夏バテ
昨日美容院に行ってやたら私の髪を紐でしばっているなこの人、と思っていたら、そうかパーマをかけにきたんだと理由がわかり、ああこの人も暴かれそうな息をしているのだなとなぜだかほかのことを考えてしまった。というのも、この人、というのは九州出身の美容師さんで、東京にもう8年もいるのにいまだになまりが消えないおもしろい動きのはぎれだった。腕もいいしいっそこのまま私の頭をキャンバスにしてくれたらいいのにと思っていたが、私も美容師さんも食欲が優って延々と食べ物の話をしていた。途中からほかにも客がいるのに、九州なまりとラ行の活舌が苦手な私のコンビが迷惑じゃないかなと控えていたが、結局全話のピリオドは食べ物話で打たれた。
いろいろと九州の食べ物、食べ方とか教えてくれたけど、酔ったような髪が形ばかりのものになって入れ替わってきたので、1つ以外全部すっ飛んでしまい、その唯一残った単語はすき屋の「チーズ牛丼」だった。今日食べようと思ったが食べれず仕舞いで、明日もたぶん食べれないだろう。後ろをくるっと向いて猫の様子にならないとダメだと思いつつ、明後日は食べよう、食べて「はじめて牛丼屋で牛丼以外のものを頼んだ……アッ……牛丼ですね」と露の玉のようなくだらないツイートをしよう。だが私は夏バテ。牛丼もいいが、弁当半分残して、桃のゼリーと、豆腐屋さんのつくった牛乳寒天、というややこしいものをツルっとしながら、globeの「FASE」を聴きながら、部屋でしゃべれない形になっていたい。