見せかける。挙句には「面倒が嫌なら50ドル払え」と、何度も”May I help you?"を繰り返しながら要求する。
日本時間の午後11時をとうに過ぎて、子どもたちは眠くてたまらない。入室当初は泣いたりわめいたりトイレに行ったり気が気でなかったが、雰囲気を察してみんな我慢している。
「申告するものなんかなにもないよ。見てくれ!」と、荷物を開けようとする手をとどめて、「いやいや、50ドルでいいんだよ」の押し問答。こちらには1ドルだって払う筋合いはない。
その間に、インド人旅行者が何組かやってくる。彼らは果物や植木の持ち込みでケチを付けられてるようだ。でも数分で帰っていく。それに比べて我々は…。早く落ち着きたい。身体を横にしたい。
結局1ドルも払わなかった。ただ、問答の間にボールペンとライターを2個せしめられた。あとで気づいたのだが、電卓が2個なくなっていた。
苦しい1時間半だった。