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うっかり人生に絶望した夜にやってきたもの

数年前のある日、当時出会ったばかりの友人が「家でも買ったらどうですか?」て、びっくりするほど軽く一言。(え?)
その一言が新たな展開の扉だったらしく、約1年後には家を購入。という謎の流れにより、中古で購入した家は4LDK。1階に1部屋、2階に3部屋という間取り。
我が家は5人プラスわんこ一匹という家族構成。
購入時、長男は既に一人暮らしをしていたので、1人1部屋(旦那が1階の部屋)を使う事に。
思いがけず、自分の部屋ができた事で、私の幸福度は飛躍的にアップ。
ひとり部屋、ばんざーい。

数年がたったある日、旦那が会社を辞めて友人と独立するという、当初の予定にはない新たな展開に突入。
我が家は自宅兼事務所となった。
自宅兼事務所はよい。しかし、旦那の部屋がなくなった。さて、部屋割りをどうするか…。
旦那よ、君はどこで眠るのや?もしや私の部屋が夫婦の寝室に…?
思いがけず幸福度がアップして約3年。いくら仲良しとはいえ、もはや誰かと同じ部屋で眠るなど考えらない。
ここははっきり断ろう…の決意をよそに、当時、小学校低学年だった次男と旦那が同じ部屋で眠る事で仲良く合意。
勝手なもので、候補にも上がらなかったのはそれはそれでさみしかった。
とにもかくにも、新たな部屋割での生活がスタート。

なんやかんやで時は過ぎ、季節は夏に。
次男の部屋にはエアコンがついておらず、暑さの厳しい季節、次男は私の部屋で眠っていた。が、旦那も一緒に眠るとなると、流石にエアコンなしは厳しいのでは?と購入を提案。けれども、「クーラーは身体がだるくなる」という旦那のエアコン不要論により、購入には至らず。

…だが夏は暑かった。
結局、私の部屋でベッドの下に、旦那と息子が布団を敷いて眠る、というスタイルで眠る事に。「せやから言うたやん!」と私が思った事は言うまでもない。

夏休みに突入したある日、甥っ子が泊まりに来たので、次男はリビングで甥っ子と仲良く就寝。

…どうやらその日、私の近くにはネガティブがいたらしい。ちっとも眠れやしない。
寝付けずに夜中に考える事など、ろくな事ではないと分かっているのに、あーでもない、こーでもない、あの時こうしていたら…何であんな事を…などと、いつまでもぐるぐるぐるぐる。

このようなぐるぐる回路はちょっとした『間』のようなもの、を生むらしい。
そしてその日、私はできてしまったその『間』のようなもの、にうっかり落ちてしまったようだ。
近くに旦那がいるのに、この世で自分1人しかいないような孤独感。とめどなく溢れる涙も鼻水も、拭く気にならない。
人生に絶望したような感覚に縛られ、つらくてつらくてたまらない。

そのうち、『もうどうでもええわ…』というやさぐれボッチと、『神様、私が悪うございました。これからちゃんとするんで、どうか助けてください!』という辛すぎ懇願マンが、入れ替わり立ち替わり。
いやいやまって。神様助けてくださいって…。
これ、小さい頃からお腹が痛いときとか、ついやってしまう謎の取り引き。
これからちゃんとするってなんやねん…(笑)と毎回突っ込んでしまうやつ。
でもこの日は突っ込みはおろか、笑いのわの字も、その欠片すらなし。

その時…。
頭頂部あたりの髪の毛にほんの少し重みが。
きっと外し忘れた髪の毛のクリップがズレたのやと思って。
なんせ『間』のようなもの、にはまりこくっていた私にしたら、「クリップなどどうでもよい。ほっとこ!」そんな感じ。

なんやけど…まだほんの少し重みを感じる。ような気が。
今度はおおよそクリップがありそうな所に手を伸ばす。一瞬なにかが触れたような気がしたけど、そこにクリップはない。
(なんやクリップちゃうやん)
再び謎の絶望にもどりかけたその時…

(ほな、さっき触ったのなんやったん)
…?
おもむろに頭を起こして枕をみてみる。
…?…!?
暗闇の中、12…3センチぐらいの何かが枕の下に隠れたように見えたんやけど…

!!!!!!!!!!
ベッドから転がり落ち、下で寝ている旦那に必死で「助けて!」
と叫んだつもりが出ない…。声がー!
べしべしと旦那を叩いたりゆすったりして、もう必死。

旦那 :「どないしたんや!?」と飛び起きる。

私 :「何かおる!」
やっとこ声が出た。でもなんでカスカスやねん!もはや呼吸の仕方も忘れ、大パニック。

旦那 :「大丈夫や!」

私 : 「何がやねん!」
と突っ込みたかったが余裕なし。
カスカスの「何かおる!」を繰り返す。
頼むからはよ見てや…。

旦那 :「え?リアルなやつ?それとも見えたらアカンやつ!?」
どういうことやねん!
後で聞いたら、きっと私には見えたらアカンもんが見えてるんやと思ってたらしい。

私 : 首を振りながら、カスカスの「枕…」が精一杯。

やっとこ電気をつけ、旦那が枕をどける。
何か出てきた。明らかに悪そうな色をしているやつがおる。
こいつは…ムカデやないか!

「アカンやつやん!やっつけてー!」ついにカスカスじゃない声が出た。
必死に逃げているはずのムカデ。だがパイル地のシーツに足をとられているらしく、めちゃめちゃ遅い!
…そしてムカデは旦那にやっつけられた。

その後、布団やマットレスの下に仲間がいないことを確認し、いったいどこから現れたのだろうかと考える。
ベッドに潜んでいたのか、それとも天井から落ちて来たのか…。
どちらにしても、あのまま気づかず、うっかり頭や顔、首などを噛まれていたら…「死んでまうがな!」と頭の中で叫ぶ。
きっと死ぬ事はない、だがきっとひどい事になっていただろう。助かったー!

…君、もうどうでもよかったんちゃうかったん?
…。
ムカデ前後の自分を思い返し、やさぐれボッチからの必死過ぎパニックに思わず爆笑。
こうして私は絶望からの生還を果たした。

翌日、前出の友人に連絡して伝えたところ、「え、それリアルなやつ?」と。
君もかよ…。
そして、ひとしきり大爆笑。
後日、おもしろがった友人が知人にこの話をしたところ、「ムカデは毘沙門天さんの御眷属やから助けに来てくれはったかもしれんなぁて言うてはったで。」と。

なんやて!?
さっそく、信貴山朝護孫子寺へGo!
ほんまや、寅とムカデだらけや。
手を合わせて…。
「助けてもらってありがとうございました。でも、お使いをやっつけてしまいました。ごめんなさい。」

あれから、『間』のようなもの、に落ちる事はない。電気消すのはちょっと怖くなったけど…
「またお使いくるかもしれん!」そう思ったら、はっ!とするし、つい笑ってまう。
ほんまにお使いやったかは分からんけど、ええねん、ええように思っときます。
来てくれてありがとうさんです!
でも…
怖いからもう大丈夫です(笑)

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