なぜあの人は自分に都合よく考えるのか？【ぱりこラジオ第29回文字版】
毎週金曜20時にSpotifyで配信している「ぱりこラジオ」。
第29回は2024年7月19日(金)にアップしました。
こちらの再生ボタンを押すとここで直接聴けます。
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今回も「音声を聴くのが苦手、文字で読むほうが楽」という人のために、文字版をご用意いたしました。
※前回分を先に読みたいかたはこちらから↓
それでは文字版どうぞ！ Spotifyの再生ボタンを押して、音声と文字の両方を同時に楽しむのもオススメです。
(文章版と喋りが違う部分もあります)
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◆なぜあの人は自分に都合よく考えるのか？
「なぜあの人は〇〇なのか」シリーズ、今回は「なぜあの人は自分に都合よく考えるのか」です。
自分に都合よく考える、って色々なケースがありますよね。
たとえば電話口で仕事先の人に「〇〇をお願いします」と言い、そのつもりで訪問したら、担当者が忘れているにも関わらず「いや、そんなこと聞いてません」と押し通すケース。
また、最近インスタでよく流れてくる広告漫画で、“直接連絡したことは一度もないのに、すでに推しと付き合っていて結婚するつもりの女子”の話が流れてくるのですが……
推しが投稿したSNSでの発言を「あの投稿は私に向かって言ってるんだ！」「これは私と付き合ってる宣言をしてるんだ！」などと思い込むケースもそうです。
人はなぜ、自分に都合よく考えるのでしょうか。
また、自分に都合よく考える人もいれば、どんなことも「いや、〇〇に違いない」と自分で反対意見を持ってきて、全て疑う人もいるのはなぜでしょうか。
今日はそんな話をしていきたいと思います。
それでは、ぱりこラジオ第29回、スタートです。
＊ ＊ ＊
自分に都合よく考える心理には、認知バイアスのひとつ「確証バイアス」が関わっていると考えられます。
認知バイアスという単語を初めて聞いた人もいらっしゃるんじゃないでしょうか。
認知バイアスとは、これまでの経験からくる先入観や「ピンときた！」などの直感によって、物事の判断が非合理な状態になってしまう心の傾向をいいます。
認知バイアスには様々な種類があります。
「大勢の人がいいと言っているものは、いいものに違いないと思い込んでしまう」という“バンドワゴン効果”も、認知バイアスのひとつですね。
ちなみに真逆の「大勢の人がいいと言っているものは欲しくなくなり、少数の人が認めているものを良いものだと思い込んでしまう」という“スノッブ効果”も、認知バイアスのひとつです。
(※スノッブ効果については下記リンクの漫画でも描いています↓)
で、今回お話しする「確証バイアス」とはどういうものかと言いますと……。
たとえば何かひとつ、自分が信じたい考え、主張したい意見があるとしますね。
そうすると、その意見を肯定するような情報しか目に入らなくなる、無意識にそういう情報ばかりを集めてしまう、逆にその考えに反するものは無意識に排除してしまう……これを確証バイアスと言います。
わかりやすい例で言うと、タバコが嫌いな人は「タバコで早死にした人」「タバコがいかに健康被害を及ぼすか」という情報ばかり集め、それを重要視します。
逆に愛煙家の人は「タバコを大量に吸っても90歳以上まで生きた人」「禁煙したらストレスで逆に病気になった人」という情報ばかりを集め、それを重要視します。
「美人は性格が悪い」とか「お金持ちは悪い人が多い」とかもそうですかね。
確証バイアスによって「こうだ！」とひとつの考えに凝り固まってしまった人は、統計や客観的事実を出されようと、そうじゃない人の体験談を聞こうと、そちらを認めようとしません。
まさに「自分に都合よく考えてしまう」状態ができあがるわけです。
さて、ではなぜ確証バイアスが起こるのでしょうか。
人間は、本能的に現状維持を求める生物だと言われています。ではなぜ現状維持を求めるのかと言うと、「安心感」が欲しいからです。
安心するために、現状を安定させたいわけですね。
「もっと安定した生活を送りたい」「心を安定させたい」「収入を安定させたい」多くの人がよく言っている言葉です。
どこから何が出てくるか分からない、いつ何が起こるかわからない、初めて行くお化け屋敷のようなスリルを永遠に感じながら生きていたい人はいません。
これは自分の信念や考えにも言えることで、いちいち反対意見を取り入れていたら、人間の脳は不安定になってしまうのです。
「え〜っ、その可能性もあるかな……」「そっちの意見もありかもしれないな……」「でもやっぱりこういうケースも……」とか常に思っていたら、思考や精神状態がグラグラで不安になるでしょう？
そういうとき安心感を得るために、もっといえば自分を守るために、“確証バイアス”が起こるのです。
また人間は「一度信じたことを、信じ続けていたい」という欲求があるのですが、これもまた大きな変化を避けて安定し、安心感を得るためだと考えられますね。
えっ、でも、不安定で何が起こるか分からないスリルを楽しむ人もいるじゃないですか！
人の意見を次から次へと鵜呑みにして、ずっと不安でいる私は何なんですか？
自分の都合の良いように考えて楽観的な人もいれば、悲観的な人がいるのはなぜですか？
そんな風に思う人もいるでしょう。いませんか？
まあ居てもいなくてもどっちでもいいや(笑)、とりあえず解説します。
まずスリルを楽しむ人。これは、“常にスリルがある状態で安定している”ので、逆にスリルがないと不安になってしまうのです。不安定な状態が一番安定している、というなんともややこしい状態になっているんですね。
毎回恋愛でトラブルを起こす人は、「恋愛でトラブルが起きる状態」で安定してしまっているので、逆に何も起きない彼氏だと退屈になったり、不安になってしまうことがあります。そんな感じです。
人の意見を鵜呑みにして不安になる人、悲観的な人もまた同じです。
“不安定である状態で安定してしまっている”ので、それを求めるわけです。
ちょっと難しい話になりますが、不安ばかり抱える人、悲観的な考えばかりする人は、“その先にあるもの”を求めています。
いつも不安、いつも悲観的でいたらどうなると思います？
精神的に参ってしまいますよね？
あるいは、精神状態の悪さから体の病気になったり、病気とまで行かずとも体調を悪くすることもあるでしょう。
これが欲しくて、不安や悲観的な考えをやめないという人もいます。
あ、意識的にじゃなくて、無意識にね。
まさに私もかつてその状態で、私の親や親族は「私が元気な時は雑に扱う・厳しいことを言う」「私が弱っていると、気遣ったり優しくしてくれる」人だったんですね。
私はもう雑に扱われるのも厳しいことを言われるのも嫌だったので、弱って気遣われたり優しくされたりしたかったのです。
なので、ありもしない不安を次々と自ら生み出し、自分の信じたい明るい意見や考えに自分で反対し、悲観的なことばかり考えていました。
おかげで24年も精神疾患でいられました。
望み通り、親は私を腫れ物を扱うように気遣ってくれましたね。
私が自分の心の病を自ら打ち破り、不安や悲観的な考えを自分で生み出さなくなったのは、「弱っているほうが得だと無意識に思っていたが、実はそうでもない」ことに気づけたからです。
ちょっと話はそれましたが、つまり不安定を求める人も、不安や悲観的な考えに走ってしまう人も、結局のところは“自分に都合の良いように脳を動かして選択し、行動している”ところは同じってことですね。
ちなみに余談ですが、年配のかたが「自分に都合のいいことだけ記憶していて、都合の悪い記憶は忘れている」状況に出くわしたことはないですか？
あれ認知症の法則のひとつ「自己有利の法則」というやつみたいですよ。
自分にとって不利になることは絶対に認めなかったり、嘘を嘘だと思わずについてしまったり、とにかく自分が有利になるように導こうとするのは、認知機能の低下から起こることだそうです。
若い人でも自分に有利になるように物事を起こそうとしている人がいますが、きっとあれも認知機能の低下から起きているのでしょうね。
老いた人だけに認知機能の低下が起こるわけではないですからね。
だからカウンセリングなどの心理療法に「認知療法」とか「認知行動療法」とかがあるわけですし。
さて今回は珍しく専門的な話をしたような気がしますが、楽しんでいただけましたでしょうか！
それではお届けしたのは、漫画家カウンセラーの伊藤巴でした。
ごきげんよう、さようなら。
＊ ＊ ＊
次の回は7月26日(金)に配信済み、現在Spotifyでは第57回まで配信しています。Spotifyに移動して全ての回を聞きたいかたや、コメントを残したりしたいかたは下記リンクからどうぞ。↓
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