島らっきょうの香ほのかに残る土
島らっきょう。好きなんですが、問題はあの強い香りが、食べた翌日までも口内に残ること。どんなに歯をみがいても、口を漱いでも、息さわやかスプレー使っても消えません。それほど強烈です。晩酌ビールのアテに最高ですが、翌日、人前に出る予定があれば泣く泣く控えます。
明日は何も予定がない、という晩は待ってました、つるつるピカピカの白肌らっきょう君の出番です。削り節をまぶし、醤油をかけまわしてバリボリと。少し胸焼けがしますが、そこは後発の冷たいビール君が、ミゾオチを通りかかるあたりで、「まあまあ」とうまく収めてくれるんです。ありがとうビール君。家庭や職場に1人は欲しい人材です。
だから、島らっきょうの収穫に行くのは、晩酌のアテをゲットしに行くのとほぼ同義。えへ。えへへ。きっとニヤけているのではないかな。
で畑に到着。5月の風に乗って、20〜30メートルくらい先から、島らっきょうが香ります。でも収穫はけっこう大変。長いヒゲ根が地中に広がって、土をしっかりつかんでいるんです。葉をちょっと引っ張ったくらいでは抜けません。
でもまあここはゆったりと構えて。実は相手もこちらを見ています。ハンパな奴には抜かれてやるもんかと思って見ているんです。だから焦りは禁物。
まずはウネの端にバンキョしている、ちょっとエラそうならっきょう君の葉(ネギみたい)を両手でわしづかみにして、上に引っ張ります。うんうんと引きます。顔を真っ赤にして引きます。両脚を踏ん張ります。でもピクリとも動きません。相手はとんでもない握力で大地をつかんでいるんです。往年のレスラー、フリッツ・フォン・エリックの鉄の爪もかくあるや。だから、この綱引きは、地球を持ち上げることができない限り、当方が負けます。とうぜんです。
ここでふっと手を離します。握力が抜けて、10本の指がふるふると震えています。と、ここからですよ。大事なのは。
いきなり隣のらっきょうの葉をわしづかみ。間髪入れず引っ張ります。隣のらっきょう君は実は油断していましたから、少し腰が浮くんです。そこへ脇からヘラを入れ、根をずくずくと。不意をつかれたらっきょう君、ついにあきらめます。
いきなりです。らっきょう君、ずばっと飛び出します。まるで地下からロケットが発射されたよう。ビニールの覆い(マルチシート)にざざあっと土、砂を撒き散らして。
これを見ていた他のらっきょうたちは、喜んで恭順してきます。
めでたく収穫した島らっきょうですが、実はこの後の皮むきが面倒なんです。面倒なんですが、ここの工程は妻にアウトソーシングしているので、割愛します。
もうがまん
できぬと野良着
脱ぎビール
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